Innsbrucker Festwochen der Alten Musik 2003




CLAUDIO MONTEVERDI
L'Orfeo


Favola in musica in einem Prolog und funf Akten
Text: Alessandro Striggio
(in italienischer Sprache mit deutschen Ubertiteln)

Landestheater
12. August 2003, 20.00 Uhr

RENE JACOBS (Musikalische Leitung und Cembalo)
BARRIE KOSKY (Regie)
KLAUS GRUNBERG (Buhnenbild)
NIGEL LEVINGS(Lichtdesign)
MIRO PATERNOSTRO (Kostume)
Mitglieder der AKADEMIE FUR ALTE MUSIK BERLIN und
des CONCERTO VOCALE
 VOCALCONSORT Berlin

STEPHANE DEGOUT (Orfeo)
NURIA RIAL (Euridice, La Musica)
MARIE-CLAUDE CHAPPUIS (Messagiera)
YIREE SUH (Proserpina)
CARLOS MENA (Speranza, Pastore, Spirito)
TOPI LEHTIPUU, FINNUR BJARNASON (Pastore, Spirito, Apollo, Eco)
ANTONIO ABETE (Pastore, Plutone)
PAOLO BATTAGLIA (Caronte, Spirito)

Koproduktion mit der Deutschen Staatsoper Berlin





・昨年のインスブルックはルネ・ヤーコプスの指揮でヘンデルのリナルドが圧倒的に素晴らしいものでした。ローヴェリーの新演出の奇抜さにも大いに驚かされ爆笑ものでしたが、今年はモンテヴェルディのオルフェオとなれば見逃す訳には行きません。ザルツブルク4日間の充実を後にインスブルックへ移動します。ザルツ12:30発の列車はパノラマ車両に乗車し開放感一杯の車窓を楽しめました。眩しい快晴の中、空の青と草原の緑のコントラストが実に鮮やかでした。午後2時半頃にインスブルックに到着。ザルツブルク以上の焼け付く猛暑は強烈で、汗も一瞬に乾いてしまうため、衣服は常にドライでホットな状態。ともかく冷房の効いたヒルトンにチェックインすることにしました。部屋は豪華で広々としていました。これでザルツ・ピッターの半額以下の安さとは驚きです。高速LANまで完備したオフィスタイプも嬉しいところで、11階から望むチロルの景色が抜群でした。


・さて今日はプレミエ初日ということでORFのライブマイクがオーケストラピットに沢山セットされていました。左側にはハープ、テオルボ、バロック・ギター、リュート、ヴィオラ・ダ・ガンバ、中央にブロックフレーテ、クラヴサン、右手にヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、トランペットに打楽器というレイアウトでした。古楽アンサンブルは普段から良く聴くものの、やはりベルリン古楽アカデミーのアンサンブルは素晴らしく絶妙でした。特にピッチに狂いやすい弦楽器も常に安定した響きを維持し、全体のハーモニーも色彩感と抒情を湛えた巧みさでした。またルネ・ヤーコプスのテンポ運びはドラマとマッチした自在さで、ハイテンション時でのスピード感、レチタティーヴォでの抑揚に合わせた落ち着きも見事でした。繰り返し現れるリトルネッロやシンフォニアもドラマの起伏に応じた展開を聞かせて、モンテヴェルディの偉大な作品に集中させる手腕はさすがのものでした。

アンサンブルの素晴らしさに加えて若手を主体としたキャストと合唱も極めて優秀。デゴーのオルフェオをはじめリアルのムジカ、エウリディーチェは容姿、歌ともに適役でした。

演出は今年6月にベルリン・コミッシェにてリゲティの「グラン・マカブル」を新演出したコスキーが担当しました。リゲティの斬新な演出との新聞評から察するに、今日のオルフェオにセンセーションを期待させましたが、ステージは至ってシンプルで落ち着いて見ることができました。ステージは前傾しており、椅子などが点在した場面から始まりました。威勢の良いトッカータの開始と同時に客席後方から入ってきたオルフェオが中央に椅子に座りながら、紙に書き物をしているシーンから始まりました。見ているとどうもモンテヴェルディが作曲しているようであり、次のシーンでムジカが登場し歌う時も、一緒に座りながら、ムジカの歌うパッセージを書き留めている様子。第1幕にてニンファ、牧人、合唱と登場し、歌っていく様もモンテヴェルディならぬオルフェオが作曲している様子が描かれているのはユニーク。バレットに続く合唱の躍動感ではコスキー演出が実に現代的で合唱たちをダイナミックに演じさせていたのが印象的でした。

第2幕は天井から細い筒のようなものが無数に吊るされ、そのグリーンがまるで竹林を連想させる広がりを見せました。エウリディーチェの死を知って歌うオルフェオのアリアの感動、そして第3幕から第4幕の黄泉の国と全く飽きさせない集中力です。オーケストラピット以外にもバック・ステージ、登場人物たちの奥にも古楽アンサンブルを展開させ、音響のサラウンドの中で歌手たちが演じる場面も美しく感動的でした。かくしてモンテヴェルディの天才ぶりを今日のプロダクションで描ききられたわけですが、フィナーレの場面はコスキーの異様な趣味がスパイスを加えていました。アポロンと一緒に天に上るオルフェオはステージの中央に立ち、天井から胴体から切り離された手、足が落ちてきて、次に両手両足の無い胴体、切断された頭が落ちてきました。なんとオルフェオが生々しいバラバラ死体をかき集めて抱きかかえるシーンはちょっと衝撃でした。おそらく天に上ったオルフェオが現世でのオルフェオの死体を慈しんでいるシーンでしょう。特にブーイングも無く幕となり、最大限の喝采が湧き上がった次第です。

ザルツブルクに比べると地味かも知れないインスブルックですが、今年の新作も素晴らしく感動的で見ごたえ、聴き応えがありました。まさに古楽ファン、オペラファン必見のオルフェオに来て良かったと思う瞬間でした。終幕後は今日到着したばかりの知人の方とテラスで軽く食事し、涼しくなったインスブルックを満喫しました。昼は猛暑でも夜はザルツ以上に涼しくなります。



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