Salzburg Festspiele 2003



Hans Werner Henze (*1926)
L'UPUPA UND DER TRIUMPH DER SOHNESLIEBE

Ein deutsches Lustspiel in elf Tableaux aus dem Arabischen
Text von Hans Werner Henze
Auftragswerk der Salzburger Festspiele Urauffuhrung
Koproduktion mit der Deutschen Oper Berlin und dem Teatro Real Madrid

Kleines Festspielhaus
Samstag, 16. August, 15.00 Uhr

Dirigent, Markus Stenz
Inszenierung, Dieter Dorn
Buhne und Kostume, Jurgen Rose
Licht, Tobias Loffler
Choreinstudierung, Rupert Huber
Produktionsdramaturgie, Hans-Joachim Ruckhaberle

Badi'at el-Hosn wal Dschamal, Laura Aikin
Der Damon, John Mark Ainsley
Der alte Mann, Alfred Muff
Malik, Hanna Schwarz
Dijab, Gunter Missenhardt
Al Kasim, Matthias Goerne
Adschib, Axel Kohler
Gharib, Anton Scharinger

Konzert vereinigung Wiener Staatsopernchor
Wiener Philharmoniker
Koproduktion mit der Deutschen Oper Berlin,
dem Teatro Real Madrid und dem Teatro Massimo Palermo






・モーツァルト・マチネを聞いてから食事をして15時からオペラというのはかなり忙しいものでした。とはいえ今日のオペラはヘンツェの新作「ウプパと息子の愛の勝利」
ということで、期待感が高まるばかり。既に8/12のプレミエを見られた方によると、美しいステージで面白いとのことでした。

さて指揮は当初ティーレマンが予定されていましたがマルクス・シュテンツに変更となりました。彼はケルンやタングルウッドでバーンスタインや小澤征爾に学んだそうで、モーツァルトからツェムリンスキーに至るレパートリーをこなし、特にヘンツェのオペラや交響作品を多く指揮してきたとのこと。ギュルツェニヒ・ケルン響の指揮に加えて2004年からはケルン歌劇場のGMDに就任するそうです。

タイトルの" L'Upupa(ウプパ)"とはペルシャ伝説で結婚した女の人を示すそうです。ある日、彼女が鏡の前で髪を櫛でといていると、義父が現れて、驚いた彼女が鳥に変身してしまったとか。その時、櫛が頭に残ってしまい、これがヤツガラシという鳥の頭とそっくりなため、ウプパはヤツガラシを示す学名となったそうです。

物語は、ヤツガラシが幸運をもたらす鳥ということで、3人の息子が鳥を求めて旅に出るといった内容です。途中、デーモン(Demon)に出会って友達となり、3人の息子はそれぞれの道を歩み、アル・カシム(Al Kasim)がヤツガラシを見出しました。さらに彼は美しいユダヤの王女、バディアト(Badi'at)と出あって恋に落ちるといった展開。サルタン人の棟梁マリク(Malik)が出てきたりして、物語は実に面白いものでした。

オペラの台本もヘンツェが書いたもので、創作の発端は1997年に作曲した「アラビアの6つの歌」にあるそうです。そのためでしょうか、リブレットと音楽の一体感は素晴らしく、オペラというよりも演劇の面白さに惹かれてしまいました。ディーター・ドルンの演出とユルゲン・ローゼのステージ・セットと衣裳も見事に一体となって、実にイマジネーション豊かなメルヘンの世界に誘ってくれたのでした。

全幕にアーチ状のセットを使っていたのが印象的でした。冒頭はアーチ状がスリット状に開口していくのが御伽噺を始めるのに相応しいアイデアでした。ちょうど座席がパルケット最前列の指揮者の後でしたので、開口部の奥まで良く見渡せ、中央の丘の傾斜を使った演出も効果的に見えました。場面に応じて多彩にに変化するシーンと照明も美しいものでした。美しい花園が地下から涌き上がる場面、デーモンが羽根を羽ばたかせて空を飛ぶイメージなどインパクトも十分でした。

ヘンツェの音楽は1998年のサントリーホールでのサマーフェスティバルで交響曲1番と9番が印象に残っていますが、オペラで聞くのは初めてでした。コンテンポラリーをベースとしながらも、懐古ロマン的響きも取り入れられ、水笛による鳥のさえずりなど実に心地よいものでした。場面に応じて恐怖を示す重低音のリズムも迫力がありました。キャストでは何といってもアル・カシム役のマティアス・ゲルネとバディアト役のラウラ・アイキンが傑出していました。アイキンは6月の「ナクソス島のアリアドネ」でツェビリネッタから2ヶ月ぶりに聴きましたが、とても活き活きとした役作りが一段を冴えていたように思えます。ハンナ・シュヴァルツが白い髭をつけてサルタンの棟梁を演じるシーンも見もので、アルフレッド・ムフの老人が渋いものでした。実は老人はアーチ状の上部の塔の部分に居て、最後のシーンでヤツガラシを離してしまうのですが、ヤツガラシが上部の塔に戻り、観客席の方を見渡してフィナーレとなる展開は面白いものでした。ちなみにヤツガラシは精巧に作られていてリモコン操作で動かしているようです。

休憩は1回だけ入りましたが、15時の開演から終演の18時まで、全く飽きることなく、楽しいドラマに没頭することができました。まるで映画を見るような感覚で極上のウィーンフィルの演奏と歌手達の美声と刺激的な音楽と極色彩のステージを楽しむことが出来ました。それにしてもウィーンフィルの演奏は本当に素晴らしかったです。カーテンコールではアーチ状のセットの扉からヘンツェも登場し、盛大な喝采が続きました。今年のプロダクションの中でも抜群の出来栄えだった思います。







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