OPERA NATIONAL DE PARIS
Richard Wagner
Parsifal
mercredi 30 avril 2003 a 18h
OPERA BASTILLE



Direction musicale, James Conlon
Mise en scene, Graham Vick
Realisee par, Michel Jankeliowitch
Decors et costumes, Paul Brown
Lumieres, Matthew Richardson
Choregraphie, Ron Howell
Chef des choeurs, Peter Burian

AMFORTAS, Albert Dohmen
TITUREL, Gudjon Oskarsson
GURNEMANZ, Kristinn Sigmundsson
KRINGSOR, Willard White
PARSIFAL, Clifton Forbis
KUNDRY, Katarina Dalayman
ERSTER GRALSRITTER, Mihajlo Arenski
ZWEITER GRALSRITTER, Yuri Kissin
ERSTER KNAPPE, Valerie Condoluci
ZWEITER KNAPPE, Karine Deshayes
DRITTER KNAPPE, Wolfgang Ablinger-Sperrhacke
VIERTER KNAPPE, Sergei Stilmachenko
KLINGSORS ZAUBERMAEDCHEN,
Aline Kutan
Valerie Condoluci
Louise Callinan
Sine Bundgaard
Karine Deshayes
Nona Javakhidze
EINE ALSTIMME AUS DER HOEHE, Nona Javakhidze

Orchester et choeurs de l'Opera National de Paris






チューリヒからは朝7:13発のTGVでパリに向いました。昨日はチューリヒ湖畔からアルプスが見える晴天でしたが、今日は朝から雨の天気でした。気温も低目ですが、牛が点在する牧草の景色は春を感じさせてくれるものでした。TGVもAC電源があるので、最近バッテリ消耗が早くなったパソコンにはとても重宝します。ベルン〜ディジョンを経て約6時間ほどでパリ・リヨン駅に到着しました。リヨン駅からは徒歩数分でホリデイ・インにチェックインしました。ここはバスチーユオペラへも歩いて5分ほどの便利さで、13:30到着だったのでゆっくりとできました。


さて今日は1997年にプレミエされたグレアム・ヴィック演出のパルジファルでした。指揮は音楽監督のコンロンで、アンフォルタス=A.ドーメン、ティトゥレル=G.オスカーソン、グルネマンツ=K.ジークムントソン、クリングゾル=W.ホワイト、パルジファル=C.フォービス、クンドリー=K.ダレイマン他でした。注目はクリフトン・フォービスとザイネ・ブントガルトがパリオペラ初デビューしたことでした。C.フォービスは今秋ムーティ&スカラ来日公演のオテロを歌いますが、奇しくも本日と同じG.ヴィック演出での公演というのも興味深いです。S.ブントガルトは今回では花の乙女の一人としての登場ですが、昨年5月の井上道義&マルセイユオペラで歌ったツェビリネッタが余りにも素晴らしかったので、今後はパリなどメジャーで大活躍するのではと期待しております。

また今回はA.ドーメンのアンフォルタスを聴けるのが楽しみでした。既にアバド指揮によるイースターおよびエディンバラの音楽祭にて深みある演技が素晴らしく、彼の迫力ある歌は今回もすっかりとドーメンのキャラクターと化していました。ダレイマンはバスチーユ「ヴォツェック」やザルツブルク「ドクター・ファウスト」での素晴らしさが印象的で、今回のクンドリーも見事な出来栄えでした。彼女はパリでは絶大な人気のようです。他にクリングゾルを歌ったヴィラード・ホワイトはザルツブルク音楽祭「グラン・マカブル」でのネクロツァールで聞かせてたような凄みをクリングゾールでも聞かせ、白いマント姿に槍という出で立ちが似合っていました。そしてパルジファルにおいて要となるグルネマンツはジークムントソンで、その威厳に満ちた貫禄は素晴らしかったです。

ステージは全幕共通して円形の床に松の木が1本立っているというシンプルなものでした。白を基調として、背景に横長のスクリーンを立て、所々に石を転がした情景は日本の室町時代における庭園美学を模したものでした。ヴィックがパルジファルに禅の境地を見出そうとしているのかどうかは別として、白をバックに登場人物をシルエットで映しだすなどの手法はシンプルなセットにぴったりでした。円形床は回転できるようになっていて、聖杯の儀式への場面転換では、ステージ前面に長い布が張られている間に、聖杯の場面が上手く繋がるようになっていました。また第1幕では松には緑の葉があったのが、第2幕ではなくなり、代わって花園の場面で、ピンク色の花が咲くといった細やかな演出も面白いです。さらに円形床は聖杯儀式中に上昇して、円卓を囲む騎士達のテーブルであるかのように表現されていました。これは2幕になると、逆に下降して、その窪みにクリングゾールが立っているのでした。ちょうど1幕と2幕の対比を円形床の上昇下降に見立ているのが面白いです。なお花園の場面では円形床はスパイラル状の通路になっていて、花の乙女達とパルジファルの下りを立体的に見せていました。このように円形ステージをベースにしたギリシャ劇的側面を強調しつつも、全体の動きはとてもシンプルにかつ邪魔にならないよう工夫されていて、神聖劇が厳粛な儀式として流れていくという印象を受けました。

コンロンの指揮も演出と同様に自然さを感じさせるもので、とても素晴らしい演奏でした。しかしながらアバドのパルジファルで聞いたようなグロッケンの響きなど、インパクトの面ではやや物足りないことも感じました。とはいえ夕方6時に始まって、23:30に終了という時間を忘れさせてくれる集中度でした。さてフォービスは巨大なジークムントソンのグルネマンツに並ぶととても小さく感じましたが、第2幕から3幕に掛けての調子が上がってきました。適度にヘルデンさを感じるものの、もっと輝かしく歌えれば、ますますワーグナー歌手としても期待できるのではと思います。いずれもジークフリートなども歌って欲しいところですが、オテロは果たしてどのようになるだろうかと楽しみです。ともかく今年始めのパルジファルはキャスト的に見ても興味深いものがありましたが、ヴィック演出はコンヴィチュニーのパルジファルなどに比べると、かなり大人しいものでした。しかしながらフィナーレの救済の場面はシルエットと化した情景がとても美しく、「無」という言葉が自ずと連想してしまいました。昨年見たコンヴィチュニーのパルジファルでは舞台幕に書かれた「救済」「解脱」といった内容にブッダの世界を連想させるものでしたが、ヴィックのパルジファルでは禅の世界を意識していると感じた次第です。

(PS)開演前にバスチーユ地下のfnacにてCDを見たところ、先日ベルリンにて購入したインスブルック音楽祭「リナルド」29.99ユーロのCDは、fnacでは45ユーロの値が付いていました。逆にノイエンフェルス「こうもり」DVDはベルリンは35ユーロだったのがfnacでは28ユーロと安いようです。またW.マイヤーの写真が表紙になったDVDはビシュコフ指揮のマーラー「大地の歌」でした。


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