2007.08.12 『我慢強いソクラテス』ヤーコプス指揮/インスブルック音楽祭


Innsbrucker Festwochen der Alten Musik 2007

DER GEDULDIGE SOKRATES (1721)
Komische Oper in drei Akten von
Georg Philipp Telemann 1681-1767

Libretto von Johann Ulrich von Koenig
in deutscher und italienischer Sprache (mit deutschen Uebertiteln)

Rene Jacobs (Musikalische Leitung)
Nigel Lowery (Regie, Buehnenbild, Kostueme)
Amir Hosseinpour (Regie, Choreographie)
Seven Hogrefe (Licht)
Francis Huesers (Dramaturgie)

Der Philosoph
Marcos Fink (Sokrates)

Die Ehefrauen
Inga Kalna (Xantippe)
Kristina Hansson (Amitta)

Die Studenten
Daniel Jenz (Pitho)
Michael Kranebitter (Plato)
Sun-Hwan Ahn (Alcibiades)
Richard Klein (Xenophon)

Der Gegner
Alexey Kudrya (Aristophanes)

Die Prinzessinnen
Sunhae Im (Rodisette)
Birgitte Christensen (Edronica)

Die Prinzen
Donat Havar (Melito)
Matthias Rexroth (Antippo)

Der Vater
Maarten Koningsberger (Nicia)

Athener Buerger
INNSBRUCK FESTIVAL CHORUS

AKADEMIE FUER ALTE MUSIK BERLIN
Eine Koproduktion mit der Deutschen Staatsoper Berlin

Premiere
Sonntag, 12. August 2007, 19 Uhr
Tiroler Landestheater
---

今日は19時からランデス・テアターにてインスブルック・フェストヴォッヘン2007のテレマン作曲「寛容なソクラテス」プレミエを見た。演奏はルネ・ヤーコプス指揮のベルリン古楽アカデミー。本プロダクションでは1721年にハンブルク・ゲンゼマルクトの劇場で初演された作品をルネ・ヤーコプスが再発見し、これをアレンジしたバージョンで復活初演される。

オリジナルは36のソロ・アリア、10のデュエット、4つのアンサンブルと合唱曲を含むが、7つのアリアをカットし、レチタティーヴォを短縮して演奏された。それでも4時間に及ぶ大作で、19時の開演から、途中、25分と15分の休憩を挟んで、23時20分の終演まで目と耳が離せない面白さとなった。

物語は、二人の妻、クサンティッペ、アミッタを持つソクラテスを主人公として、彼の弟子達と、二人のプリンセス、ロジッタとエドロニカ、二人のプリンス、メリットとアンティッポが加わる奇想天外なドタバタ喜劇。演出はインスブルックで既に御馴染みのロウェリによるもので、独特のジェスチャーをまじえたコミカルさは天下一品。ヤーコプスの描くアンサンブルと一体となって爆笑劇が展開してゆく。

ステージは、扉、キッチン、居間と書斎部屋がそれぞれ二つずつ左右対称に並んでいる。二人の妻はそれぞれのキッチンで家事をしているかと思えば、互いに喧嘩を始めて、ソクラテス一家には争いが絶えない。ソクラテスを間に挟んで、二人の妻は書籍を投げあい、あげくには包丁を持って互いを追い掛け回すといった凄さ。ひたすら仲介するソクラテスの我慢強さと、悪妻にもめげずに哲学を極めてゆく様がとても滑稽だ。加えて登場人物のキャラクター、演技のひとつひとつに至るまで、絶妙なアンサンブルがアクセントを加えてゆく。激しいドラマ展開にはアグレッシブなアンサンブルがテンションを最大限までに高めるといった具合。ここまで音楽とドラマが渾然一体となっている点に、ケーニヒの台本とテレマンの天才的な閃きに驚くばかり。

比較的編成の大きな古楽アンサンブルも変幻自在にアンサンブルの幅をコントロールし、リュートの繊細な響きもランデステアターならではの音響とあいまって極上の古楽かつモダンでポップな展開に惹きこまれしまう。途中、コラール風のバッハを思わせる響きも聞かれ、イタリア語のアリア、ドイツ語のレチタティーヴォと多彩。ともかく面白すぎる4時間超に没頭しきった。いつもながら幻の作品を生命力漲る上演と導くヤーコプスの天才ぶりは凄い。プレミエ初日は大喝采となった。



[HOME]