2004/02/05
『カーチャ・カバノヴァー』カーセン新演出&レイヤー指揮/アントワープ歌劇場


Kata'a Kabanova
Leos Janacek
Oper in drie bedrijven.
Libretto van de componist naar her toneelstuk Groza (De Storm)
van Aleksander Nikolayevisj Ostrovski in een vertaling van
Vincenc Cervinka.

VLAAMSE OPERA (Oper Antwerpen)
do 05/02/04 20:00 uur

Muzikale Leiding: Fridemann Layer
Regie: Roberr Carsen
Decor en Kostuums: Patrick Kinmonth
Belichting: Roberr Carsen/ Peter Van Praet
Choreografie: Philippe Giraudeau
Dramaturgie: Ian Burton
Koorleiding: Kurt Bikkembergs

Ka'ta Kabanova': Michaela Kaue
Kabanicha: Kathryn Harries
Boris: Richard Decker
Kudrja's: Alexander Krawetz
Tichon: Guy De Mey
Dikoj: Ja'n Galla
Varvara: Natascha Petrinsky
Kuligin: Romain Bischoff
Glasa': Julie Bailly
Feklusa: Beatrijs Desmet

Symfonisch Orkest en Koor van de Vlaamse Opera

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今日はミュンヘンで24時間以内の乗り継ぎ便でアムステルダムまで。ここからは目的地のアントワープに近くて列車で15時半に到着しました。ミュンヘンでは昨日と同様に太陽が燦々と照りつける快晴でしたが、北に位置するアントワープは曇り空。気温は14度もあり冬を感じさせません。街は重厚な古い街並みに新しいショッピング街などが見事に溶け合った独特の雰囲気がありました。オペラハウスも典型的なヨーロッパスタイルでコンパクトな空間はオペラには最適です。インターネット予約した席は2階バルコニー正面の1列目で特に今日の演出を見るには最適なポジションでした。

プログラムはカーセン新演出の「カーチャ・カバノヴァー」。何と演出は実に奇抜なものでした。キュービックな空間にステージ床の全てを水で浸してヴォルガ河として、その上に板を何枚も並べて、ドラマ空間を作るといった徹底さでした。これが幻想的な照明とグラフィックと組み合わさされて、想像力を掻き立てる心理劇に仕上げる訳で、カーセン演出の中でも特出した出来栄えでした。

第1幕前奏では多数の女性ダンサーたちが水の中に浮かんでいる場面はインパクトがありました。彼女達は全員ロングヘアーに白い服装で、ドラマに応じてカーチャ・カバノヴァーの分身を象徴し、まるでギリシャ劇のコロスを思わせるところがありました。水の中を沢山のカーチャ・カバノヴァーが水飛沫をあげながら蠢き回る時には、上から撮影した映像を動ににバックステージにも映し出すことでその効果は倍増。これは昨年シャトレでの「トロイ人」に用いられた巨大な傾斜鏡面と似た手法でした。ちなみに彼女達は単にもがいているだけでなく、水面の板をそれぞれ並べ替えるという重要な役目を担っていました。すなわち、水面に道が出来たり、カバノヴァーの部屋が出来たりと、場面を比喩する平面が出来る訳です。特にX字となったり、単に平面を傾斜で結ぶ直線となったり、十字架になったりと、そのイメージするところは物語と深く結びついています。フィナーレでカーチャが身を投げる時にはステージ前面と後面に平行に走った道がボリスとカーチャを隔てる役目をしていたりと、ドラマの展開に重要な役目をしているようです。

歌手達も素晴らしく特にカーチャのミカエラ・カウエの迫真のドラマに圧倒されました。オーケストラは管が下手なものの、ヤナーチェクの独特のリズムとメロディをドラマチックに演奏し、カーセン演出と一体となった出来栄え。この劇場もコンパクトな為か、ナンシー歌劇場のようにピットがステージの下まで広がっていました。底からこみ上げてくるサウンドは悲劇性を帯びた表現にも効果的で、ドラマと一体となった音響空間に浸ることができました。

カーチャ・カバノヴァーはデノケが歌ったザルツブルク音楽祭が印象的でしたが、演出面では今回のカーセン演出が遥かに優れたものでした。ロバート・ウィルソン風の究極の簡素美を感じるとともに、歌手、合唱、オーケストラと一体となったコンセプトがドラマをより力強いものにしていました。



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