2005/04/29
『ルル』R.ジョーンズ演出ダニエル指揮/ロンドンENO

English National Opera
Friday 29 April 2005, 19.00
Lulu
Opera in a prologue and three acts by Alban Berg
Act Three realized by Friedrich Cerha
Libretto by the composer
after Erdgeist (Eartb Spirit) and Die Buecbse der Pandra (Pandora's Box)
by Frank Wedekind
By arrangement with Alfred A. Kalmus Ltd
(Universal Edition A.G Vienna)
English translation by Richard Stokes

Characters
Lulu, Lisa Saffer
Countess Geschwitz, Susan Parry
Dresser/ Schoolboy/ Waiter, Anna Burford
Proffessor of Medicine/ Theatre Manager, Graeme Danby
Painter/ Second Client, Richard Coxon
Dr Schoen/ Jack the Ripper, Robert Hayward
Alwa Schoen's son, Jeffrey Lloyd-Roberts
Schigolch, Gwynne Howell
Animal Tamer/ Acrobat, Robert Poulton
African Prince/ Manservant/ Marquits, Alan Oke
Police Commissioner, Roger Gegley
Fifteen-year-old Girl, Claire Mitcher
Servant, Paul Napier-Burrows
Mother, Jane Powell
Designer, Moira Harris
Journalist, Toby Stafford-Allen

Conductor, Paul Daniel
Director, Richard Jones
Associate director, Annilese Miskimmon
Set designer, Paul Steinberg
Costume designer, Buki Shiff
Lighting designer, Pat Collins
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今日はロンドン、イングリッシュ・ナショナル・オペラ(ENO)にてアルバン・ベルクの「ルル」(ツェルハ3幕版)を見た。フランクフルト歌劇場との共同プロダクションによるもので、フランクフルトでは2003年秋に上演されている。R.ジョーンズの演出が話題となった公演であるが、ちょうどこの時期、ベルリン、パリに行っていたが、都合で見ることが出来なかったのが残念であった。とはいえ、今回、ENOで同プロダクションを見られるとあっては見逃すことが出来ない。

プロローグでは黒い幕の中央に四角い窓があり、黄色のカーテンが下がった窓にアダルト・エンターテイメントと赤のネオン管が光っている。窓の上部には、Nelly, Eva, Mignon, Adelaideとルルの変名が色彩豊かに描かれている。さらに左手に扉があり、サーカス小屋ならぬ、妖しげな芝居小屋に客が列をなして入っていく。さらに窓のカーテンが上がると、奥に動物園のような中に、ルルがピエロ姿を見せている。この冒頭部から、刺激に満ちた展開となるが、幕が上がると、画家がルルを描いている場面。先ほど覗かせていた動物園にはトラ、ワニなどが剥製のように静止しているが、シンプルで広大な部屋の中央にミニチュア・ジャングルとしてのアクセントを与えている。それにしても、ルルを演じるリーザ・シェイファーはその美貌と妖艶さからタイトルロールにぴったりで、演出もかなり際どい刺激に満ち溢れている。ルルの衣裳も場面に応じて、どんどん変わっていき、黄金に輝くエキゾチックなダンサー衣裳ではかなりのセクシーさとなる。歌と容姿がこれほどルルにぴったりしているのに驚いた次第。

画家の部屋からサロンに変わると、大きな階段をアクセントにして、豪華な雰囲気となり、間奏曲を挟んで、セットは次々と展開していく。ただしセットの共通的な枠組みとして、ステージ右側の2つの扉と、トイレを思わせる手洗いは全幕を通して、残されている。3幕のパリの場面では、マリリン・モンロー風の美女がアルプスを背景に裸体で横たわる絵画が壁全体に描かれている。中央に浮かぶ太陽が微笑んでいるのがとても印象的だ。これに対して、ロンドンの場面、いよいよルルがジャックに殺される場面では、黒のカーテンに覆われた陰惨さが対照的。ちなみにルルの最後では強烈なアンサンブルの叫びが衝撃を与える。続いて、黒い幕が下がり、中央にはプロローグと同じ、芝居小屋の窓が姿を現し、扉からプロローグで入っていった観客達が、次々と出て行く。すなわちルルのドラマは全て劇中劇であったことが知らされる。それにしても、多彩に展開するドラマと主役達の迫真に満ちた演技に没頭させられてしまった。

指揮のポール・ダニエルは昨年6月にENOの「ワルキューレ」、7月にミュンヘンの「ペレアスとメリザンド」に引き続いて、聴くことになったが、複雑な音楽を見事に描き分けていた。ドラマと音楽の一体感とそのバランスが、複雑なベルクの音楽をとても身近に、自然と響き渡らせた。19時開演、各幕間に休憩を入れて22時50分頃に終演した。



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