2004/02/04
『オルフェオとエウリディーチェ』ローヴェリ新演出/バイエルン州立歌劇


Bayerischere Staatsoper
Mittwoch, 4. Februar 2004, 20.00 Uhr
Orphee et Eurydice
in franzoesischer Originalsprache
Libretto von Pierre-Louis Moline nach Raniero de Calzabigi
in der Fassung von Hector Berlioz (1859)
Erstauffuehnung nach der New Berlioz Edition, herausgegeben von
Joel-Marie Fouquet
Ballettmusik aus der italienischen und franzosischen
Originalfassung (1762/1774)
Musik von Christoph Willibald Gluck

Musikalische Leitung: Harry Bicket
Inszenierung: Nigel Lowery und Amir Hosseinpour
Buehne und Kostueme: Nigel Lowery
Choreograhpie: Amir Hosseinpour
Licht: Past Collins
Choere: Eduard Asimont

Orphee: Vesselina Kasarova
Eurydice: Julia Rempe
L'Amour: Deborah York

Taenzer
Orphee: Stefanie Erb
Eurydice: Magdalena Padrosa
L'Amour: Anja Schneider
Amours Begieiter: Volker Michi, Erich Rudolf

Das Bayerische Staatsorchester
Cembalo: Mark Lawson
Solofloete: Henrik Wiese
Den Chor des Bayerischen Staatsoper

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2月4日は午後13時発のルフトハンザでミュンヘンへ向いました。乗客数が少なすぎる為か、スムーズに搭乗が完了し、予定より10分早く出発し、現地には20分以上早い17:03に到着。荷物はA4サイズのビジネスバッグ1個という身軽さのため、パスポートコントロールの通過もあっという間に。Sバーンへは、ルフトハンザの新しいターミナルから古い第1ターミナルへ歩きますが、これも大した距離ではなく、スムーズに電車に乗れました。マリエン・プラッツで下車し、劇場近くのアン・デア・オーパーにチェックイン。開演20:00まで1時間半以上の余裕でした。外はちょうど暖冬といった感じでコートはホテルに置いてアーベント・カッセへ向いました。電話予約していた席はパルケット3列目の中央と、視界も音響も抜群でした。

開演前の幕にはオルフェオと骸骨が向かい合っているイラストが描かれていましたが、今回の新演出はニゲル・ローヴェリとアミール・ホッセンポーアによるものでした。ローヴェリは一昨年のインスブルック古楽フェスティバルにて奇抜な「リナルド」で強烈でしたが、今回もコミックタッチに彩られた面白さは格別でした。

さて指揮は昨年のロイヤル・オペラにて「オルランド」を振ったハリー・ビケット。古楽オーケストラではなく、州立歌劇場のオケがそのまま演奏しましたが、編成は小規模に抑えられてはいるものの、管楽器をバックステージや左右の奥に配することで、実に立体的で奥行のあるサウンドが爽快でした。古楽タッチの軽快でハリのある響きも見事に表現し、まるで古楽アンサンブルに変貌したかのよう。

グルックの「オルフェオとエウリディーチェ」は様々な版があるものの、ベルリオーズ版にグルックのフランス版などからバレーをミックスした上演はとても期待しているところでした。先ほど述べたようにアンサンブルは極めて素晴らしく、ホールトーンをこれほど感じる演奏も見事でした。

加えて今回のプロダクションの最大の収穫は、ヴェッセリーナ・カサロヴァの最高の歌唱と役作りに感動したことでした。オルフェオ役は出番も多く、終始彼女の描くオルフェオといった人格像が完璧なほどに説得力があり、ステージを作り上げる様は見事です。特に合唱の扱いも巧みで、ソリストとのアンサンブルをこれほど見事にバランス良く描くのはローヴェリの才能の高さとビケットの指揮とが上手く噛みあった成果によるものでしょう。

カサロヴァに次いで、デボラ・ヨークのアモーレも素晴らしい限り。ピエロに扮して透明な歌声が魅力的でした。これに対してエウリディーチェは歌う場面が少なくユリア・レンペの美しい歌はもっと聞きたいところでした。

さてステージは休憩無しの上演にもかかわらず、巧みに場面転換を行い、各幕がさらに変幻していくスムーズな展開。第1幕は暗闇の中、椅子に座っているオルフェオとステージ奥から現れてくる合唱。ちなみに合唱はオーケストラの楽員たちを演じていて、それぞれ楽器を持っているのがユニークでした。オルフェオが嘆くアリアは劇場の幕を閉めた状態で、歌われ、オルフェオの竪琴ならぬヴァイオリンを手にする演出も面白いものでした。地獄の場面はオーケストラの楽員たちがコック達に大きな鍋で茹でられたり、鋸で切られたりなど、料理される場面。地獄の竈の炎とともに煙がパルケットまで充満し、字幕が霞んでしまいました。第3幕は底抜けに明るいブルーを背景に、いろんな動物達が登場し、メルヘン一杯でした。第4幕は椅子が並べられた簡素な空間でフィナーレの歓喜へ。面白いのはオペラが一通り一段落したあとで、今までのお話を一通り、バレーで演じられたこと。ステージには巨大なTVが描かれ、その中で劇中劇、あのインスブルックのリナルドを彷彿とさせるコミック調で、バレエの振り付けもローヴェリならではの素早いムーヴメントでした。この劇が演じられているとき、TV画面の左右に椅子があり、左にエウリディーチェ、右にオルフェオが観劇していましたが、バレエが終わったときには年老いた2人に変わっていて、さらに劇中のオルフェオは体がバラバラになってしまうという奇抜さも加わっていました。

以上、カサロヴァの圧倒的な出来栄えとビケットが引き締めるアンサンブル、合唱の素晴らしさなど全てにおいて極上の内容でした。ちなみに今年4月にFARAOレーベル(www.farao-classics.de)から昨年10月のプレミエ時の公演がDVDとして発売されます。指揮は今日のビケットではなく、イヴォール・ボルトンで、エウリディーチェはローゼマリー・ジョシュアで、他は本日と同じキャスト。



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