BERLINER PHILHARMONIKER
Ludwig van Beethoven
"Fidelio" op.72


Sir Simon Rattle DIRGENT
Juliane Banse,
Sopran
Angela Denoke,
Sopran
Alan Held,
Bass
Laszlo Polgar,
Bass
Thomas Quasthoff,
Bass
Rainer Trost,
Tenor
Jon Villars,
Tenor
Arnold Schoenberg Chor
Erwin Ortner,
Einstudierung


PHILHARMONIE GROSSER SAAL

Mo 28. April 2003 19 Uhr Sonderkonzert
Ludwig van Beethoven
Fidelio op.72

Don Fernando: Thomas Quasthoff
Don Pizarro: Alan Held
Florestan: Jon Villars
Leonore: Angela Denoke
Rocco: Laszlo Polgar
Marzelline: Juliane Banse
Jaquino: Rainer Trost
Erster Gefanener: Thomas Ebenstein(Tenor)
Zweiter Gefangener: Ion Tibrea(Bass)
Gefangene, Wachen, Volk: Arnold Schoenberg Chor


今日はドレスデンを10:16発のECにて発ち、12:16にベルリンに到着しました。列車移動が2時間だけなのはとても楽です。このところ早朝にホテルをチェックアウトする忙しさでしたので、久しぶりにゆっくりと出来ました。ホテルはフィルハーモニー近くのグランド・ハイアットにチェックインしました。部屋はグランド・クラブ・メンバー用で最上階にありました。窓からはソニー・ビルも望め快適でした。ワイドヴィジョンのTVにはインターネットアクセスの機能もあるようですが、ブロードバンドのポートも常設されており、持参したLANカードで簡単にPC接続できました。6分間で1.5ユーロのチャージが掛かりますが、トール・フリーの電話接続だと無料です。

開演の20時まではたっぷりと時間があるので、DussmannにCDを探しに行ってきました。ラトル&ウィーンフィルのベートーヴェン全集が49.99ユーロと安く、昨年夏のインスブルック音楽祭でのルネ・ヤーコプス&フライブルクの「リナルド」のライブCDCが新譜として出ていました。3枚組で29.99ユーロでした。デッセイら6人のソプラノと二人のアルトによるヘンデルのアルカディア・デュエット集と合わせて入手しました。他にもケルン放送CD、ビシュコフ&ケルン放響の英雄の生涯などがあり、DVDではアバド&ベルリンフィルのベートーヴェン交響曲全曲(TDK)が何枚かに分かれて出ていました。



さて開演30分前、フィルハーモニーに向う途中、クヴァストホフも会場に向けて信号を渡っておられました。彼はフェルナンド役として後半の出番なので、今頃から出向くのがちょうど良いのでしょうか。会場には来シーズンのパンフレットとともに今日の出演者のひとりアンジェラ・デノケが表紙になったマガジンも置かれていました。内容はフィデリオの解説はもとよりデノケの記事に、アバドとベルリンフィル〜マエストロの70歳の誕生日と題した特集も組まれていて多彩な内容でした。ともかく開演前から期待が高まりました。

座席は9列目の22番とAブロックど真ん中の全体を俯瞰できる位置で音響も素晴らしかったです。さてラトル&ベルリンフィルのフィデリオは予想通りに溌剌としたエネルギッシュさで、大いに盛り上がりました。今回はキャストも凄くて、アンジェラ・デノケのレオノーラ、ユリアネ・バンゼのマルツェリーナ、ジョン・ヴィラーズのフロレスタン、ラースロー・ポルガ−のロッコ、ライナー・トロストのヤキーノ、アラン・ヘルトのピッツァロに、トーマス・クヴァストホフのフェルディナントなどいずれも持ち味を活かした出来栄えでした。

既にイースター公演の後ということで、完成度も極めて高いように感じました。序曲の冒頭動機ではスタッカートの切れ味とともに、フィルハーモニーに広がる残響が緊迫に満ちた素晴らしさです。オペラとしてはオーケストラが前面に出た印象でしたが、ベルリンフィルの大音量とキャスト陣の卓越した歌唱力とが火花を散らしあう様は格別でした。特にラトルの指揮にはベートーヴェンの天才ぶりをスコアから引き出すような閃きが常にあるように感じます。主旋律に隠れて気づかないような中低音域の動き、例えばシンフォニー5番の1楽章の第1主題に類似した短いパッセージにおいてすら、アクセントを効かせながら、隠し味的に音楽の推進力を導くあたりにさすがです。

ステージはオーケストラ後方にソリスト陣とその背後のポーディアムにシェーンベルク合唱を配置したものでした。特に合唱はフィナーレにおいて4声部としてHeilを交互に歌いあいますが、4声部を細かくレイアウトしていたようで、Heilが時間差でもってパノラマ的に響くのは印象的でした。

デノケの歌はやはり最高で、フロレスタンが開放されてからの歌には女性に戻った美しさが心に響きました。ヴィラーズの伸びのあるテノールはフィルハーモニーも狭しといった感じで切実感をもって伝わってきました。フェルディナントは歌う場面が少ないものの、クヴァストホフの存在感と威厳に満ちた歌も最後の盛り上がりに向けて引き締まりました。それにポルガ−の深い響きのバスが魅力的で巧みなロッコを演じていたのが印象的でした。特に彼が歌ったアリアの素晴らしさに拍手が沸き起こった時、あえてこれを制止しようという仕草も、ラトル&ベルリンフィルの集中力に応えようとする意図とすら感じられました。ジョン・ヴィラーズのフロレスタンも心を揺さぶる歌でした。

以上のように極めてオーソドックスな演奏会形式ですが、抑圧から開放に向けたドラマを臨場感豊かに聞かせてくれたのは何よりでした。抑圧から開放に向けたベートーヴェンの構図はラトルの演奏によって一段とスリリングかつエキサイティングなものになっていたと思います。録音マイクも沢山吊られていましたのでCDになるのではと期待しています。





例年通り来シーズンプロ2003/2004がフィルハーモニーに山積みされていました。冊子はカラー写真を沢山掲載して例年になくずっしりと重いです。ただ有り難いことに、別刷りに全ての公演が一覧となっているのはとても見やすくて便利です。それにしても6月のアバドは魅力的で、4月のボニー&バルトリ&コジェナが出るCosiも魅力的です。他にも悩ましい演目が満載です。ちなみにベルリンフィル以外にもムーティ&ウィーンフィル等のフィルハーモニーでの公演が申込めるのは便利です。


4月29日付けのベルリナー・ツァイトゥング紙にラトル&ベルリンフィルの来シーズンプロに関する記事が掲載されていました。他にも4月29日付けベルリナー・モルゲン・ポスト紙にてラトルのフィデリオ評が大きく取り上げられていました。



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