2005/05/07
『ドクター・ファウスト』ヴィーラー新演出/シュトゥットガルト歌劇場

Ferrccio Busoni
Doktor Faust
Oper in zwei Vorspielen, einem Zwischenspiel
und drei Hauptbildern
Text vom Komponisten
Erstauffuehrung in der vom Komponisten hinterlassenen
unvollendeten Form
Koproduktion mit der San Francisco Opera
Musilalische Leitung Lothar Zagrosek
Regie und Dramaturgie Joss Wieler/ Sergio Morabito
Buehne und Kostueme Anna Viebrock
Lightdesign David Finn
Chor Michael Alber

Wagner Attlia Jun
Doktor Faust Gerd Grochowski
Drei Studentenaus Krakau Bernhard Schneider/ Christoph Soekler /
Matias Tosi-Sokolov
Gravis Roman Ialcic
Levis Johannes Wieczorek
Asmodus Stefan Storck
Beelzebuth Heinz Goehrig
Megaeros Alois Riedel
Mephistopheles Juergen Mueller
Gretchens Bruder Johannes Martin Kraenzle
Gretchen Jenny Langner
Leutnant Johan Weigel
Zeremonienmeister Matthial Hoelle
Herzog von Parma Nills Olsson
Herzogin von Parma Eva-Maria Westbroek
Ein Student Heinz Goehrig
Platoniker Helmut Hozapfel
Theologe Wolfgang Probst
Jurist Mark Munkittrick
Naturgelehrter Michael Ebbecke
Der Schuechterne Steffen Balbach
Wagners Verlobte Kristina Lorenz
Fuenf Studenten aus Wittenberg Glenn Alamilla/ Dimitrie Lazich
/ Nam Soo Kim/ Johan Weigel/ Sebastian Peter
Nachtwaechter Juergen Mueller

Staatsorchester Stuttgart
Chor und Extrachor der Staatsoper Stuttgart

Premiere
Samstag, 7. Mai 2005
Beginn 19.30 Uhr, Ende 23.30 Uhr
Pause nach dem Szenischen Intermezzo
Staatsoper Stuttgart
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5/7はウィーンからフランクフルトへ移動してから、DBでシュトゥットガルトに入る。LHの電子チケットの控えに従って、午後のOS便に搭乗手続きしたところ、当該のフライトが存在しないことがわかった。どうもコンピューターのミスでフライト一覧に誤記があったようだ。大変困ったが、遅めの便で同一ルートのフライトがあり、それに搭乗することが出来た。FRAでDBに乗り換えたが、シュトゥットガルト入りは結構遅めとなってしまった。さいわいホテルは劇場近くのル・メリディアンを予約していたので、チェックインしてから公演には間に合った。

さて今日の演目はシュトゥットガルト州立歌劇場でのブゾーニ「ドクター・ファウスト」。ヨッシ・ヴィーラーとセルジオ・モラビトによる新演出はサンフランシスコ歌劇場との共同制作によるもので、シュトゥットガルトでは今日がプレミエ公演である。なおブゾーニの「ドクター・ファウスト」は1925年ドレスデンにてフィリップ・ヤルナッハの補筆版にて初演され、1985年にはアントニー・ボーモントの補筆版にてボローニャでも上演された。しかし今回のプロダクションでは、作曲者自身が残した未完成版で上演されるのが興味深い。

ヴィーラーとモラビトに、舞台と衣裳を担当するアンナ・ヴィーブロックを含めた3人組はザルツブルクでの「ナクソス島のアリアドネ」がとても印象的であった。そのステージはシンプルですっきりとしたものであったが、今回は広いステージの手前にファウストの雑然とした生活空間が置かれていた。

幕は開演前から開いており、演奏が始まる前に一度暗闇となり、この間に登場人物たちは所定の位置に就く。さて前奏とともに始まったステージでは、酔っ払いファウストがベッドで死んだように寝ており、傍らに弟子のワーグナーがパソコンやデジタルカメラを駆使して、研究に没頭している。おもむろに起き上がったファウストは全く締まりの無い放蕩者といった感じで、三人の学生の登場、魔法の本、といった序幕が展開していく。またメフィストフェレも冴えないコート姿で登場し、とてもメフィストフェレとは思えない風貌である。こういった普通の生活の情景が、オペラの筋書きと音楽にぴったりと合って来るところが面白い。例えばファウストが騒いでいる間に、メフィストが髭をそり、髪を揃え、僧侶の衣裳に着替える。そして壁に設置されたオルガンを開いて演奏を始める。するとスコアに記載されたオルガンのパッセージが響く。といったように、オペラの進行がヴィーラー&モラビト流に絶妙に解釈されていく。ドラマはグレートヒェンの兄が兵士達に殺されてしまう幕間劇まで進んで休憩となった。

後半はパルマ侯爵邸、ヴィッテンベルクの居酒屋、最後の幕切れと続くが、前半のステージの左側に宝石を陳列する机が幾つか追加されただけのステージとなる。特にパルマ侯爵の場面では、左側ガラス扉の左奥から、招待された客人達が華麗にパーティの場面を展開する。一方、中央のベッドにはファウストが寝ていて、さならがらパルマ侯爵邸での晩餐はファウストが夢見ている世界ではないかと思わせてしまう。1999年ザルツブルクのムスバッハ演出ではパルマ侯爵夫人もファウストの妄想という解釈が取られていたが、今回のヴィーラー&モラビトの解釈にも共通性を感じた次第。ともかく未完成版ながらも現代ドラマとして演劇と音楽の要素を大いに楽しませてくれた。

以上のように非常に刺激的で興味深い展開が続いたが、演奏と歌も大変素晴らしかった。特にツァグロセクの指揮の明晰さ。全てのパートがくっきりと透明に浮かび上がると同時に、アンサンブル全体が雄弁に語りかけてくる様は素晴らしい。なお聞こえてくるオルガンや合唱が非常に遠近感をもって、バランス作りしていた点も効果的で、ブゾーニの音楽の魅力が余すことなく描写されていた。さすがにシュトゥットガルトの質の高さを納得させられた。



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