2007.10.14 『マイスタージンガー』初日グート新演出ルイジ指揮/ドレスデン・ゼンパー・オーパー


SEMPEROPERA
Saechsische Staatsoper Dresden

Premiere
Sonntag, den 14. Oktober 2007, 16.00 Uhr

Richard Wagner
Die Meistersinger von Nuerunberg
Oper in drei Aufzuegen
Text von Komponisten

Musikalische Leitung Fabio Luis
Inszenierung Claus Guth
Buehnenbild und Kostueme Christian Schmidt
Video Bastian Trieb
Licht Jan Seeger
Chor Ulrich Paetzholdt
Dramaturgie Sophie Becker, Ilsedore Reinsberg

Personen
Hans Sachs Alan Titus
Veit Pogner Hans-Peter Koenig
Kunz Vogelsang Tom Martinsen
Konrad Nachtigall Christoph Pohl
Sixtus Beckmesser Bo Skovhus
Fritz Kothner Matthias Henneberg
Balthasar Zorn Timothy Oliver
Ulrich Eisslinger Gerald Hupach
Augustin Moser Karl-Heinz Koch
Hermann Ortel Juergen Commichau
Hans Schwarz Rainer Buesching
Hans Foltz Jacues-Greg Belobo
Walther von Stolzing Robert Dean Smith
David Oliver Ringelhahn
Eva Camilla Nylund
Magdalene Christa Mayer
Ein Nachtwaechter Michael Eder

Chor der Saechsischen Staatsoper Dresden
Mitglieder des Sinfoniechores Dresden e.V.
Mitglieder der Komparserie

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昨夜は22時51分のユーロナイトにてヴェネチアを発った。1等寝台で完璧に熟睡し、翌10/14の6時30分にミュンヘン到着。ミュンヘンからは7:22発のICEでライプチヒに移動し、ここで別のICEに乗り換えて12:54にドレスデン・ノイシュタットに到着した。DBの切符も自分でプリントアウトするタイプで、早めの予約で、通常98ユーロが29ユーロと格安だった。ヴェネチアは未だ夏の陽気だったが、ドレスデンは快晴でも初冬の寒さに変わりつつある。ヒルトンにチェックインし、ゼンパーにて今日のチケットをピックアップした。

今日は、16時からファビオ・ルイジ指揮の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」プレミエ初日を見た。初日は早々と完売していたが、今年3月のドレスデン滞在中に、チケットオフィスで直接予約できたもの。昨年のザルツブルクにて話題のフィガロを演出したクラウス・グースによる新演出ということで興味が尽きない。また、ルイジ&シュターツカペレ・ドレスデンは今年5月にムジークフェラインで聞いたブルックナー9番が素晴らしく、今回のマイスタージンガーにも期待される。

ゼンパーの響きは何時聞いても素晴らしく、前奏曲ではオーケストラの渋い音色に明朗な流麗さが伴い、躍動感漲る音楽に沸き立った。前奏曲が終わる頃に、未だ幕の降りたステージにヴァルターがショルダーバックを背負って登場する。そしてカーテン幕を開けると第1幕、教会の場面。人々はステージよりやや沈んだ位置で左手に向かって合唱している。そして巨大な椅子にエヴァが立って、荘厳なコラール。ステージ全体はフィガロのときのように白を基調とした矩形の空間に正面背景にはショーウィンドウ風の棚があり、ニュルンベルクを象徴する三角屋根の家のミニチュアモデルが発て3段、横に4個つづ、都合12個並べられている。このショーウィンドウは時にスクリーンとなって映像が映し出される。特にベックメッサーが歌の規則を説明するときには複雑な数字の並び、採点の○×△がランダムに映像となって表示される。

シンプルな第1幕に対して、第2幕では、右手に先ほどのニュルンベルクの三角屋根の家の少し大きめのモデルがあり、左手に傾斜したテーブル。天井には逆さに並ぶテーブル。そして左手に森をイメージした樹木。ザックスは左側の傾斜テーブルで仕事。右手の家はポーグナー家で、小さなモデルの窓からエヴァが顔を出したときには客席から笑い声が出るという滑稽なもの。特に第2幕は見所満載の演出が施され、エヴァとザックス、二人のセクシャルな演技、ヴァルターの歌の規則に悩んでいるときには、ステージ全体に歌の規則の数字とか記号、譜線が直円から歪んで、湾曲線として動き回る。ベックメッサーが登場するときにはステージ全体が赤く染まり、あげくの果ての騒ぎではベックメッサーがパンツ姿の裸にされてしまい、ポーグナーの家に縛り付けられる有様。ちなみにザックスには牛の顔、ベックメッサーはロバの顔が被せられる。夜警は清掃夫で、ゴミを拾いながら歌う。ステージ全体もフラッシングで点滅し、騒乱の2幕の終了とともに盛大なブーイングが飛んだ。

第3幕ではアトリエ風のザックスの工房。エヴァとかマグダレーナ、さらにはザックスの人形が置かれ、ダーヴィットはマグダレーナ人形と抱き合い、訪れたベックメッサーはエヴァ人形を抱いてキスする。そして人々の登場。彼らは清掃員たちで散乱したステージを片付け、次々と群集が登場し、壮大なフィナーレに向けて展開。

以上のように刺激的かついろんな意味が込められたステージは何度か見てみたいもの。特に第2幕での深遠な音楽はルイージの導く透明なアンサンブルが素晴らしく、グースの演出とあいまってエヴァとヴァルターが一瞬、トリスタンとイゾルデの一場面であるかと思わせる瞬間も。このときポーグナーの小さな家から現れたマグダレーナはまるでブランゲーネを連想させる。

さて歌手ではアラン・タイトスのザックスが素晴らしい。ロバート・ディーン・スミスは第1幕、2幕と調子が良く素晴らしかったが、第3幕の前半で声が出なくなり、肝心の歌が途切れがち。演奏は継続したまま、ドラマが展開してゆくが、後半にはレイモント・ベリーが代役として登場し、急場がしのがれた。なお第3幕開始前にエヴァ訳のカッミラ・ニュールントが第2幕が終わって調子が悪くなったが、3幕は歌うとのアナウンスがあり、3幕はやや生彩に欠いた。以上のように歌手の不調に不満を残す結果となったが、素晴らしい演奏と興味津々の演出に手ごたえ十分だった。カーテンコールに登場したグースなどスタッフには猛烈なブーイング。とても面白かった。.



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