Richard Wagner
Tristan und Isolde
GOETEBORGSOPERAN

2. Mai 2003, 18.30 Uhr



Dirigent, Patrik Ringborg
Regi, Philip Himmelmann
Scenografi, Hermann Feuchter
Kostym, Petra Bongard
Ljusdesign, Davy Cunningham

Tristan, Thomas Sunnegarclh
Isolde, Kirsi Tiihonen
Kung Marke, Magnus Baldvinsson
Brangaene, Irma Mellergaard
Kurwenal, Mats Person
Melot, Harald Tjelle
En Herde, Ingemar Anderson
En Styrman, Janas Landstroem
En Ung Sjoeman, Mattias Ermedahl
Goeteborgs Operans Orkester och Herrkor



今日は昨日以上に快晴となりました。朝7:28ハンブルク発のECでコペンハーゲンに向います。ちなみにこの列車EC31は定期便で2両しか連結していない為、予約しておいた方が無難です。昨日ハンブルクに到着した際に、明後日のハノーファー行も含めて予約したので安心です。暫く走ると緑の草原が一面に広がる美しさで、ほどなくリューベックに到着しました。さらにオルデンブルクを出てからは海の上に掛る橋を通過し、9:10プットガルテン島に到着。ここまでがドイツ国境で、列車はフェリーの中に入っていきました。ここから海を渡りデンマークのロドビーまで行くことになりますが、フェリー内にはショッピング・アーケードやレストラン、カフェがありとても楽しいものでした。デッキに上がるとバルチック海峡が一面に広がり、燦々と降り注ぐ太陽が眩しい限りです。

ロドビーからは再び陸に上がって、ナイコビンク、リンクステットを経てコペンハーゲンに12時に到着しました。到着ホームの反対側に12:20発エーテボリ行きが来るので便利でした。なおデンマークからスウェーデンへは海に掛った長い橋の上を走り、ほどなくマルメに到着。ここで座席していた車両は切り離されるとのことで、別の車両に移動して快適な車窓を楽しみました。スウェーデンに入ってから携帯電話はTELIAの管轄となりますが、Welcome to Sweeden!...というメッセージが入ってきました。北欧の草原が広がる地域でもアンテナが感度良好なのには感心しました。途中、真っ青な海を望みながらひたすら北に向けて走り続け、16:30定刻通りエーテボリに到着しました。




ホテルは中央駅のすぐ近くのラディソンSASにチェックインしました。ここからエーテボリ・オペラへも徒歩10分の便利さでした。さてオペラハウスは海に面し、シドニーオペラのようにガラス張りの構造になっていました。シドニーは海に浮かぶ島といった感じなのに対して、エーテボリは港の中といった雰囲気が漂っています。劇場内部もとてもシンプルで新しい造りになっていて、パルケットも段々畑が取り囲む感じで見やすいです。ちなみに座席は最前列右よりでステージを隈なく楽しむことができました。


今日のトリスタンはヒンメルマン新演出によるもので、第1幕は左右の壁に手すりのある通路を2曹構造に配置し、全体を灰色とグリーンに統一したとても簡素なものでした。登場人物たちの衣服も灰色で、暗く沈んだモノトーンの世界が淡い照明とともに浮かび上がってくる感じで、とても象徴的な演出でした。そういた意味で、音楽の要素に比重が置かれ、パトリック・リンボルクがとても引き締まった指揮をしてくれました。特に前奏曲からして深い響きを醸し出し、まさにトリスタンの世界に吸い込まれていくような素晴らしさです。音量も思う存分に響かせ歌手は大丈夫だろうかと思うほどでしたが、北欧の地元歌手達の巨体から発せられる声量はオーケストラにも負けない迫力でした。しかも彼らの歌がとてもリアルで役になりきっており、北欧のワーグナーの醍醐味を楽しませてくれるのです。エーテボリ・オペラというマイナーでこれほど見事なワーグナーが聴けること自体が奇跡ではないかと思ったくらいです。

第2幕も第1幕をベースに大きな松明を炊いて、トリスタンとイゾルデの濃厚な場面を展開しました。イゾルデのキルシ・ティオーネンはニルソンをはじめとする北欧ワーグナー歌手の系譜を受け継いでいるかのようにドラマチックでした。立派な体格にブリュンヒルデも歌えるのではと思います。それにトリスタンのSunnega’rdhという歌手の巧みさに驚きました。声量があることは勿論のこと、一昨日聞いたクリフトン・フォービスのパルジファルに比べて数段上を行くのではと思うほどです。こういった劇場にこれほど素晴らしい歌手が居ること自体にエーテボリオペラの層の厚さを感じますが、メジャーオペラにも出演して欲しいものです。クルヴェナールのインゲマル・アナセンも同じく素晴らしすぎるものでしたし、ブランゲーネのマッツ・パーソンも然りです。

第3幕はさらにシンプルなセットとなり、ステージ床に空いた矩形の窪みにトリスタンが後姿で直立の姿勢。下から照明が当たってステージ背面に大きな影を作ることでトリスタンの墓標であるかのようなイメージを作っていました。なおマルケ王が登場する場面で、クルヴェナールとメロートの戦いなどは一切演出上は行われず、ステージ背景に開いた空間に登場人物が現れて、あたかもオラトリオ風に歌うことによって演出されました。一見コンチェルタンテ風に見えるのですが、実に想像力を掻き立てる演出でした。また3幕の前奏では深いサウンドが印象的でイングリッシュホルンの調べが心を締め付けます。それにしてもアンサンブルが素晴らしいことに驚きました。指揮者のリンボルクはエッセン歌劇場やウィーンのフォルクスオーパーでも活躍したそうですが、今日の指揮を聴いた限り素晴らしい指揮者だと思いました。ともかく遠路はるばるとエーテボリの地に辿り着いて、最高のトリスタンの一つを見ることが出来て最高でした。

なおエーテボリオペラのパンフレットなどを見ているとドン・ジョバンニやトスカなどミュージカル風の演出が多いようで、斬新なデザインの衣裳やセットなどアバンギャルドが流行っているようです。オペラハウス内部にレストラン、カフェ、バーのコーナーを充実させているのも特徴でした。さて明日はハンブルクに戻ってさらにハノーファーまで足を伸ばします。





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