2006/10/29 トーマス・カクシュカ/メモリアル・コンサート

wiener konzerthaus
Sonntag 29. Oktober 2006, 19.00 Uhr
Grosser Saal

Gedenkkonzert fuer Thomas Kakuska

Franz Schubert (1787-1828)
Oktett F-Dur D803 (1824); Adagio-Allegro (1. Satz)
Hanna Weinmeister, Daniel Sepec, Isabel Charisius, Valentin Erben,
Alois Posch, Norbert Taeubl, Milan Turkovic & Rodovan Vlatkovic

Olivier Messiaen (1908-1992)
"Quatuor pour la fin du temps" (1940/41):
"Louange a l'Eternite de Jesus" (5. Satz)
Valentin Erben & Sir Simon Rattle

Bedrich Smetana (1824-1884)
Klaviertrio g-moll op.15 (1855/57)
Moderato assai (1. Satz)
Gerhard Schultz, Lilia Schulz-Bayrova & Noam Greenberg

Claude Debbussy (1862-1918)
"Chansons de Bilitis" (1897/98)
"La Flute de Pan"
"La Chevelure"
"Le Tombeau des Naiades"
Magdalena Kozena & Sir Simon Rattle

Antonin Dvorak (1841-1904)
Klavierquintett A-Dur op.81 (1887)
Dumka. Andante con moto-Vivace (2. Satz)
Sir Simon Rattle & Alban Berg Quartett

Richard Strauss (1864-1949)
Ehrenmitglied der Wiener Konzerthausgesellschaft
"Till Eulenspiegels lustige Streiche" op.28 (1894/95)
Bearbeitung fuer neun instrumente von Brett Dean
Rainer Honeck, Daniel Froschauer, Hans Pter Ochsenhofer, Franz Bartolomey,
Alois Posch, Gerhard Schulz, Norbert Taeubl, Milan Turkovic & Thomas Joebstl

Hilda Paredes (*1957)
"In Memoriam Thomas Kakuska" fuer Violine solo (2006)
Urauffuehrung
Irvine Arditti

Rudolf Kronegger (1875-1929)
"So a Weana Tanzl" op.120
Angelika Kirchschlager & Helmut Deutsch

Johannes Brahms (1833-1897)
"Gestille Sehnsucht" op.91/1 (1884)
Angelika Kirchsclager, Isabel Charisius & Helmut Deutsch

Franz Schubert
Klavierquintett A-Dur D667 "Forellenquintett"(1819):
Andantino. Thema mit Variationen (3. Satz)
Guenter Pichler, Isabel Charisius, Valentin Erben, Alois Posch &
Elisabeth Leonskaja

Sergej Rachmaninow (1873-1943)
Vocalise op. 34/14 (1912/15)
Fritz Kreiler (1875-1962)
"Liebeslied" (1910)
Heinrich Schiff & Elisabeth Leonskaja

Gustav Mahler (1860-1911)
"Ich bin der Welt abhanden gekommen" (1901)
Franz Schubert
"Der Wegweister" D911/20 (aus "Winterreise", 1827)
"Du bist die Ruh" D776 (1823)
"An die Musik" D547 (1817)
Thomas Quasthoff, Orchester aus Freunden und Kollegen von Thomas Kakusuka &
Claudio Abbado

Angelika Kirchschlager Mezzosopran
Magdalena Kozena Mezzosopran
Thomas Quasthoff Bariton
Wolfgang Shulz Floete
Norbert Tauebl Klarinette
Thomas Joebstl Horn
Radovan Vlatkovic Horn
Benedikt Dinkhauser Fagott
Milan Turkovic Fagott
Irvine Arditti Violine
Daniel Froschauer Violine
Rainer Honeck Violine
Daniel Sepec Violine
Hanna Weinmeister Violine
Hans Peter Ochsenhofer Viola
Franz Bartolomey Violoncello
Heinrich Schiff Violoncello
Ehrenmitglied der Wiener Konzerthausgesellschaft
Lilia Schulz-Bayrova Violoncello
Alois Posch Kontrabass
Helmut Deutsch Klavier
Noam Greenberg Klaveir
Elisabeth Leonskaja Klavier
Ehrenmitglied der Wiener Konzerthausgesellschaft
Sir Simon Rattle Klavier
Ehrenmitglied der Wiener Konzerthausgesellschaft
Alban Berg Quartett
Ehrenmitglied der Wiener Konzerthausgesellschaft
Guenter Pichler Violine
Gerhart Schulz Violine
Isabel Charisius Viola
Valentin Erben Violoncello

Orchester

Floeten
Matthias Schulz
Wolfgang Schulz

Oboen
Constanze Brosch
Harald Hoerth

Englischhorn
Dominik Wollenweber

Klarinetten
Johann Hindler
Norbert Taeubl

Fagotte
Benedikt Dinkhauser
Milan Turkovic

Hoerner
Elisabeth Hollensteiner
Thomas Joebstl

Harfe
Adelheid Blovsky-Miller

Pauke
Roland Altmann

Violinen
Irvine Arditti
Maria Ehmer
Bettina Gradinger
Eszter Haffner
Anna Knopp
Klaus Maetzl
Heime Mueller
Guenter Pichler
Laura Samuel
Sophie Schafleitner
Michael Schnitzier
Gerhard Schulz
Veronika Schulz
Daniel Sepec
Hanna Weinmeister
Georg Wimmer

Bratschen
Donata Boecking
Isabel Charisius
Krzysztof Chorzelski
Katharine Hart
Anett Homoki
Markus Huber

Violoncelli
Franz Bartolomey
Matthias Bartolomey
Lilia Bayrova-Schulz
Valentin Erben
Clemens Muellner
Christine Vitoux-Erben

Kontrabaesse
Alois Posch
NN

Dirigent Claudio Abbado
Ehrenmitglied der Wiener Konzerthausgesellschaft

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ウィーンフィルの後はゆっくりとランチを取り、かなり風が強いが、晴天のウィーンを楽しむことが出来た。ケルントナーの通りも観光客が少なめで落ち着いた佇まいが良い。コンツェルトハウスから徒歩1分のソフィテルにチェックインした。その後、猛烈な雷雨となる。もし外を歩いていれば、傘も役に立たないずぶ濡れになっていたに違いない。

さて今日はマチネに加えて19時からコンツェルトハウスにて<a href="http://konzerthaus.at/programm/000e113f">トーマス・カクシュカの追悼コンサート</a>を聴いた。昨年、6/2紀尾井ホールでのアルバン・ベルクSQではカクシュカが来日不可能とのことで弟子のイザベル・カリシウスが出演した。プログラムもベルク叙情組曲がカンチェリ「夜の祈り」に変更されたことが記憶に新しい。それからほどなく7/4にカクシュカ逝去。かつての日本公演で聞かせてくれたカクシュカの演奏姿が懐かしい。

さて今回のメモリアル・コンサートには、アルバン・ベルク・カルテットはもとより、歌手ではコジェナー、キルヒシュラガー、クワストホフ、さらにシフ、レオンスカヤ、ヴァインマイスター、アルディッティ、ドイッチュ、ウィーンフィルのメンバーやラトルやアバドなど豪華キャスト達が出演する。アルバン・ベルクSQのチェロ奏者エルベンが、このコンサートに至る経緯などをプログラム冊子に記載している。NYから掛かって来たラトルの電話やアバドからの協力、そして出演者達のスケジュールの隙間を見つけて日程調整した点、コンツェルトハウスとの交渉、プログラム選曲など。さらに冊子には、アバド、アルデッテ、F.バルトロメイ、カリシウス、ドイッチュ、レオンスカヤ、メータ、トゥルコヴィッチ、ピヒラーによるメッセージが寄せられている。特にアバドのメッセージはイタリア語で掲載されており、ドイツ語訳が付けられている。人生におけるウィーンとの関わり、とりわけカクシュカとはウィーンで一緒に学び、一緒にブランデンブルク協奏曲3番を演奏した事などが想いで深く語られている。この時、カクシュカはヴィオラを弾き、アバドはチェンバロを弾いたとのこと。

さて前半はシューベルトの八重奏曲ヘ長調D.803の1楽章で開始された。この曲はカクシュカもヴィオラとしてコンツェルト・ハウスのモーツァルト・ザールにて良く演奏したという所縁から冒頭を飾る。ヴァインマイスター、ゼペック、カリシウス、エルベン、ポッシュ、トイブル、トゥルコヴィッチ、ヴィラトコヴィックが演奏。ベートーヴェン七重奏曲とも比較される名曲が感慨深く響きわたった。

続くメシアンの「世の終わりの為の四重奏曲」「永遠のイエスへの頌歌」ではエルベンがチェロを、ラトルがピアノを弾いた。永遠の神秘を感じさせる音楽はカクシュカの安らかな眠りを祈るに相応しい。続いて、フルートのシュルツを加えたスメタナのピアノ三重奏曲と変化ある内容となる。特にコジェナーとラトルによるドビュッシー:ビリティスの歌「パンの笛」「髪」「水の精の」が絶品。白のロングドレスで一際美しいコジェナーが会場を明るくした。そしてメリザンドを想わせる陰影に富んだ美声。ラトルの絶妙なピアノとの溶け合いも素晴らしい。前半のフィナーレはドヴォルザークのピアノ五重奏曲イ長調op.81の2楽章ドゥムカで、ラトルとアルバン・ベルクSQが共演。ボヘミヤの郷愁を湛えながら情熱に満ちた演奏は圧巻。さすがに前半を締めくくるに豪華な内容だった。多彩なプログラミングは全く時間を感じさせないで、これで1時間30分経過したことに驚いた。

後半プログラムは、カクシュカのユーモアにちなんでR.シュトラウス「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」で始まった。彼と親交のあったウィーンフィルのメンバー達が演奏した。今年3月のベルリンフィルでも演奏されたコマロフ流星を作曲したブレット・ディーンが室内楽バージョンとして編曲したもの。ホーネックをはじめとする9名のアンサンブルの見事さに息の呑んでしまった。その豊かな響きはオーケストラといっても良いくらい。シュルツはフルートとピッコロを頻繁に交互で演奏していたのも印象的。

続いてヒルダ・パレデスが今晩の為に作曲した「トーマス・カクシュカのメモリアル」がアーヴィン・アルディッティのVnソロで初演された。豪華な演奏が並ぶ中、ヴァイオリン無伴奏、それも無調となれば地味さを感じさせるが、さすがにアルディッティ・カルテットが取り組むレパートリーとあってか不思議な魅力を放っていた。

キルヒシュラガーはコジェナーとは対照的に黒の胸元が眩しい衣装で登場した。ヘルムート・ドイッチュのピアノ伴奏で、ルドルフ・クロネッカーのウィーン歌曲、カリシウスのヴィオラが加わったブラームス「聖なる子守歌」の2曲と続く。

ここで再びシューベルトに戻り、ピアノ五重奏曲イ長調D.667「ます」から3楽章の変奏がピヒラー、カリシウス、エルベン、ポッシュ、レオンスカヤによって演奏。続いてシフとレオンスカヤがラフマニノフのヴォカリーズop.34、14、さらにクライスラーの「愛の歌」を演奏した。レオンスカヤはシャトレのマチネ以来久しぶりに聞いたが、安定した貫禄が素晴らしい。それにしても多彩なプログラムが続く。

そして最大の期待は、豪華メンバー達による特別編成オーケストラをアバドが指揮し、クワストホフが歌うプログラム。コンサートマスターはピヒラーがつとめる。冒頭は、マーラーの5つのリュッケルトの詩による歌曲から「私はこの世に忘れられて」、続いてシューベルト「冬の旅から道しるべD.911」「きみはわが憩いD.776」「音楽に寄せてD.547」が歌われた。指揮台左手にクワストホフの椅子が置かれ、アバドは暗譜にて指揮する。マーラーとシューベルトは拍手無しに続けて演奏された。よってこれら4曲をミックスした内容は、まるで一つの作品を成すかのように強い求心力で結ばれてゆく。冒頭、マーラーの厭世観漂う神妙が、シューベルトに引き継がれ、次第に光明を帯びた展開となり、An die Musikにおいて感動の頂点に達する。クワストホフの雄弁な歌には感動で奮い立つほど。アバド率いるアンサンブルも絶妙な透明感と音楽の感動に満ち溢れ、今日最大のクライマックスを築いた。ともかくこの演奏にカクシュカも涙しているに違いない。まさに言葉を失う瞬間。沈黙の後、喝采となってゆく。カーテンコールでは中央左にアバド、右にラトルと手をつないでいるシーンも感動を熱くさせられた。

後半も1時間30分に及んだが時間を超越した充実ぶり。ラトルもクワストホフも昨日までベルリンで演奏があったように、今日のコンサートにはリハーサルもそこそこに臨んだものと察せられるが、この多彩で高密度な内容に驚嘆するばかりであった。



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