2007.05.12 『消えた男の日記』クランクフォーラム/ウィーン・コンツェルトハウス | ||
Leos Janacek Klangforum Wien 今日は10時40分パリ・シャルル・ドゴール発のOS便にてウィーンに飛ぶ。15時半からコンツェルトハウス・モーツァルト・ザールにてフェストヴォッヘンのヤナーチェク「消えた男の日記」を聞いた。 演奏されたバージョンはヘールト・ファン・クーレンが2003年に編曲したもの。編成は、ヴァイオリン:3、ヴィオラ:2、チェロ:2、コントラバス:1、フルート:3、オーボエ:2、クラリネット:3、ファゴット:2、ホルン:2、トランペット:2、打楽器:4、テューバ:1、ピアノ:2、ハルモニウム:1、ハープ1:鐘:2。さすがにオリジナルのピアノ版に比べて圧倒的なスケールと色彩感が素晴らしい。特にコンパクトでライブな空間は各楽器を鮮明に増幅し、その密度の高い室内楽的展開とシンフォニックな音の広がりが、ヤナーチェクの音楽を鮮やかに浮き彫りとする。 エミリオ・ポマリコ指揮によるクランフォルムの演奏はそのヴィルトォーゾ性とあいまって、歌曲の域を遥かに超えてヤナーチェクのオペラのように詩情豊かに劇的に展開してゆく。そして最大のポイントは、主役テノールのアレシュ・ブリスツェイン。ヘルデンの輝きとリリックの詩情がとても素晴らしく、全21の歌曲を細部に至るまで聴くものを捉えて離さない。時に牧歌風に展開し、韻に木管が呼応する箇所など痺れるほどの陶酔すら感じた。 ジプシー娘役のアルトはアルゼンチン出身のロレナ・エスピナ。その情熱的な歌声は陰影を帯てヤナーチェクの哀愁にぴったり。途中、ステージ横、2階バルコニーの扉の外から歌う3名の女声が織り成す絶妙なハーモニー。まさに天国的な響きだった。45分の歌曲集は細部に至るまで明晰度で、大きくうねる起伏とともにドラマティックだった。客席は閑散としていたが、喝采は驚くほどの熱狂。まさに奇跡的な名演奏に驚喜した次第。 |
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