2007.01.19 『聖母マリアの夕べの祈り』『タンクレディとクロリンダ』 ペルセヴァル新演出ヤーコプス&ベルリン古楽アカデミ |
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marienvesper Musik von Claudio Monteverdi in lateinischer und italienischer Sprache MUSIKALISCHE LEITUNG Rene Jacobs Keine Pause Auffuehrung im Rahmen der CADENZA
BAROCKTAGE SOPRAN 1 Sunhae Im DIE FRAU in WEISS Nathalie Huenermund akademie fuer alte musik berlin concert vocale CEMBALO / ORGEL Andrea Marchiol
/ Massimiliano Toni vocalconsort berlin SOPRAN komparserie LEITUNG KOMPARSERIE Eveline Galler-Unganz --- 今日のヴェネチアは昨日以上に霧がかかり冷え込んだ。昼前にALILAGUNAブルーラインで空港に向かい、13:05発のHLX便にてベルリンに向かう。ボルツァーノ、インスブルック上空を経て1時間40分ほどでベルリンに到着した。今日はシュターツオーパーにてルック・ペルセヴァル新演出として舞台上演されるモンテヴェルディ『聖母マリアの夕べの祈り』を見る。ルネ・ヤーコプスの指揮、ベルリン古楽アカデミーとコンチェルト・ヴォカーレによるアンサンブル、さらにヴォーカル・コンソート・ベルリンが加わった演奏となれば見逃す訳には行かない。加えて今日が初日プレミエで古楽週間を飾る。なおペルセヴァルはシャウビューネ・ベルリンに所属し、オペラではシュトゥットガルトで「トリスタンとイゾルデ」、ハノーファーで「マクロプロス」を演出している。 プログラムはヴェスプロ(晩課)とマドリガーレ第8巻「タンクレディとクロリンダの戦い」の2本立てに見えるが、それぞれを分けて演奏するのではなく、以下のようにミックスした形式で演奏された。 1. Domine ad adiuvandum すなわち「タンクレディとクロリンダ」は3,6,11,16,18曲の5つに分割されており、それらを「聖母マリアの夕べの祈り」が挟み込み、全体を1つのドラマとして構成する。上記の曲順からも分かるように、ヴェスプロとしては順序通りに並べられ、マドリガーレを上手くミックスしている点が興味深い。ヴェスプロとマドリガーレは互いに融和しあうことで全く違和感が無い。むしろヴェスプロがドラマチックなオペラにスケールアップしたと考えれば、ステージ上演にも納得させられる。 ステージは床から天井近くまで左右に伸びた5つの層に分割される。その各層にアンサンブルと合唱をレイアウトするため、壁全体を音源とドラマのステージとする大胆な発想だ。さらにそれぞれの層は傾斜した階段が設けられていて、各層を歩いて順次上下できる構造となっている。従ってアンサンブルと声楽のメンバーが登場する際には、一番下の層から順番に登ってゆくことになる。合唱と古楽器奏者達が複数のグループに分かれ、各層が多彩なアンサンブル編成となる。例えば一番下の層には、左側からコントラバス、オルガン、ハープ、声楽、チェンバロが並ぶ。なおメンバーたちはカラフルな私服姿であり、演奏に加えてパントマイム的な演技も行う。演技のみ行うメンバーも多数加えられ、ドラマを演じて行く。音楽的にも高まりを見せる場面では、演奏者達を含めて各層を走りぬける場面もあった。 以上のユニークさから、ステージ壁全体が鳴り響くため、圧倒的なモンテヴェルディが展開する。それはまさに言葉を失うほどの衝撃。冒頭、短いアンティフォナの掛け声から、オルフェオのファンファーレが音楽の開始を告げる。続いて6声の合唱が壁全体のランダムな位置から聞こえてくるためか、ポリフォニックな展開も空間という次元を伴って立体的に聞こえてくる。まさにモザイク模様といった感覚である。 ヒポフリギア旋法によるドミヌスに続いて「タンクレディとクロリンダ」の第1パートが歌われる。タンクレディがクロリンダを兵士と間違え、互いが死を覚悟して戦う場面である。続く"Nigra sum"のソロモン雅歌がドラマチックさを高めてゆく。"Laudate pueri"のグレゴリ定旋律が神々しさを聞かせる。そして第2パートでは、彼らの死闘は激烈さを増し、遂には息をつくための休止となる。以上のようにヴェスプロとマドリガーレの組み合わせがテンションを高める。第3パートでは、タンクレディがクロリンダに名前を聞くもののクロリンダが拒絶。再び戦闘開始の場面が描かれる。第4パートでは、タンクレディがクロリンダの胸に剣を突き刺して彼女が地に伏す。瀕死のクロリンダは友への許しと彼女の洗礼を請う。第5パートでは、タンクレディが洗礼のためクロリンダの兜を外す。何とタンクレディが想いを寄せていた女性であることに驚愕する。タンクレディは死にゆくクロリンダから平和になったと聴く。 第3と第4パートの間に挟まれた"Sancta Maria, ora pro nobis"と"Ave Maria stella"は音楽的にもひとつのピークを構成する。ソプラノによる聖母マリア、ヴェネチア風合唱のドリア旋法による「めでたし海の星」は巧みなアンサンブルと透明な合唱が感動の極みを生み出す。フィナーレの7声のマニフィカトも特異なレイアウトとあいまって、そのパノラマ展開が劇場全体を荘厳な大聖堂と化す。 ソリストではインスブルック古楽フェスティバルでも活躍しているスンハエ・イムを始め、タンクレディ役のヨハネス・クム、クロリンダ役のシルヴィア・シュヴァルツが素晴らしい。全体を通して空間を活用したステージは、大きな展開を見せるというよりも、むしろオラトリオ的。これがまたモンテヴェルディの大規模作品に想像力と求心力をもたらしている。ちなみにモンテヴェルディはヴェスプロ作曲当時、既にヴェネチア・サン・マルコへの道に想いを馳せていたとも言われている。奇しくも昨日から見てきたサン・マルコ大聖堂の威容を重ね合わせると壮麗な音楽がより感慨深く聞こえた。19時開演、休憩無しの1時間50分は、ヤーコプス快心の指揮のもと、ひときわ密度が高く、手応え十分だった。 終演後、Dussmannに立ち寄った。モーツァルト・オペラ22のDVDセットは399.99ユーロ。今のレートでも日本での価格よりも安い。なおベルリンフィル往年の名演奏を集めたCDセットは129.99ユーロ。このゴールドボックス、日本では見かけないので購入した。 |
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