2004/08/09
I.フィッシャー&グスタフ・マーラー・ユーゲント/アムステルダム

ROBECO
ZOMERCONCERTEN
NATUURLIJK IN HET CONCERTGEBOUW
Maandga 9 augustus 2004
Grote Zaal, 20.15 uur

Gustav Mahler Jugendorchester
Iva'n Fischer, dirigent

Be'la Barto'k 1881-1945
Uit 'De wonderbaarlijke mandarijn', op.19 (1927)
Suite

pauze

Anton Bruckner 1824-1896
Zevende symfonie in E gr.t. (1881-83)
Allegro moderato
Adagio: Sehr feierlich und seher langsam-
Moderato-Tempo primo
Scherzo: Sehr schnell-Trio: Erwas langsamer
Finale: Bewegt, docht nicht schnell
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8月9日、せっかくのバーデン・バーデンを1日で去るのは惜しいが、今日はイヴァン・フィッシャー指揮のグスタフ・マーラー・ユーゲントを聴く為にアムステルダムへ向う。8:43発のICEでケルンまで行き、別のICEに乗換えてデュッセルドルフを経由してオランダへ入る。

列車はアーネム、ユトレヒトと停車していくが、ユトレヒトといえばマクロペディウスがラテン語劇「ヘカストゥス」を完成して上演した街として知られている。ハンス・ザックスのドイツ語版より10年早い1539年のことで、ユトレヒトを起点として、ドルトムント、アントワープ、バーゼル、ケルン、ストラスブール、フランクフルト、ウィーン、ザルツブルク、チロルで上演されイギリスも含めてヨーロッパ中に広まった。まさに今回、列車で走っている所がその伝承ルートの一部であることに奇遇を感じる。

ちなみにマクロペディウス版では第5幕10場で「死」「サタン」「信仰」「善」(信仰と善は女性役者)が登場し、ヘカストゥス自身も神に召されるべく死を望み、「死」が槍で彼を刺す。続く「信仰」の台詞に「魂がアブラハムに抱かれるように」とあり、キリスト、ユダヤ、イスラム教を含めた視点が感じらる点が興味深い。この説教劇は12世紀中世のペトルス・アルフォンシの寓話やエリナン・ド・フロワモン「死の歌」にも類似している点が面白く、ルーツとして「バルラムとヨサファト」からBC500年頃のブッダ伝承まで遡れるという説がある。まさにインドからペルシャを経た東西交流と2500年の重みを感ずる次第で、イェーダーマンのルーツとしての変遷が実に興味深い。

歴史に思いを馳せていると列車の旅も短い。午後3時にはアムステルダムに到着した。駅の外に出るとかなりの猛暑。今回のホテルはライッツェ広場のクラウン・プラザ・アメリカンにした。プライオリティクラブで申込んでいる為か1泊110ユーロでスイートルームとかなりお得。窓からは運河越しに公園が望め、居間と別にビジネスルームもあり、日本から飛んできたメールに対しても快適に仕事がはかどる。夜7時前に外へ出るが、まだ太陽が照っている快晴だが暑さは少し和らいだ。ここからコンセルトヘボウまでは徒歩15分。オーケストラのメンバーもあちらこちらのホテルから出かけている。

さて今回のグスタフ・マーラー・ユーゲントは、2つのプログラムでボルツァーノ、グラーツ、アムステルダムをツアーしている。昨日のコンセルトヘボウではBプログラムのマーラー交響曲2番(アルト:ナタリー・シュトゥッツマン)が演奏された。今日のAプログラムは、バルトーク「中国の不思議な役人」組曲にブルックナー交響曲7番というヘビーな内容。冒頭のバルトークは中央部にパーカッション群を配した壮大な編成。さすがにコンセルトヘボウの音響は素晴らしく、マーラー・ユーゲントのダイナミックレンジの広い演奏に対しても透明かつ克明なサウンドを聴かせてくれる。それにしてもマーラー・ユーゲントの強靭なアンサンブルには驚嘆するばかり。前回、イヴァン・フィッシャーの指揮を聴いたのは同じくコンセルトヘボウでブタペスト祝祭だったが、斯くも見事にマーラー・ユーゲントからヴィルトォーゾの響きを生み出すとは魔術師とでも呼びたくなる。

後半のブルックナー7番は、バルトークの色彩とドラマチックさを聴いた後の為か、深いモノトーンの響きが雄大さを醸し出す。バルトークのような張り詰めた緊張からは開放されるものの、演奏は益々強力なアンサンブルとなっている。いわゆる枯れた味わいは無く、若い奏者達と同じくフレッシュさとエネルギッシュさに満ち溢れている。それゆえ敬虔さに包まれるブルックナーというよりも音楽的興奮を呼び起こすアプローチ。まさに音の放流が押し寄せては、ピアニッシモの静寂を挟み、巨大な峰々が描かれていくといった壮大さに圧倒される。ベルリンフィルも驚くようなテクニックとパワーで演奏されると興奮せざるを得ない。やはりマーラー・ユーゲントは恐るべきオーケストラで、終演後はスタンディングオベイションの喝采が延々と続いた。



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