2005/08/13 『シエラ・モレナのドン・キョショッテ』/インスブルック古楽フェスティバル |
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Innsbrucker Festwochen Rene Jacobs, Musikalischer Leitung Nicolas Rivenq, Don Chisciotte Taenzerinnen und Taenzer MITGLIEDER |
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いわゆるミゲル・セルヴァンテスのドン・キホーテの物語であり、ステージ冒頭では、白の背景におそらくセルヴァンテスの小説の最終稿と思われる箇所が裏表逆に映し出されている。FINの後にサインがある。左手には大きなインクの瓶があり、そこには大きな羽ペンが差し込まれている。ドラマが始まると、大きな本がステージの床に置かれ、紐解かれている。左右にも本が立て掛けられており、背表紙のデザインは、今年のフェストヴォッヘンの総合プログラムにあわせられている。背表紙のタイトルには色んな本があって、オペラの最中に、幾つかの本が順に引き出されるといった演出が加わる。ユニークな登場人物達がドタバタと物語を進めていくが、ステージのセットがとても良く出来ていて、演出、音楽が見事にマッチングしている。先日のザルツブルクにて、ミトリダーテなど優れた演出を見ることが出来たが、今日のドン・キショッテはザルツブルクをも凌ぐのではないかと思うほど、緻密で精巧な出来栄えとなっている。特に2幕は巨大な本が積み上げられ、空間をフルに活用した見事なステージだった。ドミニク・ヴィスは5月の「カリスト」で大活躍したが、今回もスペインの闘牛士の衣裳で、見事なリーゴ役を演じ、大きなセットを機敏に駆け上ったりする。セット装置だけでなく、歌手達がこのセットを使って縦横無尽に動き回る点もステージを面白くしている。三銃士、赤頭巾、ぬいぐるみ、その他魑魅魍魎と数々のキャラクターも登場し、本来の喜劇がよりリアルな面白さとなっていく。 ルネ・ヤーコプス率いるベルリン古楽アカデミーの演奏も見事だった。本来、コンティはテオルボ奏者として活躍し、カルダーラなどと並ぶオラトリオ、オペラ作曲家になったとのこと。そんなことから、テオルボをコンティヌオとして上手く活用している点が印象的だった。ピット内部には2台のチェンバロ、中央にテオルボ、リュート2本、各種古楽器が配列したものとなっているが、バロック・ギターのアンサンブルも大きなアクセントとなっていた。特に1幕のフィナーレはラ・フォリアをベースにバロック・バレ、とはいってもドタバタ喜劇のパントマイムであるが、フォリアのメロディ変奏と実に良くマッチングしていた。金管もピット以外に配置し、バロックオペラの輝かしいアンサンブルを最大限盛り上げていく。18時開始、終演22時30分と4時間半に及ぶ充実度ながらも、全く飽きることのない、面白さ、音楽の美しさ、躍動と多彩に楽しむことが出来た。ともかくこのステージは必見中の必見であるが、今回のプロダクションは他と共同制作していないようなので、インスブルック独自のものとなるのは非常に勿体無い話。ちなみに本日はORFによりオーディオ収録された。8月20日19:30からOe1で放送される。是非DVD化して欲しいプロダクションだ。 |