Salzburg Festspiele 2003

Georg Buchner (1813-1837)
WOYZECK

In Zusammenarbeit mit dem Thalia Theater Hamburg
Neuinszenierung

Landestheater
Samstag, 16. August, 20.00 Uhr Premiere

Regie, Michael Thalheimer
Buhne und Licht, Olaf Altmann
Kostume, Michaela Barth
Musik, Bert Wrede
Video, Alexander du Prel
Produktionsdramaturgie, Juliane Koepp

Woyzeck, Peter Moltzen
Marie, Fritzi Haberlandt
Hauptmann, Norman Hacker
Doktor, Peter Jordan
Tambourmajor, Peter Kurth
Andres, Katharina Schmalenberg
Ansager, Markus Graf
Margreth / Kathe, Judith Rosmair









・ヘンツェのウプパに高揚した後は2時間ほど空けて、ビュヒナーの演劇「ヴォイツェク」で今日のトリプル・ヘッダーが終わります。夕刻6時過ぎでも太陽は燦々と照っているものの、このところの暑さも和らぎ、日陰は涼しくなりました。雑踏を避けて静かなカフェでゆっくりと過ごし、ヴォイツェクへのエネルギーを充填しました。さて今日のヴォイツェクはハンブルク・タリア劇場による公演で今日がプレミエ。既にチケットは完売で、ランデス・テアター前にはズーヘ・カルテの方が多く居られました。

ランデス・テアターに入るのは初めてでしたが、アン・デア・ウィーン劇場に似たコンパクトさが演劇にぴったりのようです。ステージは前面銀色に輝く金属壁に取り囲まれたキュービックな箱を構成していました。役者達は常にステージ右の袖から登場し、象徴的な演技を行うのが特徴で、語り役としてマルクス・グラーフがステージ左袖でマイクを前にピアソラ風の歌をまじえるといった展開が興味深いものでした。常にヴォツェックはステージに登場し、キュービックな空間のほぼ中央に位置し、ドラマがヴォイツェクを中心に進むのも奇抜な発想でした。登場人物たちは全て何処か変わっていて、冷静なヴォイツェックに対して周辺が狂っているという感じです。もはやビュヒナーのオリジナルなドラマは改変され、大尉も医者も鼓手長もヴォイツェクに殺されてしまいます。ナイフで切られ血がリアルに噴出し、その凄惨ぶりに観客からブーイングが出て、かなりの騒ぎとなりました。壁は血糊で真っ赤となり、見るも残酷な世界でした。とうとう客があちらこちらから抗議の声を上げだし、ドラマは一時ポーズ状態に。ノイエンフェルスの「こうもり」の時のような騒ぎを彷彿とさせるものの、何とかドラマが進みだし事なきを得て、休憩なしの1時間20分が終了しました。当然ながらカーテンコールは圧倒的な罵声とブーイングの嵐となり、まさにスキャンダラスなプレミエとなりました。

ハンブルクでは今年の10月4日からプレミエとなるそうですが、そちらでも波紋を呼ぶこと間違いなし。しかしながら早いテンポで進み見るものを取り込む求心力は素晴らしく、狂った周辺の人物はヴォイツェクとの関係を相対的に逆の見方をしていて面白いものでした。銀に輝く閉鎖空間にカラフルで幻想的な照明が当てられる場面はヴォイツェクの心理状態か、社会との関係を示しているのか、幻覚を呼び起こすような効果を生み出していました。重圧感に満ちた電子音楽の迫力でした。タバコをクールに吹かしながら歌と語りを行うグラーフは客観的に物を見る象徴なのかも知れません。ともかくピアソラのオペリータ的雰囲気にも包まれていて、かなり刺激的で極限の心理状態を描いたステージでした。かくして今日はザルツブルクのエキサイティングなダブルヘッダーを思う存分楽しむことが出来ました。


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