2004/06/05
『アラベラ』ドホナニ指揮&ムスバッハ演出/ロイヤル・オペラ

THE ROYAL OPERA COVENT GARDEN
Saturday 5 June 2004, 7.00 PM
ARABELLA
Lyric codedy in three acts
Music Richard Strauss
Libretto Hugo von Hofmannsthal

Conductor, Christoph von Dohnanyi
Director, Peter Mussbach
Sets, Erich Wonder
Costumes, Andrea Schmidt-Futterer
Lighting, Alexander Koppelmann
Dramaturgy, Axel Bott

Fortune Teller, Mary Lloyd-Davies
Adelaide, Cornelia Kallisch
Zdenka, Barbara Bonney
Matteo, Raymond Very
Arabella, Karita Mattila
Count Elemer, John Dasak
Count Theodor Waldner, Artur Korn
Floor Waiter, Neil Gillespie
Mandryka, Thomas Hampson
Welko, Christopher Lackner
Count Dominik, Quentin Hayes
Count Lamoral, Iain Paterson
The Fiakermilli, Diana Damrau

The Royal Opera Chorus
Chorus Director, Terry Edwards
The Orchestra of the Royal Opera House
Associate Concert Master, Sergey Levitin

------------------------------------------

ENOでワルキューレを1幕を見た後は、19時からコヴェント・ガーデンでムスバッハ演出のアラベラを楽しみました。これはシャトレとの共同制作によるもので、プレミエは2002年春のパリ。この時は見れなかったのが残念でしたが、今回の再演を見ることができて嬉しい限りです。ドホナニ指揮のR.シュトラウスを聴くのはザルツブルク音楽祭のナクソス島以来のことで、楽しみでした。またキャストがカリタ・マッティラ、バーバラ・ボニー、ディーナ・ダムラウ、コルネリア・カリッシュ、トーマス・ハンプソンなど豪華であることも魅力。この日はキャストに変更が無かったのが何よりです。

ステージは空間を最大限に活用した大階段がベースとなっていました。ステージ左の奥は上部高くにエスカレータからデザインした階段があり、同じく右側にも高く伸びていています。さらに右の階段からさらに流線型で滑り台のように下る階段が左に下降するといった立体的な構造です。ウィーンの豪華ホテルを近代的デザインで描写しているのはユニークです。このセットを全幕共通とし、後は照明効果など多彩なアクセント付けで、ドラマに集中させる手法が鮮やかでした。

ムスバッハ演出ではルーッチョ・シッラなどステージ全体を大階段とする大胆な発想が見られますが、人物を階段の位置でマッピングする手法が、今回のアラベラでも活かされていました。アラベラとズデンカの二重唱なども2人の位置関係を変えることで、空間情報と心理描写が結びつく面があり、興味深いところです。

以上のように考え抜かれたセットと演出をバックにして、キャスト達は持てる実力を十二分に発揮しながら、R.シュトラウスの素晴らしいドラマに没頭しきっていることが伝わってくる出来栄えでした。特にマッティラのアラベラは眩しいほど美しくて威厳がありました。白のウェディングドレスも、黒のスーツ姿も恰好が良すぎるほど。ボニーもボーイッシュさを活かしながら、ズデンコからズデンカへの変化がとても可憐でしたし、ハンプソンの貫禄はマンドリカ役にはぴったりのキャスティングでした。ダムラウのフィアーカー・ミリはアヴァンギャルドさを湛えつつ、絶妙な歌で沸かせるといった展開。2幕、舞踏会のダンサー達の衣裳や振り付けも見所です。

以上のように素晴らしい出来栄えもドホナニ率いるアンサンブルがあってのもので、その見事に息があったリードが全てを纏め上げているといって良いでしょう。歌手たちが沈黙し音楽だけが鳴る時も情感豊かに、ドラマの核心をつく演奏が見事でした。マッティラを筆頭にR.シュトラウスとホフマンスタールが描くドラマを斯くも美しく感動的なものに仕上げていることに驚嘆した次第です。



[HOME]