2006/10/30
ゲヘーゲ&サロメ/ケント・ナガノ&バイエルン州立歌劇場

Das Gehege
Wolfgang Rihm
Salome
Richard Strauss

Bayerische Staatsoper
Generalmusikdrektor
Kent Nagano

Montag, 30. Oktober 2006
Nationaltheater
Neuproduktion

Das Gehege
Eine naechtliche Szene aus
"Schlusschor" von Botho Strauss

Auftragswerk der Bayerischen Staatsoper
Urauffuehung

Salome
Musik-Drama in einem Aufzug nach
Oscar Wildes gleichnamiger Dichtung

Musikalische Leitung Knet Nagano
Inszenierung William Friedkin
Buehne Hans Schavernoch
Kostueme Petra Reinhardt
Licht Mark Jonathan
Choreographie David Bridel
Dramaturgie Peter Heilker

DAS GEHEGE
Die Frau Gabriele Schnaut
Der Alder Todd Ford

SALOME
Herodes Wolfgang Schmidt
Herodias Iris Vermillion
Salome Angela Denoke
Jochanaan Alan Titus
Narraboth Nikolai Schukoff
Ein Page der Herodias Daniela Sindram
Erster Jude Ulrich Ress
Zweiter Jude Kenneth Roberson
Dritter Jude Tommaso Randazzo
Vierter Jude Kevin Conners
Fuenfter Jude Alfred Kuhn
Erster Nazarener Christian Rieger
Zweiter Nazarener Markus Herzog
Erster Soldat Steven Humes
Zweiter Soldat Gerhard Auer
Ein Cappadocier Ruediger Trebes
Eine Skalvin Anaik Morel
Engel des Todes Todd Ford

Bayerisches Staatsorchester

Beginn: 19.00 Uhr
Pause nach Das Gehege,
ca 19.35 Uhr (ca. 30Min.)
Ende: ca. 21.50 Uhr

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今日10/30は、ウィーン西駅10:30発のICEでドイツのプラッティングに移動し、ここで14:05発のRBに乗り換えてミュンヘンに16時頃に到着した。ザルツブルク経由のルートに比べて混み合う事が無くて快適。このルートはオンライン購入出来なかったので、10/28ベルリン・ツォーを発つ直前にICEの座席指定など済ませておいた。

さて今日はケント・ナガノ、バイエルン州立歌劇場音楽監督就任の初公演プログラムを見た。演目は<a href="http://www.bayerische.staatsoper.de/spielplan/vorstellung.php?id=1028&termin=4232&dom=dom1&l=de&archiv=">ウォルフガング・リームのゲヘーゲ「檻」とR.シュトラウスの「サロメ」</a>共に新演出の2本立て。特にゲヘーゲは世界初演と非常に興味深い。演出はエクソシストやフレンチコネクションを映画監督したウィリアム・フリートキン。美術はハンス・シャヴェルノッホが担当。

リームのゲヘーゲは、ドイツ演劇界ブレヒトの後継者と目されているボート・シュトラウスのSchlusschor(終合唱)の最終場から題材を取ったモノ・ドラマである。アニータという女性と鷲のみが登場する。物語は、夜の暗闇の中、女性が独り現れる。そこは動物園。鳥籠(檻)の中に黄金の鷲がいる。彼女はナイフで籠を壊して鷲を自由にしてやる。そして鷲の姿を褒め称える。彼女は鷲が襲ってくるように挑発する。彼女は鷲が年老いて力が無いことに気付く。ついに鷲が彼女につかみかかった時、彼女は鷲を殺してしまう。

ゲヘーゲはサロメと同様に、愛するものを殺すというパラドックス心理に迫った作品であり、アニータは数百年前からサロメの姉といった設定がなされている。従って、2作品は独立した演目としてではなく、ゲヘーゲを序幕としたサロメ2幕構成として上演された。全体を通して、作品が持つ愛、狂気、パワーが最大限に増幅されてゆく。

従って、ステージもゲヘーゲとサロメとでは同じセットが用いられる。ステージには、巨大な四角形の枠が幾つも連ねられ、空間が幾何学的に仕切られている。ゲヘーゲでは、やや幅の狭い縦長の矩形が中央に置かれ、そこに幾つもの糸を張って檻(籠)が作られている。ここにトッド・フォード演じる鷲が閉じ込められている。鷲は黒のコスチュームにカラフルな羽をつけており、終始無言。アニータの語り掛けに応じて、パントマイム的に反応してゆく。ガブリエラ・シュナウト演じるアニータは、冒頭、暗闇の中、強力な懐中電灯を客席に向けて登場する。パルケット最前列の席からはその逆光が非常に眩しい。アニータは、懐中電灯を下方より自分の顔を照らし、ステージの奥から移動してくる。その不気味さは異様なほど。鷲の存在に気付いて鋏で籠の糸を切る。アニータは衣服を脱いで下着姿となって鷲を誘惑、挑発する。

一度幕が降りて間奏曲となる。ピット中央奥に配置されたピアノとパーカッションが強烈に連打し、ブラスが炸裂。ケント・ナガノ率いるオーケストラはメータ時代とはうって変わり、恐ろしいほどの強靭さで反応する。全てのパートが明晰な透明感を維持しつつ情景を鮮烈に描き出す。劇場レパートリー公演というよりも、音楽祭で最高の演奏を行っているかのような熱気が漲っている。再び幕が上がると血で汚れたアニータが彷徨う。殺された鷲は居らず、Waldと叫びながら幕となる。シュナウトのドラマチックソプラノに圧倒された。

後半のサロメでは、ステージの四角い枠が傾斜したトンネル状に連なり、その直線性がサロメの一方的に進む結末を暗示するかのよう。デノケ演じるサロメは終始黒の下着姿で、過激な露出とエロティックさで悩殺してゆく。ヴェールの踊りでは、上空から落ちてきた赤いヴェールを使いながら、彼女の妖艶な裸身を惜しげもなくさらして踊り狂う。ナガノが導く絶妙なテンポの揺さぶり、色彩感溢れる豪快なアンサンブルがドラマを白熱の坩堝へと導く。

サロメの陶酔の音楽に対して、アラン・タイトス演じるヨカナーンの神々しいまでの歌と音楽もナガノの巧みな指揮とともに、聴衆を捉えて離さない。リームのゲヘーゲとの2幕構成が功を奏したのだろうか、ゲヘーゲと呼応したサロメに、未だかつて体験した事のない極度の興奮状態となる。

そしてヨカナーンの首を要求するサロメの意思をデノケが恐ろしいほどリアルに演じる。ヨカナーンの首に口付け。狂気に満ちた愛の高まりを歌う彼女の完璧なまでのドラマチックソプラノ。冒頭、ゲヘーゲにおけるシュナウトとの対極、コントラストを鮮やかに印象付けられた。またゲヘーゲで殺されたはずの鷲は「死の天使」として登場する。勿論無言のパントマイムのみであるが、影から見守りながらドラマを操っているかのよう。最終場面では、死の天使が黒装束の兵士達に指示を与え、サロメは兵士達に取り囲まれる。そしてサロメの首が掲げられて幕となる。衝撃のサロメ、何にも増して、デノケの圧倒的な歌と演技、ナガノの快心の演奏に驚嘆した次第。大喝采が長く続いた。余りの刺激に今夜は眠れぬ強烈さだった。ともかくこの演目は必見中の必見。ミュンヘンにおけるナガノの活躍も大いに期待される。

さて明日10/31はバービカンでのアンナ・ネトレプコ&ロランド・ヴィリャソンのアリアの夕べおよびブリティッシュエアのチケットを購入済みであるが、ロンドン行きの煩わしさと仕事の忙しさから、これをパスして、帰国することにした。



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