2007.05.12 『死者の家から』プレミエ初日ブーレーズ指揮シェロー新演出/テアター・アン・デア・ウィーン | ||
Theater an der Wien MUSIKALISCHE LEITUNG Pierre
Boulez ALEXANDER PETROWITSCH GORJANTSCHIKOW SCHAUSPIELER Thomas
Baeuml, Helmut GebeschuberTroebinger, ORCHESTER Mahler
Cahmber Orchestra AUFFUEHRUNGSMATERIAL Universal Edition AG, Wien KOPRODUCTION Holland Festival
Amsterdam, Festival d'Aix-en-Provence, 先ほどのコンサートに引き続き、20時からアン・デア・ウィーン劇場にて「死者からの家」新演出プレミエ初日を見た。ピエール・ブーレーズの指揮とパトリス・シェローの演出となれば見逃せないプロダクションだ。舞台装置のリシャール・ペドウィッツは、1976年衝撃の「ニーベルングの指輪」をはじめ、1998年ザルツブルクでの「マハゴニー市の興亡」の舞台も担当している。 ステージは、全幕を通して、左右と奥が巨大なコンクリート壁に覆われた牢獄というシンプルなもの。天上まで延びる巨大なブロック壁は素早く動いて通路や扉が出現したりする。終始、この重圧と閉塞感の中、登場人物達の演出描写のみで勝負に出るというシェローのアプローチは極めて単刀直入で圧倒的な説得力を持つ。 そのストレートな展開にブーレーズ率いるマーラー・チェンバー・オーケストラの見事な演奏が一体化して、死と直面した絶望、凶暴と狂気を増幅し、壮絶なドラマに仕立て上げる。その衝撃度はかつて体験したことが無いほどである。冒頭の前奏から、ヤナーチェク独特のリズムと語法がライトモチーフの如く純度の高い明晰度で炸裂する。ドラマが静から動に転じてゆく時も、ヤナーチェクの独特のテンポにとステージ展開が合致し、シェローとブーレーズが共に分析しきった解釈が伺える。 第1幕では囚人たちが大きな鷲を奪い合って象徴としている点が興味深い。途中、天上全体から紙吹雪のようなものが落ちてきたが、何とステージに巨大なゴミの山が出来た。これは囚人たちがゴミを集めて廃棄する作業に入るためのもので、その意表をつく鮮やかな展開に驚かされた。第2幕では劇中劇風に正面奥に囚人達が客席に座り、ステージ前面で、露骨なパントマイム劇が展開。第3幕ではベッドが並べられた牢獄の病室。いたってシンプルながら、キャストの凄みある演技とブーレーズが導く恐るべきアンサンブルがずっしりと重圧にひしめく世界に引きずり込む。休憩無しの2時間は身動きが出来ぬほどのストレートさに圧倒され、その興奮に驚嘆した次第。カーテンコールではブーレーズ、シェローをはじめスタッフが勢ぞろいした中、大喝采が続いた。 |
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