2004/08/15
『死の都』デッカー新演出&ランニクルズ/ザルツブルク音楽祭

SALZBURGER FESTSPIELE 2004
DIE TOTE STADT
Premiere
Sonntag 15. August 2004, 19.00 Uhr
Kleines Festspielhaus

Erich Wolfgang Korngold (1897-1957)
DIE TOTE STADT
Oper in drei Bilden op.12
Libretto von Paul Schott [Julius und Erich Wolfgang Korngold]
nach dem Drama le Mirage (1897) und dem Roman Bruges-la-Morte (1892)
von Georges Rodenbach

Neuinszenierung
Koproduktion mit der Wiener Staatsoper
sowie der Nederlandse Opera Amsterdam und dem Gran Teatre
del Liceu Barcelona

Dirigent, Donald Runnicles
Inszenierung, Willy Decker
Buehne und Kostueme, Wolfgang Gussmann
Choreographie, Athol Farmer
Licht, Wolfgang Goebble
Choreinstudierung, Rupert Huber
Einstudierung Kinderchor, helmut Zeilner
Dramaturgie, Klaus Bertisch

Paul, Tresten Kerl
Marietta/ Die Erscheinung Mariens, Angela Denoke
Frank/ Fritz, Bo Skovhus
Brigitta, Daniela Denschlag
Juliette, Simina Ivan
Lucienne, Stella Grigorian
Gaston, Lukas Gaudernak
Victorin, Eberhard F. Lorenz
Graf Albert, Michael Roider

Wiener Philharmoniker
Konzertvereinigung Wiener Staatsopernchor
Salzburger Chorknaben und Chormaedchen
Buehnenmusik, Mozarteum Orchester Salzburg
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コルンゴルト「死の都」を見るのは2003年のチューリヒ歌劇場ベヒトルフ演出以来のこととなる。コンチェルタンテでは井上&NJPも興味深い公演であったが、今回のザルツブルクではウィリー・デッカー演出が大いに期待されるところ。シュトイデがコンサートマスターを努めるウィーンフィルの演奏とともに大変素晴らしいプロダクションに仕上がっていた。

ステージは傾斜した床のポールの部屋をベースにして、ステージ背景にも同じポールの部屋を2重に作り出す手法が用いられていた。すなわちステージ前面の部屋でポールが椅子に座っていれば、ステージ奥の部屋にもポールが座っており、マリーと向き合っている。2つは現実を夢を意味しており、ドラマの展開で現実と夢の関係が次第に錯乱してくるのを目の当たりにする時の心理状態が実に巧みに描かれている。

部屋に置かれているマリーの大きな肖像画が象徴的に用いられており、無数の肖像画として現れる場面はとても効果的であった。ちなみにザルツブルク現代博物館( museum de modern salzburg)でフェルナント・クノプフ展が開催されているが、クノプフの描くタッチがまるでマリーの肖像画を彷彿とさせている点が非常に興味深い。クノプフはブリュージュに移り住み、街からの印象をその絵画に活かしているとのことで、ブリュージュの街の絵もまたコルンゴルトの作品へ共通するイメージを与えているかのようだ。またムスバッハ&ギーレンによる「ルル」の手法と同様に、ステージ背景をマリーの大きな顔を描写するシーンも効果的だった。

ステージのセットはまた自在に動くようになっており、陶酔に満ちた音楽が進行する中、様々な情景に変わっていく様には見とれるばかり。以上のようにステージはシンプルな象徴的なものとしながらも作品に込められたコンセプトを的確に表現している点が、ドラマへの集中度を高めている。

デッカー演出ではデノケ演じるマリエッタが魅惑的で積極的な展開を見せる。白のコスチュームをベースにして、デノケのプロポーションの良さとともにセクシーさを漂わせながら、耽美なドラマをさらに引き立たせている。ともかくデノケの歌と演技が素晴らしい。ケール演じるポールは声量を含めて今ひとつといったところながらも、フィナーレにかけての深い思いが聞き取れる。スコウフスはさすがに素晴らしい。キャスト、オーケストラ、合唱ともに見事に調和しつつも、やはりデッカー演出が全体のフレームワークを統一し、優れた公演に仕上げていたと言える。カーテンコールは大きな喝采であり、演出家の登場においてもブーイングが無いという反響。ともかく素晴らしいコルンゴルトに接することが出来て満足した。さて今日で出発から17日目。18日目の明日は帰国便に乗る。



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