2006/04/17 神々の黄昏/ウォーナー新演出パッパーノ&ロイヤルオペラ

 

 

THE ROYAL OPERA

Monday 17 April 2006

 

GOETTERDAEMMERUNG

Third day of Der Ring des Nibelungen, in a prologue and three acts

Music and libretto Richard Wagner

 

Conductor Antonio Pappano

Director Keith Warner

Set Designs Marie-Jeanne Lecca

Lighting Wolfgang Goebbel

Movement Director Claire Glaskin

Associate Director Matthias von Stegmann

Associate Set Designer Matthew Deely

Video Mic Pool and Dick Straker

 

The Royal Opera Chorus

Chorus Director Renato Balsadonna

The Orchestra of the Royal Opera House

Concert Master Peter Manning

 

First Norn Catherine Wyn-Rogers

Second Norn Yvonne Howard

Third Norn Marina Poplavskaya

Bruenhilde Lisa Gasteen

Siegfried John Treleaven

Gunther Peter Coleman-Wright

Hagen John Tomlinson

Gutrune Emily Magee

Waltraute Mihoko Fujimura

Alberich Peter Sidhom

Woglinde Sarah Fox

Wellgunde Heather Shipp

Flosshilde Sarah Castle

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今日は午前中にエアー・ベルリンでロンドンに飛び、16時からはコヴェント・ガーデン、ロイヤル・オペラの「神々の黄昏」プレミエ初日を見た。早々と全公演が完売となった人気公演であるが、オンライン予約の初日にパルケット前方の良い席を確保していた次第。キース・ウォーナー新演出も注目するところで、とてもスケールの大きなステージと演奏、キャストの素晴らしさに圧倒された。

 

開演前から幕に描かれたテンソルと思しき数式の数々に目を奪われる。先ず宇宙論とリングの関わりに思いを巡らすが、第1幕冒頭は、チョークで描かれた数式が円形に羅列され、これに渦巻きの照明が照射されることで、銀河宇宙を連想させる。やがて白い煙とともに現れた3人のノルンたちが赤く輝く糸を操るといった展開。そして場面が転じてブリュンヒルデとジークフリートの二人。ステージ左手に自在に傾斜する矩形の小ステージが現れて、これにジークフリートが乗る。背景のスクリーンでは、ラインへの旅を古生代の始祖鳥が飛んでいく様で表現される。かなりのスピードで変化していく光景は次第に現代から近未来を描き、ビルディング等が出現する。さらにステージ全体に映し出された格子状の立方体。このキューブの中にさらに1個のキューブが入っており、この映像が回転しながら大きくなり、再び幕が開くと背景が格子となったギービヒ家の場面。ソファに左からグンター、ハーゲン、グートルーネが寛いでいる場面で、ハーゲンは真ん中で先代が書き残したニーベルンクの物語を読みながら、まさに現在進行形といった感じで、ジークフリートが遣って来ることに狂喜している。登場したジークフリートは隠れ兜と馬の頭蓋骨を持っている。ちなみにこの兜が先ほどのキューブになっている。さらに背景に拡がった格子ガラスが左右を取り囲む形に変形し、奥からの照明によってブリュンヒルデの居場所に変わり、効果的な展開を見せる。

 

第2幕では冒頭の数式が再び現れ、宙に浮かんだ小船にアルベリヒが乗ってハーゲンに語りかける。そして再び登場するギービヒ家には黄金の像が立ち並び、正面の格子が開いて現れる婚礼の豪華絢爛さに目を奪われる。矩形の大きな台の上でグンター、ハーゲン、ブリュンヒルデが迫力のドラマを演じていく。オーケストラと歌手たちの緊迫は頂点に達するかのような凄さだった。特にリーザ・ガスティーンのブリュンヒルデは物凄い迫力で、パッパーノ&ロイヤルオペラの壮絶な演奏とともに度肝を抜かれた。

 

3幕は黒く焼け爛れたような荒涼とした場面で右手に朽ち果てたようなトネリコと思しき大木。その脇に小船があり、ジークフリートがその中で寝ている。この小船は後ほど棺として使われる。ステージ左手には半分に割れかかった大きな球面体。このセットを基本としながらフィナーレに向けた展開に終始釘付けにされてしまう。ジーフリートの葬送行進の場面では死に切れないジークフリートが暗闇を彷徨いながら、最後に奈落に落ちて消える。最終場面では先ほどの黄金の像が運び込まれて宙に吊るされる。あちらこちらで炎が燃え盛り、ブリュンヒルデの自己犠牲のクライマックス。フィナーレでは槍が突き刺さった老人、ヴォータンなのかワーグナーを象徴しているのか不明ではあるが、ステージ奥から現れ、最後の場面を嘆く。なぜかラインの乙女たちは黄金を取り戻してからは全裸になっている。さらに天上から巨大なリングが降りてきて、リングの鞍部に少女が立っている。果たしてブリュンヒルデの生まれ変わりなのかどうか。非常に意味深い展開であるが、滅亡から新しい生命とか希望といったものを感じさせる結末だった。

 

以上のドラマを盛り上げて行ったパッパーノの指揮が何とも素晴らしい。終始、密度と純度の高いアンサンブルを引き出し、テンションを自在に操る。歌手の状態にも柔軟にドライブしながら、充実のワーグナーを聞かせる。歌手ではガスティーンの迫力を筆頭にトムリンソンのハーゲンが素晴らしかった。トレレーフェンのジークフリートをはじめキャスト達のキャラクターが上手く生かされている。ともかくメガトン級の黄昏は凄い刺激だった。さてロイヤルオペラのリングチクルスは2007年の秋に3回上演され、予約は今年秋から開始されるとのこと。



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