2004/08/08
『パルジファル』レーンホフ&ナガノ/バーデンバーデン祝祭劇場

"PARSIFAL"
Buehnenweihfestspiel in drei Akten
Musik und Text, Richard Wagner

Festspielhaus Baden-Baden
8. August 2004, 18 Uhr

Musik Leitung, Knet Nagano
Inszenierung, Nikolaus Lehnhoff
Buehnenbild, Raimund Bauer
Kostueme, Andrea Schmidt-Futterer
Licht, Duane Schuler
Choreographie, Danni Sayers

Amfortas, Thomas Hampson
Titurel, Bjarni Thor Kristinsson
Gurnemanz, Matti Salminen
Parsifal, Christopher Ventris
Klingsor, Tom Fox
Kundry, Waltraud Meier
Berster und Zweiter Gralsritter,
Johannes Eidloth / Taras Konoschchenko
Erster Knappe, Nina Amon
Zweiter Knappe, Katharina Rikus
Dritter Knappe, Thomas Stueckemann
Vierter Knappe, Marco Vassalli
Stimme aus der Hoehe, Katharina Rikus
Blumenmaedchen (Gesangssoli),
Nina Amon/ Abbie Furmansky/ Emma Gardner,
Allexandra Lubchansky/ Katharina Rikus, Andrea Stadel
Blumenmaedchen (Tanz),
Ute Baur/ Sandra Fritz/ Simina German/ Sarah Kinn/
Fabienne Kuehn/ Sandra Metzger/ Iris Muendoerfer/
Annalena Plathe/ Eveline Schwarztrauber/
Juliette Van der Meer/ Julia Weber/ Afanasia Zwick

Festspielchor Baden-Baden
Einstudierung, Walter Zeh

Deutsches Symphonie-Orchester Berlin
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8月8日はザルツブルクを離れてバーデン・バーデンへ移動する。7:53発のICで出発し、シュトゥットガルトで乗り換えて、14時半頃に到着した。陽光に満ちた明るさが印象的で、落ち着いた佇まいの街がとても風光明媚を掻き立てる。

さて今日は夕刻6時から祝祭劇場にてニコラウス・レーンホフ演出による「パルジファル」を見る。このプロダクションは既にENO,サンフランシスコ、シカゴで上演されているが、今回の公演は、ワルトラウテ・マイヤー、クリストファー・ヴェントリス、トーマス・ハンプソン、マッティ・サルミネンという豪華キャストが見逃せない。演奏のケント・ナガノ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団というのも興味が惹かれる。

第1幕、素晴らしい響きで前奏曲が始まる。席はパルケット最前列とオーケストラに近いが、ピットがかなり深くなっている為か、とてもバランスの良いサウンド。ステージは前方中央の床が少し開口しており、床全体はステージ奥に向って傾斜し大きな壁として上方まで伸びている。ゴロゴロとした石が転がった荒涼とした中、サルミネンの威厳に満ちたグルネマンツが素晴らしい。ベルリン・ドイツ響もオペラハウスのオーケストラかと思うほどの巧みさで演奏していく。マイヤー演じるクンドリーは赤毛のヘアで、エロティックさを湛えながら床を転げまわる。ハンプソンのアンフォルタスは実に切々とした痛ましさを描写する。白の衣裳に顔も白くメーキャップした姿は悲壮感に満ちているが、その存在感は圧倒的。6月のケルンでジークムントを歌ったヴェントリスのパルジファルは伸びのある声量が魅力で、インディアンのような衣装とともに異教的キャラクターを放っている。

ステージ背景には巨大な石のようなものが壁に埋め込まれており意味不明。聖杯の場面へ移行する時には、これが大きく回転して壁に空洞ができる。アンフォルタスの傷を巨大に象徴化しているのか、それとも最後の晩餐のパンを象徴しているのか興味深い。ステージは多分に象徴的シンプルさを基本としており、騎士達は円卓を囲むのではなく、ステージ左右に向き合って平行に並ぶ。その列の中央に出来た通路がステージ奥に向う形となり、傾斜したステージ背景壁に矩形の長いスリットが開き、天上からの光を輝かせる。透明なサウンドとともに、見事な演奏とともに荘厳な儀式に釘付けとなった。

第2幕は暗黒に巨大な骨盤が投影され、子宮の部分に黄金のリングが吊るされている。その中にクリングゾールが座っているという設定。花園の場面では第1幕の傾斜したステージが再び登場するが、色彩感豊かな照明で美の世界に変貌。乙女達は歌手、ダンサーを含めて流れのある動きを作り出す。第1幕にて天上から差し込む光の演出に用いられたステージ背景の矩形スリットが再び登場し、今度はオレンジ色を帯びたイエローとして輝く。蝶々のような羽を持ったクンドリーは妖しさに満ちており、さすがにマイヤーはどんなクンドリーも見事に演じてしまう。第2幕は単独でコンサートプログラムとしても取り上げられるように、この上演においても、その迫力に満ちた展開に圧倒される。ちなみに12月3日は、この祝祭劇場にてティーレマン&DOBによるパルジファル第2幕とワルキューレ第3幕がコンサート形式で上演される。

第3幕は冒頭と同じ傾斜した壁に大きな開口が出来ており、列車のレールがカーブを描きながらステージの前方まで伸びている。至ってシンプルなセットの中、赤褐色の照明が荒涼感を醸し出す。聖金曜日の音楽を経て聖杯の場面では1幕のステージに回帰。フィナーレまで目を離せない集中度だった。休憩を入れて5時間半を越える長さを全く感じさせない仕上がり。幕間は外の空気がとても爽やかで避暑地としての素晴らしさを満喫した。



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