明けて10月13日は午前中にパリからロンドンへ飛びました。早めにオンライン予約したスターアライアンスのbmiは53ユーロと格安で、LH*Gとしてマイレージも加算できるのがメリットでした。ちなみにこれはLH共同運航ですが、bmiサイトから予約したほうがお得です。
さて19時からはロイヤル・オペラにてヘンデル「オルランド」新演出でした。このオペラはヘンデルの作品の中でも上演回数が少ない為、このチャンスを見逃すと当分はお目に掛かれない代物。しかも指揮はヘンデルには定評のあるハリー・ビケット、管弦楽は11月に来日するエイジ・オブ・エントライトメントと魅力的です。
歌手では、アリス・コート(オルランド)、バーバラ・ボニー(アンジェリカ)、カメラ・ティリング(ドリンダ)と3人の美女達を聞けるのが最大のポイントで、魔法使いゾロアストロのヨタナン・レマルにメドロ役カウンターテナーのメータなど粒立ち揃ったキャスティングに惹かれます。
フランシスコ・ネグリン新演出はステージをシンプルに夢のような美しさに仕上げ、このオペラのナイーブさに相応しいものでした。冒頭は、ステージ全面が宇宙の星空となった背景で、ゾロアストロの登場に始まり、オルランドとの下りがとても落ち着いた佇まいでした。途中、宇宙の天空の中央に四角い空間が開き、ヴェーヌスとマルスの2人のダンサーが登場したのは鮮やかでした。ヴェーヌスの妖精美と、マルスの金色の鎧の力感がコントラストをなし、彼らのバロック・ダンスも音楽ととてもマッチしたものでした。アンジェリカとメドロが愛し合う場面は羊飼いをイメージして、羊のオブジェが登場したりと、実に長閑な風景。オルランドがアンジェリカを追いまわす場面ではステージ中央に小部屋がぐるぐると回転するセットに仕立てられ、ドアを開いては次の部屋へと移動する演出でした。ちょうどザルツブルクのクセイ演出やコミーシェでのコンヴィチュニー演出のドン・ジョバンニのような手法。フィナーレに掛けても18世紀のロココ風を取り入れたセットに統一され、グランド・オペラというよりも室内オペラのドラマ性を引き立てるかのような展開でした。
ヘンデルのオルランドはストーリーとしてヴィヴァルディの「オルランド・フリオーソ」に比べてドラマチックさはないものの、各登場人物の心理状態に迫るドラマ性や味わい深い音楽とアリアの数々が実に楽しいものでした。ビケット&エントライトメントはクリスティ&レザール・フロリサンのCD盤よりもメリハリのあるインパクトが印象に残りました。そういえばバーバラ・ボニーはラトル&エントライトメントをバックにボレアードを歌ったのが忘れらない素晴らしさでしたが、本日聞いたアンジェリカ役も変化に富むアリアが多く、至福のひと時を感じた次第。コートはカサロヴァと同様にズボン役がとても似合い、男性になりきった演技と歌が大きなアクセントになっていました。各幕に休憩を入れて終演は10:45と予定通りでした。
以上、ティーレマン&ゼンパーに始まり、「グラン・マカブル」「トロイの人々」「サロメ」「オルランド」と連日、見事なステージの連続でした。しかも普段滅多に見られない作品の数々を楽しむことが出来、何よりでした。
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