wiener staatsoper

sonntag, 15.Juni 2003, 16.30 Uhr


Tristan und Isolde

Handlung in drei Aufzuegen
Text und Musik von Richard Wagner


Dirigent, Christian Thielemann
Inszenierung, Guenter Kraemer
Buehnenbild, Gisbert jaekel
Kostueme, Falk Bauer
Chorleitung, Ernst Dunshirn

Tristan, Thomas Moser
Koenig Marke, Robert Holl
Isolde, Deborah Voigt
Kurwenal, Peter Weber
Melot, Markus Nieminen
Brangaene, Petra Lang
Ein Hirt, Michael Roider
Stimme des Seemanns, John Dickie
Steuermann, In-Sung Sim

Orchester der Wiener Staatsoper
Chor der Wiener Staatsoper
Buehnenorchester der Wiener Staatsoper





圧倒的なブーレーズ&ウィーンフィルを聞いた後は、16:30からティーレマン指揮の「トリスタンとイゾルデ」でした。演出はギュンター・クレーマーによる新作で、今日が最終日公演です。公演ごとに磨きが掛ってきていることを期待したいです。そして結果は予想とおり驚異的な内容となりました。やはり今日の最大の主役はティーレマンでした。今日の席は最前列の右6番で、左手に指揮を仰ぎながら正面のステージを楽しめるポジションなので、彼の指揮ぶりをつぶさに観察できました。決して流麗とか華麗とは言い難く、むしろぎごちなさを感じるタクト捌きでした。それでいてオーケストラから極上の響きを強靭なアンサンブルとともに引き出す手腕はさすがと言わざるを得ません。ヒンクとホーネックがプルトを組み、ほぼウィーンフィルが固める強力布陣は、ベルリンフィルに匹敵するかそれ以上かと思わせる迫力です。しかもトーマス・モーザー(トリスタン)とデボラ・ヴォイト(イゾルデ)の強力キャストはオーケストラの大音量に負けない迫力で、両者の相乗効果も最大限に発揮されていました。久しぶりの超重量級のワーグナー演奏に出会わせた幸せです。

ステージは四角い空間をガラス壁で仕切った構造で、冒頭の船の様子は左右の仕切り部屋に船のタービンのようなものが回転しているイメージ。天井部に四角い照明部分があり、幕が最後まで上に上がることで四角い開口部が登場し、トリスタン、クルヴェナールが窓から外を見る様子を上手く表現していました。第2幕は演奏の素晴らしさとともに、シンプルで幻想的なセットが印象的でした。倒れた鎧の胸元から松明を燃やしている場面は死の匂いを漂わせとても印象的で、またトリスタンとイゾルデの出会いの場面の美しさは絶品でした。

第2幕は横に長い四角いセットで、左手に小さな台座があり、その傍らにワーグナーの顔の像が置かれていました。台座にはプロジェクターがあり、ステージ右手に四角い画角で、海の波しぶきの映像を映し出しています。そして前方に第1幕での惚れ薬のグラスが二つテーブルに置かれていたのは第1幕を懐古しているようでもあり象徴的でした。左手には電光掲示板のようなものもありましたが意味不明。ともかく映し出された水しぶきの映像を見ているとイゾルデとトリスタンの愛は常に流動的で安住するものではないことを比喩しているようでもありました。また留まることのない不安定さが、半音階進行の無限とも符合していることを直感させてくれます。また第3幕は空虚な四角いデザインだけのものですが、やはり歌手の怒号級の出来栄えを強調するにはちょうど良いシンプルさでした。

ペトラ・ラングのブランゲーネも第2幕での美しい歌に心を奪われましたし、ロベルト・ホルのマルケ王、ペーター・ウェーバーのクルヴェナールも味わい深いものでした。それにしても今日のトリスタンは以前に聴いたビシュコフ指揮をも飛躍する出来栄えで、ティーレマンのワーグナーは沢山聴いてみたいものです。カーテンコールの熱狂も凄まじく、特にティーレマンが登場したときの喝采は凄いものでした。これほどの熱狂ぶりはグルベローヴァのロベルト・デヴリュの時以来の体験です。ちなみに今日のウィーンフィルを振ったブーレーズも聴きにこられていました。






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