2006/04/16 トリスタンとイゾルデ/フェストターゲ

 

 

staatsoper unter den linden

tristan und isolde

Handlung in drei Aufzuegen von Richard Wagner

FESTTAGE 2006, SONNTAG 16.04.2006

 

MUSIKALISCHE LEITUNG, Daniel Barenboim

INSZENIERUNG, Stefan Bachmann

BUEHNEBILD, Herzog de Meuron

KOSTUEME, Annabelle Witt

LICHT, Andreas Fuchs

CHORE, eberhard friedrich

DRAMATURGIE, Andreas Sieb

 

TRISTAN, Cristian Franz

KOENIG MARKE, Rnen Pape

ISOLDE, Elizabeth Connell

KURWENAL, Roman Trekel

MELOT, Reiner Goldberg

BRANGAENE, Michelle DeYoung

EIN HIRT, Florian Hoffmann

EIN STEUERMANN, Thomas Neubauer

STIMME EINES JUNGEN SEEMANNS, Pavol Breslik

TRISTAN II, Dominik Stein

staatskapelle berlin

staatsopernchor

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今日4/16は、チューリヒからエアー・ベルリンでベルリンに飛び、16時からウンター・デン・リンデンにてフェストターゲ2006「トリスタンとイゾルデ」を見た。冒頭、バレンボイムが登場してキャスト変更を告げた。デ・ヤング、トレケル、パーペは予定通りであるが、イゾルデはカタリーナ・ダレイマンからエリザベス・コーネルに、トリスタンはペーター・ザイフェルトからクリスティアン・フランツに代わるとのこと。劇場でお会いした知人の方によれば、プレミエ当日は予定通りのキャストで、2回目はポラスキとザイフェルトであったとのこと。3回ともキャスティングの組み合わせが違うのも面白いが、いずれにせよ、バレンボイム率いるシュターツカペレの緻密で充実しきった演奏を前にしては、キャスト云々は気にならない。それほど素晴らしい演奏だった。特に第1幕、オーケストラの圧倒的なサウンドにも負けないドラマチックさを聞かせたコーネルに驚嘆させられる場面もあり、フランツも以前のトリスタン以上に素晴らしい事に驚いた。

 

ブラッハマン新演出によるステージは舞台を高い位置、ちょうど高さ方向の中央に設けて、横を長く使ったもの。それ以外は黒でマスクされておりパノラマが左右に伸びた形になっている。1幕では船の幌を背景にした状態となり、白の混沌とした状態に写る。なお本物のトリスタンに加えて象徴としてのトリスタン2が登場する。冒頭、最初に登場するのはトリスタン2で、あたかも本物であるかのように振舞うが、何もしゃべらずにステージの重要なポイントに位置付けられている。2幕、ブランゲーネとイゾルデの場面でもトリスタン2は中央に座り、イゾルデが自然とトリスタン2に近づこうとするのも、トリスタンの魂がトリスタン2に姿を変えている為であろうか。このトリスタン2、時折、本物とは別の行動を行い、一人勝手に何処かに消えてしまったりもする。

 

さてステージは1幕から3幕まで通して横長の長方形空間が基本となる。1幕では閉ざされた空間、左右にしか開放されていない閉塞感が、トリスタンとイゾルデの抜け道の無い展開を必然であると感じさせる。空ろな白を背景にしたドラマはもはや現実界ではなく、夢の中、もしかすると憧れとか愛といった概念だけの世界なのかも知れない。そして、惚れ薬を飲んだ途端に、白からオレンジ一色の空間へと変貌する。もはやこの世とは思えぬ空間が広がり、もうトリスタンもイゾルデも死んでいるのではと思うほど現実から超越した感覚に捉われた。2幕では幕切れ近くに登場するはずのマルケ王も象徴としてパノラマステージの左から登場し、右側に通り過ぎてゆく。まさに概念やトリスタンやイゾルデの意思としての存在がステージを行き交う。運命的な展開に向けて時間も止められないといった印象を感じさせる。それにしても、2幕の陶酔しきった演奏は素晴らしかった。多彩に変幻する照明、特にコバルトブルーに浮遊するイゾルデとトリスタンがとても象徴的だった。3幕フィナーレの愛の死では、背景が白く光輝くことで、トリスタンもイゾルデもシルエットとして写る。最後はイゾルデとトリスタン2が一緒に旅立ち、一人本物のトリスタンが蹲って座っているという姿がとても印象的だった。

 

それにしてもバレンボイムの巧みな指揮と気合の入ったアンサンブルは見事。荘重な劇場の響きを含めて、リンデン・オーパーでしか体験できない素晴らしさを痛感した。特にフェストターゲでは渾身の演奏とキャスト達の気合が大きな感銘を生む。来年は、会場をフィルハーモニーに限定して、バレンボイムとブーレーズの二人の指揮でマーラーの交響曲全曲演奏。



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