2004/08/14
『エリオガバッロ』ヤーコプス指揮/インスブルック・フェスティバル

INNSBRUCKER FESTWOCHEN 2004
Samstag 14. August 2004, 18.30 Uhr
Tiroler Landestheater

Francesco Cavalli (1602-1676)
ELIOGABALO
Oper in drei Akten, Karneval 1667/68
bearbeitet von Rene Jacobs
Libretto von Aurelio Aureli, nach einer anonymen Vorlage

In italienischer Sprache (mit deutschen Uebertiteln)
Dauer: ca. 3,5 Stunden
zwei Pausen

Rene Jacobs, Musik Leitung
Vincert Boussard, Regie
Vincert Lemaire, Buehnenbild
Alain Poisson, Lichtdesign
Christian Lacorix, Kostueme

Silvia Tro Santafe, Eliogabalo (Imperator)
Giorgia Milanesi, Alessandro Cesare (Vetter von Eliogabalo)
Annette Dasch, Flavia Gemmira (Schwester von Giuliano)
Lawrence Zazzo, Giuliano (Praefekt der Praetorianer)
Sophie Karthaeuser, Eritea (vornebme Roemerin)
Tom Allen, Lenia (Dienerin von Eliogabalo)
Jeffrey Thompson, Zotico (Vetrauter von Eliogabalo)
Celine Scheen, Attilia (vornebme, junge Roemerin)
Sergio Foresti, Nerbulone (Diener von Eliogabalo)
Joao Frenandes, Tiferne (Glaudiator)

Choristen des Koeniglichen Konservatoriums Bruessel
Concerto Vocale
Statisten der Teatre Royal de la Monnaie in Bruessel
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8月14日はインスブルック・フェストヴォッヘンの「エリオガバロ」を見る。カヴァッリのこのオペラは今年4月にモネ劇場にてルネ・ヤーコプスの指揮で上演され、センセーションを巻き起こしたのは既にご承知の通り。後期ローマ時代の皇帝エリオガバロを話題としたカヴァッリの作品は長らく上演されておらず、CDも勿論のこと出ていない。モネ劇場、インスブルック、シャンゼリゼ劇場の共同プロダクションとなるこの機会を見逃す訳には行かない。インスブルックでの初日は昨日の8月13日であったが、クーリエ紙では8月11日付けで大きな写真入りで一面に記事を寄せている。

さてドラマは皇帝エリオガバロの周りを巡る人間模様を心理劇として扱ったもので、さほど面白い話とは思えないものの、カヴァッリが作曲した音楽は師匠モンテヴェルディをも彷彿とさせながらも、彼独自のやや控えめながら、上質な響きとともにドラマを浮き彫りにしている。ピットにはコンチェルト・ヴォカーレの艶やかな古楽アンサンブルが控え、ステージ左のバルコニーにコルネットを、右のバルコニーにトロンボーンを配して、古楽オペラの独特の味わいを楽しませてくれる。一方、ステージは左右の壁に矩形の開口を設けて、背景は黒のスクリーン。第1幕ではこの黒のスクリーンに傾斜した窓が突然現れたり、まるで先日にみたリチャード・ジョーンズ「ペレアスとメリザンド」にも似たデザインを連想させてくれたりする。登場人物たちはローマ時代と現代を溶け合ったような斬新なファッションを纏い、見た目にも極めて華麗である。オーケストラピットを取り囲む花道も使って、とれも臨場感あふれるステージを作り出している。ちょうど席はパルケット3列目だったためか、ステージと一体になった感じでオペラに没頭できる感じだった。特に3幕では背景に巨大な地球儀のフレームを回転させ、その円形を利用したスクリーンに、水泳の飛び込みのシーンを連続して映し出しながら、登場人物たちがそれに見入っている扱いが音楽と妙にマッチしていたのが面白い。

カヴァッリのオペラではウィーンフェストヴォッヘンでカリスト、今年4月のクラーゲンフルトでのジャゾーネなど、オーストリアで比較的上演されているが、まだまだ見るチャンスが少ない。CDでは既に幾つかのオペラを聞いているものの、初めてライブで聞くことになったエリオガバロは、とてもドラマトゥルギーに満ちた作品で、既にレチタティーボにおけるチェンバロとガンバの奏法に後世のオペラの原形が見て取れる。

なおインスブルック・フェスティバルは、従来から若手歌手を起用した憂い憂いさがが特徴となっているが、今回も女性陣を中心にフレッシュさあふれる若手歌手たちを揃えて、しかも上質な内容に仕上げているのが素晴らしい。一昨年の奇想天外なリナルド、昨年の幻想的なオルフェオと続いて、今回はアートを感じさせる美しいプロダクションとなっていた。先日ザルツブルクで見た「キング・アーサー」、アムステルダムで聞いた「イエフタ」に引き続き、極めて珍しい「エリオガバロ」を見る貴重な機会であった。斯くのように古楽は決して古いというものではなく、本日のエリオガバロのように時代を限定しないような普遍性すら感じた次第。



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