2005/03/17
『ポッペアの戴冠』フリム新演出アーノンクール/チューリヒ歌劇場

Opernhaus Zuerich
L'INCORONAZIONE DI POPPEA
Opera musica in einem Prolog und drei Akten
von Claudio Monteverdi (1567-1643)
in der Einrichtung von Nikolaus Harnoncourt
Libretto von Giovanni Francesco Busenello
Uraffuehrung;
1643 oder Winter 1642,
Teatro dei SS. Giovanni e Paolo (Teatro Grimani), Venedig

Musikalische Leitung, Nikolaus Harnoncourt
Inseznierung, Juergen Flimm
Buehnenbild, Annette Murschetz
Kostueme, Heide Kastler
Lichtgestaltung, Martin Gebhardt

Fortuna, Eva Liebau
Virtu, Irene Friedli
Amor, Tino Canziani

Poppea, Vesselina Kasarova
Nerone, Jonas Kaufmann
Ottavia, Francesca Provvisionato
Ottone, Iestyn Davies
Seneca, Laszlo Polgar
Drusilla, Sandra Trattnigg
Arnalta, Jean-Paul Fouchecourt
Nutrice, Kismara Pessatti
Lucano, Rudolf Schasching
Damigella, Eva Liebau
Valletto, Andreas Winkler
Liberto capitano, Gabriel Bermudez
1. Soldato, Volker Vogel
2. Soldato, Martin Zysset
1. Famigliaro, Boguslaw Bidzinski
2. Famigliaro, Martin Zysset
3. Famigliaro, Guenther Groissboeck
1. Console, Martin Zysset
2. Console, Volker Vogel
1. Tribuno, Gabriel Bermudez
2. Tribuno, Guenther Groissboeck
Assitentin der Goettinnen, Megan Laehn

Statistenverein am Opernhaus Zuerich
Orchestera << LA SCINTILLA>> des Opernhauses Zuerich

Donnerstag, 17. Maerz 2005
Beginn: 19.00 Uhr, Ende: ca 22.15 Uhr
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今日はオペルンハウス・チューリヒにてニコラウス・アーノンクール&ユルゲン・フリムによる新演出「ポッペアの戴冠」を見る。昨年のザルツブルクではアーノンクール&フリムによる「キング・アーサー」が空前絶後の出来栄えであったが、やはりこのコンビによるモンテヴェルディも見逃すことは出来ない。

ステージはポッペアの寝室、ネローネの屋敷、セネカの別荘など、登場する全ての場面が、メゾネット形式の各部屋に割り当てた建物として登場する。建物全体が回転することで、各部屋での出来事があらすじに沿った展開を見せる。そのため、ドラマと音楽が実に自然と流れ、同時に各部屋の展開が、有機的な関連性を一目で把握することが出来る。

冒頭の「運命」「美徳」「愛」の女神たちはメイドとして屋敷を掃除する場面から始まる。その間、あの素晴らしいモンテヴェルディの調べに酔いしれるが、ボーイソプラノが「愛」を歌っていたのがユニークである。三人は時に、セネカの部屋では庭師の手伝いとなり、時にピツァーラの出前としてネローネにピザを届けたりする。さらに3人の女神たちを助手するマネージャー女史が登場するのも面白い。彼女は三人を仕切りながら、彼女達の働きぶりを常にメモを付けている。実はこのマネージャー女史にドラマが操られているのではと思うほど、終始、ドラマを見守っている。以上のように奇抜なステージ作りとなっているが、現代版ポッペアの物語が、スムーズに展開し、ドラマに集中させられた。

座った席はパルケット1列目の中央であったが、何とオーケストラピットの中で、コンサートマスター嬢が目の前に居る。背中にピットの壁があるのはやはり不思議な感じがするが、右側にアーノンクールの指揮を見ながら、かぶりつきでステージを見渡す臨場感はさすがに迫力があった。ピットは客席と同じ高さまで持ち上げられているが、かなり広めに楽器を配置しており、パースペクティブな音響に効果を発揮していた。指揮者の前に2人のリュート、一人は時折、バロック・ギターに持ち替える。さらに指揮者の右には2人のハープ。先日のザ・ハープ・コンソートでローレンス・キングが弾いているようなアイリッシュタイプよりもやや大型のものと、さらに小型のもの2台の調べは調和に満ちた響きを醸し出す。さらに2台のチェンバロが左側奥と、右側奥に、オルガン、各種管楽器が左右の後側に配置される。特にバロック・ブラスはパーセルのような輝かしさがモンテヴェルディでも聴けたのが鮮やかであった。なおアーノンクールによるアレンジ版が演奏されるが、普段聴くポッペアの音楽にコンティヌオが強化されているようで、ベースのしっかりとした安定感、さらにはドラマ展開にメリハリを付けた高揚感が素晴らしい。バロック・ギターとパーカッションが呼応するリズムはドラマのテンションと見事にマッチしていた。

カサロヴァのポッペアはさすがに巧みなもので、低音の表情などがポッペアの意思と迫力を感じさせる。また演出も彼女から妖しいエロティックさを際立たせ、カウフマン演じるネローネとの場面が見事だった。これに対してプロフィショナート演じるオッターヴィオも負けぬ艶やかさを放ち、ポッペア対オッターヴィオの構図を浮き彫りにしていた。ちなみにネローネはやや異常なキャラクターを演じる。アルナルタとともにドゥルシッラを責めようとする場面はかなりのサディスティックさであるが、オットーネと共にに許す場面に急転する演出がやや違和感。歌手ではカサロヴァを筆頭にラースロー・ポルガ−のセネカが迫真であったことが素晴らしい。

「ポッペア」は昨年シャンゼリゼ劇場でのヤーコプス指揮の公演が素晴らしかったが、今回もまた新しく刺激的な「ポッペア」を楽しむことが出来た。昨日のオーパー・フランクフルトでの「オルフェオ」とともにモンテヴェルディには常に新しい発見がある。さて今日のチューリヒは初夏の陽気で、街を歩くと汗ばんでくる。チューリヒ湖畔も日光浴を楽しむ人たちで溢れていた。ホテルの部屋も日中はエアコンを入れた。



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