2006/04/14 ポッペアの戴冠/ジョエル新演出ルセ&レ・タラン・リリック

 

L'INCORONAZIONE DI POPPEA

BUSENELLO MONTEVERDI

Opera musicale

THEATRE DU CAPITOLE

14 avril 2006 a 20 h

Nouvelle production

 

Direction musicale, Christophe Rousset

Mise en scene, Nicolas Joel

Decors, Ezio Frigerio

Costumes, Franca Squarciapino

Lumiere, Vinicio Cheli

 

LES TALENS LYRIQUES

 

Fortunal/ Valletto, Giorgia Milanesi

Virtu/ Damigella/ Pallade, Raffaella Milanesi

Amore, Khatouna Gadelia

Ottone, Max Emanuel Cencic

Soldato/ Lucano/ Familiare./ Tribuno, Emiliano Gonzalez Toro

Poppea, Anne-Catherine Gillet

Nerone, Sophie Koch

Arnalta, Gilles Ragon

Ottavia, Catherine Malfitano

Nutrice/ Familiare, Anders Dahlin

Seneca, Giorgio Giuseppini

Drusilla, Sabina Puertolas

Mercurio/ Consul/ Littore, Ivan Ludlow

Liberto/ Soldato/ Tribuno, Alfredo Poesina

Familiare/ Consul, Laurent Labarbe

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昨日4/13はマルク・ミンコフスキ&バスチーユ「モーツァルトとサリエリ」を見る予定であったが、パリ到着のフライトが遅いため、駆け込んでも後半だけとなってしまう。チケットが無駄になるが、CDGからORYに移動し、空港近くのホテルに泊まることにした。そして今日4/14は、80ユーロのイージージェットでTLSに飛んだ。目的はトゥールーズ・キャピトル劇場のモンテヴェルディ「ポッペアの戴冠」新演出。演奏がクリストフ・ルセ指揮のレ・タラン・リリックなので、これは聞き逃せない。昨年夏、ドロットニングホルムでのラモー「ゾロアストル」も素晴らしかったように、彼が率いる古楽アンサンブルでモンテヴェルディが聴けるのは嬉しい。

 

さてニコラス・ジョエルの新演出はオーソドックスならもポッペアの物語を新鮮に描いていく。まずスケールの大きなセットはシンプルで非常に美しい。ステージ中央に巨大なローマの石造が円形に並び、ロマネスク様式の白い大理石の神殿を形作る。これが円形ステージとなって、場面に応じて回転する様子は、昨年チューリヒで見たポッペアと趣向を同じくする。とはいえジョエルが描く手法は、回転に応じて幾つもの場面を用意するのではなく、全開した半円形では開放感、一部だけ空間が開放した場面では、人物の一対一の心理描写などといった風に上手く使い分けて行く。これに天井からも巨大な円筒形の壁面が降りてきて、幻想的な照明とともに美しいデザインを作っていく。

 

キャストもそれぞれのキャラクターにぴったりの歌手で構成され、例えばポッペアは美貌のアンネ・キャサリン・ジレットがセクシーな衣装でゾフィー・コッホ演じるネローネを魅了していく。オッターヴィオはキャサリン・マルフィターノの貫禄と深みが素晴らしい。多数のキャスト達はそれぞれ時代を超えた衣装で上手くコーディネイトされており、加えてルセの指揮がステージを引き締めていく。ドラマのテンションに応じて、古楽アンサンブルも典雅さから凄みのある迫力に変幻自在。特にチェンバロとハープの煌びやかさは極上で、キタローネの憂いある響きも心に響く。キャピトル劇場は宝石箱のように美しくて音響も絶妙。パルケットの席も視界が素晴らしく、特に今日のような古楽アンサンブルでのオペラにぴったりだ。

 

ともかく、ルセ率いる古楽の精鋭達とメリハリのあるキャスト達が規模の大きなステージにぴったりと溶け込み、全体に起伏に満ちた展開に目と耳が離せない集中度だった。先月のクリスティ&レザール・フロリサンの極上さが忘れられぬ中、今回もまた素晴らしすぎる内容のポッペアに時間を忘れて興じることが出来た。開演は20時と遅めであったが、20分の休憩を1回入れて終演は23時半頃。

 

トゥールーズ・キャピトルでは毎回魅力的なプログラムが並んでいる。昨日4/14はデセイ&ヴィラゾンのオペラアリアのコンサートがあり、6月はジョエル演出のマイスタージンガーが予定されるなど、機会があればまた来たい劇場である。

 

さて今日はこれから0時43分の寝台列車でパリに戻る。SNCFのサイトでオンライン購入したチケットは一等寝台で二等の割引とほぼ同じ60ユーロのディスカウント。チケットは自分でプリントアウトできないタイプであったが、日本への郵送も無料で1週間以内に届いた。ともかく、忙しい旅にはチケット売り場に並ばなくて良いのが助かる。

 

(PS)

 

トゥールーズの街はガロンヌ河畔の風景や新旧の町並み等とても美しい。特にキャピトル広場はナンシーと同様に壮麗な建物に囲まれ、雰囲気がとても良い。そこから5分も歩けば聖セルナン大聖堂が聳えている。ヨーロッパ最大のロマネスク様式と言われ、実際に内部は非常に奥深くて、外は初夏の陽気でも、内部は寒いくらい冷えている。3時の賛課では、司祭達が聖堂内を巡回しながアンティフォンを歌っていた。これは吟遊詩人達のトルバトールと非常に似ており、大聖堂の響きはさすがに荘厳。

 

さて教会内部に小さなショップがあり、アンサンブル・グレゴリアン・サン=ジェロームによる「ロザリオの秘蹟」というCDを見つけた。録音はセルナン大聖堂ではなく、歩いて1分ほどのトォー通りのノートルダム教会で1997年12月に収録されたもの。この教会は、聖セルナンが西暦250年に殉教するまでの間、実際に彼が布教活動した地に建てられており、祭壇中央にはマントを広げた小さなマリア像がある。ちなみにノートルダムは聖母マリアを意味する。そのCDの内容は、モンセラートの朱い本から「聖母マリア」と「輝ける星」の2曲をアレンジしているのが興味深い。トゥールーズはスペイン北西部のサンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼の途上としても栄えたが、むしろピネレーを越えたモンセラートの方が近く、トゥールーズ地方で使われていたオック語が朱い写本でも歌われていたことなどから、モンセラートとの関わりを感じさせる。トゥールーズのノートルダムは白い聖母であるが、モンセラートは黒い聖母という対比も興味深い。

 

CDに収録されいる演奏は厳粛な聖堂の響きも捉えられており、2曲目は「乙女がみごもりて」。次に歌われる3曲目「マニフィカート」が特に感動的。つづいて「幼子が生まれた」の神秘。シメオン賛歌の一節「異邦人を照らす光」の祈りに続いて、「アレルヤ唱」、そしてマリアを象徴する7という数字を意図したかどうか、7曲目にサンタ・マリアを湛える「アヴェ・マリア」。とてもピュアに響くポリフォニーに心を清められる。「枝の主日」聖体拝領唱、怒りの日を経て、12曲目で再びアヴェ・マリア。ここで三位一体の3と大地の4の掛け算が12番目に相当する。「主はわが罪ゆえ」「ガリラヤの人々よ」「楽園にて」と続き、17曲目で「めでたし天の后」は1分半と短いものの、心が引き締まる。続くモンセラート写本「輝く星」は鈴の音と共に当時の巡礼者たちのパワーが蘇るかのよう。そして19曲目に聖務日課、終課が14分強にわたって収録されており、まるでその場に居るかのような臨場感。最後の20曲目はサルヴェ・レジーナで聖処女マリアで締めくくられる。以上のCDレーベルはトゥールーズ市役所で15ユーロ。



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