2004/05/01
『ワルキューレ』アウディ演出&ヘンシェン指揮ネーデルランドオペラ


Richard Wagner
Der Rigng des Nibelungen, Erster Tag
Die Walkure
premiere
Het Muziektheater Amsterdam
1 mei 2004 18.00 uur

muzikale leiding, Hartmut Haenchen
regie, Pierre Audi
decor, George Tsypin
kostuums, Eiko Ishioka
belichting, Wolfgang Goebbel
Dramaturgie, Klaus Bertisch

Nederlands Philharmonisch Orkestk

Siegmund, John Keyes
Hunding, Kurt Rydl
Wotan, Albert Dohmen
Sieglinde, Charlotte Margiono
Bruenhilde, Linda Watson
Fricka, Doris Soffel
Gerhilde, Dorothy Grandia
Ortlinde, Ellen van Haaren
Waltraute, Natascha Petrinsky
Schwertleite, Hebe Dijkstra
Helmwige, Turid Karlsen
Siegrune, Irene Pieters
Grimgerde, Marina Prudenskaja
Rossweisse, Qiu Lin Zhang
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さてブタペスト祝祭が終了したのは16時40分頃。ホテルに出向いたところマシントラブルで部屋を用意できないと言う。別のホテルを手配したので、タクシー代もホテルで出すので、そちらへ行って貰えないかと。あと40分ほどでワルキューレの開演だが、タクシーが中々来なくて苛立ってくる。やっとタクシーで向ったホテルはコンセルトヘボウ方向に戻ったミュージアム地区にあるメルキュール。途中船が浮かぶ運河の景色が情緒的だった。17:30にチェックインを済ませて、タクシーでオペラに向う。17:40には到着し、歩いていると高原さんと出あった。一緒にカフェで喉を潤してから席に臨む。小生はパルケット最後列の左側であったが高原さんはパルケット右側とのこと。ちなみに小生の席は天井が邪魔してステージの高い所が見難かった。この演出では2階席がベストと思われる。

さてアウディ演出のステージはヴィーラント・ワーグナーのバイロイト様式を思わせるかのように傾斜した円形舞台が基本構造となっている。右側の一部が切れ落ちて、そこにオーケストラが配置されている。まるでオーケストラの海が広がっているように感じる。席から見ると、左手に6本のハープ、指揮者を取り囲むように弦が放射状に居並び、管楽器、打楽器と連なる。東京シティフィルによるコンチェルタンテ「リング」にも似たコンセプトを感じるが、巨大な空間を活用したステージはコンチェルタンテの域を遥かに越えるスケール感だ。もともと客席も円形状に取り囲んでいるためか、ギリシャ劇のように祝祭性をも掻き立てる。

この傾斜円形は全幕を一貫した基本スタイルとなるが、第1幕では円形ステージの一部が短冊に切り抜かれて槍のように上空の高くへ持ち上がっている。その根元に犬小屋のような小屋があり、その周囲の傾斜円形をベースにドラマが展開する。自在に照明効果を加えつつも幻想的なステージが出現する。第1幕に登場するジョン・キーズはまるでフンディングかのような巨体ぶりながらも、安定したヘルデンテノールに魅力される。シャルロッテ・マルジオーノのジークリンデも不足はない。そしてフンディング役のクルト・リドル。彼は昨日のロイヤルオペラで絶妙なオックスを演じていたが、移動しながら連日の出演とは、そのフネスぶりに驚かされる。第1幕は、愛の陶酔の場面、トネリコから剣を引き抜く高揚感など、ヘンシェンが率いるアンサンブルとともに大いに盛り上がった。

第2幕ではリンダ・ワトソン、アルベルト・ドーメンにドリス・ゾッフェルなど貫禄の面々に熟練した演技と歌に惹きこまれてしまう。ワルキューレ達の基本衣裳は両腕に鳥の羽根をデザインした銀色の鎧を付けて、銀の兜を被っている。ヴォータンがブリュンヒルデを前にして物語を語る場面なども時間を感じさせない展開で、実にドラマに引き込まれていく演出。

第3幕のワルキューレの機構では円形ステージに沿って設けられたスリットの帯びから燃え盛る炎に熱風を感じながら、音楽ととてもマッチしていた。<a href="http://www.dno.nl/index.php?m=performances&sm=season&s=11&sea=4&c=videos">ネーデルランドオペラのサイトにその映像</a>が紹介されているが、とてもスケールある展開であった。ワルキューレ達が登場する場面では円形ステージを背景にさながらファッション・ショー的振り付けが興味深く、さらにはヴォータンを円形に取り囲むワルキューレ達の配置など、空間的処理も鮮やか。かくしてスペクタクルさ満点のワーグナーを楽しむことが出来た。今日はシューベルト4番、マーラー9番にワルキューレという充実感に満足した。



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