2005/03/19
『パルジファル』アイヒンガー新演出バレンボイム/フェストターゲ初日

FESTTAGE 2005, PREMIERE
SAMSTAG, 19.03.2005. 16.00 Uhr
staatsoper unter den linden
parsifal
Buehnenweihfestspeiel in drei Aufzuegen
von Richard Wagner

Musiklaische Leitung, Daniel Barenboim
Inszenierung, Bernd Eichinger
Buehnenbild, Jens Kilian
Video, fettFilm (Torge Mueller, Momme Hinrichs)
Kostueme, Andrea Schmidt-Futterer
Licht, Franz Peter David
Choere, Eberhard Friedrich
Dramatrugie, Peter Mussbach, Regula Rapp

Amfortas, Hanno Mueller-Brachmann
Titurel, Christo Fischesser
Gurnemanz, Rene Pape
Parsifal, Burkhard Fritz
Klingsor, Jochen Schmeckenbecher
Kundry, Michaela Schuster
I.1. Blumenmaedchen, Karen Wierzba
I.2. Blumenmaedchen, Julia Baumeister
I.3. Blumenmaedchen, Simone Schroeder
II.1. Blumenmaedchen, Anna Samuil
II.2. Blumenmaedchen, Carola Hoehn
II.3. Blumenmaedchen, Katharina Kammerloher
1. Gralstritter, Peter-Juergen Schmidt
2. Gralstritter, Yi Yang
1. Knappe, Karen Wierzba
2. Knappe, Katharina Kammerloher
3. Knappe, Patrick Vogel
4. Knappe, Peter Menzel
Altsolo, Simone Schroeder

staatskapelle berlin
staatsopernchor
konzertchor
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今日はベルリンでバレンボイム指揮、アイヒンガー新演出のパルジファルを見た。フェストターゲ初日ということもあってか、TV局の取材が入り、著名人のインタビューなどが会場で収録されていた。リンデン・オーパーでのパルジファルはクプファーの演出が大変素晴らしかったが、今回のアイヒンガー演出も非常に興味深い内容だった。
プログラム冊子には、ワーグナーがルートヴィッヒ2世に宛てた " Adam - Eva: Christus. - Wie ware es, wenn wir zu ihnen stellten; Amfortas - Kundry; Parsifal ? " が記載されており、開演前の幕にはクラナッハの名画「アダムとイブ」が映し出されていた。前奏曲途中からは星座や星雲が輝く星空となり、まるで宇宙船が飛行しているかのような情景を映し出す。バレンボイム&シュターツカペレ・ベルリンによる極めて純度の高いアンサンブルとともに神秘的な世界に惹き込まれてゆく。さらに左手下方から地球が現れて、スクリーンに大きく写される。ちょうど映画「2001年宇宙への旅」ではヨハン・シュトラウスのワルツが絶妙にマッチングしていたが、パルジファルの音楽も宇宙にまた良くあっていることに新鮮さを覚える。

情景は、地球の裏側に赤みを帯びた輝きが加わり、これが次第に地球くらいの惑星に成長していく。こうした背景で第1幕が始まり、ステージは大木が林立する森の場面へと変化していく。兵士達は鎧に兜と槍という姿であるが、小姓のミュータントのように後頭部が発達している姿には近未来を感じさせる。セットは簡単なオブジェを使うものの、概ねステージ一杯に映し出されるビデオを中心に展開していく。特に聖杯への場面転換では、タイムトンネルの中を走っていくかのような情景となり、次第にスフィンクス、中国やインドの遺跡、アッシリアなど多種多様の歴史上の遺跡や彫像、絵画や文書などがコラージュ画面として錯綜しあう。まさに「時間と空間」を意識させる演出となっている。そして聖杯の場面では、ギリシャかペルシャなのか、巨大な遺跡を背景にして、兵士達が背列した壮大な場面となる。上部にはオリエントの神を意識したかのような姿でティトゥレルが鎮座している。アンフォルタスは白い包帯に巻かれたような姿になっている。鐘の響きとともに場面転換では金の砂がステージ全体に降り注ぐ。音楽のテンションの高まりとともに金の雨の密度も増し、ますます輝かしさを高める。このように効果的な場面が現れてくるが、従来の一般的なパルジファルとは趣が異なるかも知れない。

第2幕では矩形のステージ前面が赤く染まった炎の場面から開始する。クリングゾールとクンドリーの場面を経て、パルジファルが登場する花の園は青を基調として、花の乙女達がシルエットで映し出される。やがて登場するその姿は黒の頭巾に黒装束といった感じで、いわゆる黒ミサをイメージする。バストの部分が青の蛍光色で光るといっただけの、暗黒に統一されており、一般的なパルジファル2幕における色彩とエロティシズムは排除されている。しかし演奏は情景は逆に極めて陶酔感に満ちたものとなる。クンドリーも同じく黒の衣裳であるが、シュスター演じる妖艶さが浮き彫りとなる。情景は炎から始まったが、途中、水中を漂う情景となったりする。海またはライン河を意図しているのか、炎と水の対比は、明暗を対比させるゾロアスター教をも示唆しているのかと想像したくなる。様々にコラージュされるビデオ画像ではおぞましい顔が露となってくるのが異様さを演出している。ちなみに2幕のフィナーレでのクリングゾールが槍を投げる場面はビデオに大きく映し出されるシルエットで演出を行っており、パルジファルが槍を受ける瞬間の閃光とともに効果的だった。

第3幕では、マンハッタンの高層ビルが林立する背景のもと、グルネマンツが園のベンチに横たわっている場面から始まる。冬の雪が降り続いているが、クンドリーは白く凍った草の茂みに寝ており、グルネマンツが彼女を引っ張り出す。パルジファルが槍を取り戻してから、時代は現代にまで至ったという設定となっているが、敬虔な響きとともに、情景はパルジファルの音楽には全く違和感はない。再び場面転換では、炎で破壊を繰り返す情景を経て、聖杯の場面ではシンプルな赤色を背景として、ピラミッド状に組まれた座席に兵士達がひしめき合っている。そして背景に再び地球が現れ、パルジファルによる救済とともに宇宙の映像に回帰する。

このような展開に、バレンボイム&シュターツカペレ・ベルリンの素晴らしい演奏が神秘と崇高さを最大限に響かせた。歌手ではルネ・パーペのグルネマンツが素晴らしく、フリッツの輝かしいヘルデンさも印象的。クンドリーのシュスターは事のほか見事だった。ともかくバレンボイムのパルジファルは何時聞いても素晴らしい。



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