2004/06/03
『ワルキューレ』テイト指揮カーセン演出/ケルン歌劇場

Donnetstag, 3. Juni 2004 17.00 Uhr
Richard Wagner
Der Rigng des Nibelungen
1. Tag des Buehnenfestspeils
Die Walkuere

Musikalische Leitung, Jeffrey Tate
Inszenierung, Robert Carsen
Buehne & Kostueme, Patrick Kinmonth
Dramaturgie, Ian Burton
Licht, Manfred Voss
Spielleitung, Oliver Kloeter

Siegmund, Christopher Ventris
Hunding, Kristinn Sigmundsson
Wotan, Phillip Joll
Sieglinde, Petra Lang
Bruenhilde, Gabriele Schnaut
Fricka, Doris Soffel
Gerhilde, Magnea Tomasdottir
Ortlinde, Friederike Meinel
Waltraute, Eva Vogel*
Schwertleite, Katja Boost
Helmwige, Machiko Obata
Siegrune, Andrea Andonian
Grimgerde, Viola Zimmermann
Rossweisse, Joslyn Rechter

*Mitglied des Koelner Opernstuios
Guerzenich-Orchester Koeln
Statisterie der Buehnen Koeln
Klienten der Bewaehrungshilfe Koeln
Strafgefangene der JVA Euskirchen
Oper Koeln
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昨日の東響では久々に情熱漲るブラームスを聴けましたが、本日6/3はケルン歌劇場にて重厚なワーグナーを堪能することが出来ました。ジェフリー・テイトの指揮でワーグナーを聴けたのも嬉しい限りです。彼がバスチーユで振ったヴォツェックは実にシンフォニックで緊迫感満点でしたが、ワルキューレも期待通りに素晴らしいものでした。特にドラマの起伏に応じた音量バランスが絶妙で、テンポもカーセンの演出と調和したものでした。このシリーズのラインの黄金を見ていないため、あれこれとカーセンのリング・コンセプトを想像するのも楽しいものでした。

第1幕の冒頭、嵐の場面では、雪が舞う中、第2次大戦のレジスタンス風の兵士たちが、野営所にて重そうな箱を運んでいるシーンから。中には銃が入っているようで、彼らの棟梁がフンディングという設定。横一杯に広がったステージは実に寒寒とした雰囲気を作り出し、左手の薪ストーブの炎が象徴的でした。

アンサンブルはホルンなどに難があるものの、テイトの巧みな指揮で音楽が自然と流れ、クリスティン・ヴェントリスの輝きに満ちたヘルデンさが最高でした。ペトラ・ラングも実に巧みな演技と歌唱力で濃厚な美しさに魅了。ジークムントソンのフンディングも迫力があり、稀に見るワルキューレ第1幕となった次第。なおトネリコはステージ右側に置かれた丸太として扱われており、ノートゥングそれに斜め上から突き刺されている状態で、最初は布で隠れていました。ともかく演出以上にテイトに導かれた音楽的興奮に圧倒されたといって良いでしょう。

第2幕は荒涼としたシーンで始まるのではなく、巨大な居間にファシスト達が優雅にワインを交わしている場面から。中央に大きな暖炉が燃え盛り、2枚の大きな絵画がアクセントを。ソファーに寝そべるブリュンヒルデと父親ヴォータンはファシスト達の総統といった設定。ちなみにヴォータンは眼帯をしておらず、槍ではなくステッキを突いていました。シュナウトのブリュンヒルデもさすがにドラマチックで、他のワルキューレ達と同じドレス姿。ゾッフェルのフリッカはスーツ姿で、ヴォータンを激しく責める場面が迫力でした。ヴォータンもじっとしていられないようで、リンゴをかじったり、酒を飲んだりとその心理描写が巧みでした。軍を率いる権威の象徴と家庭的ないざこざといった2面性を同時に描写する演出でした。ジークリンデとジークムントが現れるシーンも象徴的でした。第1幕よりも激しい吹雪の中を破壊しかけたジープに乗って登場。淡々とドラマが進むものの、その集中力ある展開に2幕のフィナーレまで目と耳を離せませんでした。

第3幕はワルキューレ達が雪原に転がる兵士達を生き返らせるシーンで、騎行の爆発的な音楽と共に盛り上がりました。ただ3幕は意外と平面的なステージで、ヴォータンとブリュンヒルデのドラマのみに集中させる趣向。フィリップ・ヨールのヴォータンはドーメンのようなキャラクターを持ち合わせていないものの、安定感ある歌唱がドラマを支えてくれるといった感じ。第1幕の薪ストーブと第2幕の暖炉の炎がローゲを象徴し、神々のドラマを傍観しているかのようでしたが、ブリュンヒルデを眠らせる炎はステージ背面下部に横一列となって燃え盛るといった展開でした。劇場内にて黄昏のシーンもビデオで紹介されていましたが、このシリーズは結構面白そうなので、機会があれば通しで見てみたいものです。



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