2006/10/28 トリスタンとイゾルデ/大野和志&モネ劇場

 

De Munt La Monnaie

28 octobre 2006 - 18:30

 

RICHARD WAGNER

TRISTAN UND ISOLDE

Handlung in drei Aufzuegen

Text von Richard Wagner

Nouvelle production

 

Direction musicale

KAZUSHI ONO

 

Mise en scene, decors et costumes

YANNIS KOKKOS

 

Collaboration artistique

ANNE BLANCARD

 

Eclairage

PATRICE TROTTIER

 

Video

KURT D'HAESELEER

 

Maqullage, coiffure et perruques

CATHERINE FRIEDLAND

 

Chef des chaeurs

PIERS MAXIM

 

Tristan JOHN KEYES

Isolde IRENE THEORIN

Koenig Marke FRANZ HAWLATA

Kurwenal MATTHEW BEST

Brangaene LILLI PAASIKIVI

Melot ANDREAS SCHEIBNER

Ein jungen Seemann DONAL J.BYRNE

Ein Steuermann RENE LARYEA

 

Orchestre symphonique et choeur d'hommes de la Monnaie

Konzertmeister ZYGMUNT KOWALSKI

 

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今日は9時頃にクラウンプラザをチェックアウトしてS+Uバーンでルフトブリュッケに移動。テンペルホーフ11時40分発のSNブルッセル便でベルギーに向かった。早めに予約したので税を含めても58ユーロと安い。ブリュッセル到着後ちょうど出発しかけていたシューマン行きのバスに乗った。シューマンからはメトロでブルッケール駅まで移動。バスとメトロを含めても4.5ユーロでアプローチも早い。駅近くのノヴォテルにチェックインした。部屋はちょうどツール・ノワールの正面で窓からサント・カトリーヌ教会とその広場が一望できる快適さ。モネも徒歩数分で行ける。

 

さて今日は18:30から<a href="http://www.lamonnaie.be/demunt-1.0/index.jsp?language=FR">大野和士&モネ劇場の「トリスタンとイゾルデ」</a>を見た。本日分は9/23予約開始前に既に完売となった殺到ぶりだったが、電話でカテゴリ4を予約出来ていた次第。そして本日14時半頃にチケットオフィスでチケットをピックアップしたが、ちょうど隣のブースで今日の公演を払い戻しされている方が居られ、そのカテゴリ1をオフィス経由で運よく購入できた。席はミッテル・ロージェに相当する場所でステージを真正面に全貌できるベストポジション。かくして晴れ晴れとした気分で開演まで街を楽しく散策した。魚介の良い匂いが漂うレストランの数々、中世の街並みなど魅力にあふれている。

 

今日の公演はカメラが入りネットラジオでも中継されている。開演前のトークがフランス語とオランダ語で2箇所に分けて行われていた。そしていよいよ開演。ヤニス・ココス新演出が注目される。シャトレで見たトロイもヤニス演出だった。前奏曲を経て幕が開くと陰影を帯びた闇の中、白い衣装の女性が宙に浮いている。まるでイゾルデが昇天していくさまを描いているのだろうか。変容する闇の世界に、蛍のような光の輝きが幾つか浮遊し彷徨っている。音楽とともに幻は消えてドラマ通りの登場人物が居並ぶ光景となった。フェードイン、フェードアウトといった手法と映像を駆使した点が面白い。映像によるトリスタンとイゾルデといえば、セラーズ演出&ヴィオラ映像のバスチーユ公演が記憶に新しいが、ヤニスのアプローチは映像は終始変容するカオスを映し出す。シャトレのトロイと同様に人物を上部から鏡で写したのを背景に投影するココス手法も用いられている。

 

一方、大野率いるアンサンブルは透明な響きとともに極めて柔軟な反応を見せる。劇的な箇所では素早いタクトが大きなうねりを作り出し、テンションに応じて柔らかなタクトさばきが抑揚を付けてゆく。この自在さが歌手達をドラマに求心させていく。

 

第1幕ではイレーネ・テオリンのイゾルデは不調ながらもジョン・キーズのトリスタンが安定感を見せた。今年4月のバレンボイム&フェストターゲ新演出と同様に、大野の優れた演奏と演出面の異彩さがインパクトを放つ。

 

第2幕ではまさに陶酔の音楽と幻想的なステージに釘付けとなった。空ろな闇の空間でイゾルデの真後ろにトリスタンが幻のように現れる場面は印象的。加えて、背景が青白く拡大してゆき、林が林立するシルエットが幻想的。ブランゲーネ警告の場面での歌も絶品で、この世とは思えぬ空ろさが終始漂う。普段はコミカルな印象が強いハウラータがマルケ王を演じたのもひとつのポイント。

 

3幕では立体的な舞台となり、下部にトリスタン、クルヴェナール、牧童が佇んでいるところを、上部に出来た通路を既に現世には居ないトリスタンかそれともあの世からの使者が確認に来たかのように下部を覗き去って行く。背景に開いた四角い開口から差し込む光はトリスタンを逆光に写す手法でゲッツ・フリードリヒ的でもある。陰影を帯びた雲がひしめく中、天上から差し込む仄かな光も象徴的。以上、30分の休憩を2回挟んで23時20分に終了。コンパクトで美しいモネ劇場に響きわたるワーグナーは充実そのもので、大野&モネの素晴らしさを改めて実感した次第。



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