2006/03/18 『ヘラクレス』クリスティ&レザール・フロリサン/バービカン

 

 

Hercules

George Friderice Handel

18 March 7:15pm

Barbican Theatre

 

Conducted By William Christie

Directed by Luc Bondy

Orchestra and Chorus of Les Arts Florissants

 

Hercules, William Shimell

Dejanira Joyce DiDonato

Hyllus, Ed Lyon

Iole, Ingela Bohlin

Lichas, Katija Dragojevic

Priest of Jupiter, Simon Kirkbride

 

Set Designer, Richard Peduzzi

Costume Designer, Rudy Sabounghi

Lighting Designer, Dominique Bruguiere

Movement Director, Michel Kelemenis

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今日は、フィルハーモニー近くのホテルをチェックアウトし、7:20頃のSバーンでフリードリヒシュトラーセ経由でシェーネフェルト空港へ移動した。9:40発のイージー・ジェットでロンドン・ルートン空港に飛ぶ。同じ時刻にSTN行きもあるが、LUT行きの方が運賃1.9ポンドと格安。またイージージェットならではの自動チェックインが採用されており、予約番号を入力し、いくつかの質問に答えるだけでボーディングパスが出てくるシンプルさ。列に並ばなくてとてもスピーディだ。フライトも定刻の10:30に到着して、バスでベイカーストリートへ移動。ちょうどキングスクロス駅で工事があるとのことで、幾つかのラインを乗り継いでリバプールストリート近くのホテルにチェックインした。

 

さて本日はバービカン・センターにてウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサンの演奏でヘンデル「ヘラクレス」を見た。演出はリュック・ボンディ。2004年エクサン・プロヴァンスとの共同プロダクションであり、ロンドン公演は今月15、17、18日の三日間のみ。今日はその最終日に当たる。当初予定されていたイオール役のインゲラ・ボーリンは喉のトラブルのため、演技だけ行い、合唱から抜擢されたハンナ・バヨーディがオーケストラ・ピットから歌うことになった。彼女はクリスティ&レザール・フロリサンの2003年ボレアードへのデビュー以来、エルヴェ・ニケとキング・アーサー、ディドーとエネアスなどで活躍とのこと。2006年秋の日本公演ではラモーのラ・パラディーン(遍歴騎士)にも出演が予定されている。ちなみにレザール・フロリサンのオペラシティ公演予定は中止になったとのことであるが、彼女を一足先に聞けるのも興味深い。

 

オンライン予約した席はパルケットのセンター中央部で、勾配が大きめに取られているので前の人が全く邪魔にならず、視界、音響ともに抜群であった。そして、何といってもその音楽が始まった瞬間、今まで聞いたことが無いほど典雅で伸びやかなサウンドに驚かされた。劇場のサイズと構造が繊細な古楽器をほどよく増幅し、絶妙のハーモニーを奏でていく。

 

クリスティは颯爽とした指揮ぶりで合唱やソリスト達に巧みに導いて、ドラマを展開していく。ボンディ演出のステージはややモノトーン的なシンプルさで、砂漠にヘラキュレスの分解された巨像が転がるという象徴的なもの。砂漠の中のドラム缶も大きなアクセントとなるが、合唱とキャストのステージ上の構図など、極めて洗練された様式美すら感じさせる。ヘラキュレス役のウィリアム・シーメルとデジャニーラ役のジョイス・ディドナートは共に思慮深いキャラクターを彷彿とさせ、その力強い演技がドラマを引き締めていく。歌を歌えなかったボーリンの演技も抜群に冴え渡り、バヨーディも絶妙にサポートして、まるでピットから歌っているとは感じさせないほどの素晴らしさ。バヨーディの麗しい歌声に陶酔してしまった。

 

斯くのように演奏、歌と合唱が見事に調和し、加えてボンディ演出のシンプルさが個々の持ち味を活かしていく。ともかく今まで見たきたヘンデルの中でも最高の出来栄えに驚嘆した。クリスティ&レザール・フロリサンの劇場ものは、やはりパリやロンドンなど本拠地で見なくてはならないことを痛感させてくれた。

 

さてバービカン来シーズン予定が発表されている。さすがに古楽系が目白押しで、今年10/17はアイム&コンセール・アストレーのヘンデル「テオドーラ」にはアンネ・ゾフィー・フォン・オッターが出演する。続いて10/26はガブリエル・コンソート&プレイヤーズのハイドン「天地創造」、10/27はマグダレーナ・コジェナーがジアルディーノ・アルモニコと共演。10/31にはアンナ・ネトレプコとローランド・ヴィラゾンがマルコ・アルミリャート&ロイヤル・フィルと共演する。11/24にはアンドレアス・ショールがアカデミア・ビザンチーナと共演。12/2にはルネ・フレミング&ロイヤルフィルもある。12/9はジョアン・ディエゴ・フローレスのリサイタル。そして12/15はクリスティ&レザール・フロリサンのバッハ「クリスマス・オラトリオ」が。来年1/10にはダニエル・ハーディング&ドレスデン・シュターツカペレのマーラー交響曲9番。2/10、11はヤンソンス&コンセルトヘボウ、2/27にはカウンター・テナーのデヴィッド・ダニエルズがモンテヴェルディを歌う。来年3月のトーマス・アデス・プロジェクトではラトル&ベルリンフィルやイアン・ボストリッジが登場する。また来年5/11はガーディナー&イングリッシュ・バロック・ソリスツ&モンテヴェルディ合唱がハイドンのオラトリオ四季を演奏。5/17にトーマス・ハンプソン&スーザン・グレアム、5/24にもクリスティ&レザール・フロリサン、5/27はクリストフ・ルセがヘンデル「アリオダンテ」を振る。これにはキルヒシュラガー、ゲノーらも出演する。4/5はヘレヴェッヘ&コレギウム・ヴォカーレのヨハネ受難曲、4/19はルネ・ヤーコプス&フライブルク古楽とのヘンデル「ジューリオ・チェザーレ」などなど。来年6月にはピーター・セラーズ&ドーン・アップショウらによるサリアホ「シモーネの受難」が興味を惹く。



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