2004/02/07
『ジークフリート』オールデン新演出&メータ指揮/バイエルン州立歌劇場場


Bayerische Staatsoper
Samstag, 7. Februar 2004, 16.00 Uhr
Siegfried
Zweiter Tag des Buehnenfestspiels Der Ring des Nibelungen
von Richrad Wagner

Musikalische Leitung: Zubin Mehta
Inszenierung: David Alden
Buehne und Kostueme: Gideon Davey
Licht: Max Keller
Produktionsdramaturgie: Nike Wagner
in memoriam Herbert Wernicke

Siegfried: Jon Fredric West
Mime: Jlrich Ress
Der Wanderer: Alan Titus
Alberich: Franz-Josef Kapellmann
Fafner: Bjarni Thor Kristinsson
Erda: Anna Larsson
Bruenhilde: Gabriele Schnaut
Waldvogel: Margarita De Arellano
Grane: Johannes Benner

Das Bayerische Staatsorchester
Hornruf: Hans Pizka

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2月7日はブリュッセルからミュンヘンへ戻り、ヴェルニッケのメモリアル公演と銘打たれたオールデン演出の「ジークフリート」を見てきました。指揮はズービン・メータ、ジークフリート=ジョン・フレデリック・ウェスト、さすらい人=アラン・タイトス、ブリュンヒルデ=ガブリエレ・シュナウトなど重量級のキャスト陣などとても圧倒的でした。

このシリーズはいきなりジークフリートから見るため、ヴェルニッケが描いた基本コンセプトを何処に見出せば良いのか分からないものの、爆笑する面白さでした。新国立でのウォーナー演出と似ている面もあり、特にジークフリートのガラクタのような小部屋の設定など興味深いものがありました。随所に細かな仕掛があるものの、ウォーナーのような謎解きを考えさせるというものではなく、むしろあっと驚く奇抜さに彩られていると言ってよいでしょう。象徴的なものは第1幕から2幕まで天井から吊るされた部屋の照明電灯でした。さすらい人らが電灯をまるで地球儀のように大きく揺らしたりする場面は、ヴォータンの意思を示す求心的象徴のようにも感じます。

第1幕の始まりでは傾斜したステージの下の空間にさすらい人が寝ていて、前奏のニーベルハイムの金槌の響きで目が覚めるなど、随所に手の凝った演出が満載。ステージの背面が開くとガレージがあって、車が整備されている場面などなど。特に2幕の森の場面は1幕にてジークフリートの部屋に吊るされていたカレンダーが大きく拡大され、そこに描かれた森の場面が劇中劇として登場するなどユニークな展開でした。極め付きは巨大な卵が孵化されて殻が割れると、風船が巨大に膨らんでファフナーの顔になるというもの。中世のボッシュが描いた卵のお化けをイメージしたロボットや縫ぐるみも沢山出てきて、シンプルな空間の中、メルヘンタッチの森の世界を描くあたりはオールデンの冴えを感じます。ともかく2幕はワーグナーの音楽をあえて忘れながらドラマに没頭しました。メーターの指揮も素晴らしいアンサンブルを繰り広げつつ、この刺激に満ちたステージと一体となって、ドラマを優先させているあたりに狙いがあるものと察せられます。

これに対して3幕では1幕に登場した車が地面に突き刺さったのをアクセントにして、後方に岩峰を描き、真っ赤に燃え盛る夕焼けをベースにして、前半のコミック調から真面目なワーグナーの世界に戻ったという印象を受けました。演奏も起伏を極めて、壮大な世界を聞かせてくれました。特にウェストとシュナウトの愛の二重唱は圧巻。それにしてもタイトスの朗々と響く深い表現力は最高でしたし、アンナ・ラルッソンのエルダも妖艶な雰囲気を漂わせながら素晴らしい限り。小鳥を歌ったマルガリータ・デ・アレラーノのキュートさは目を見張るものがあり、透明な歌は見事でした。ちなみに彼女はオールデン新演出の「ルル」を歌う予定で、これも必見中の必見となりそうです。



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