DON GIOVANNI

Sonntag, 4. August, 19.00 Uhr
Grosses Festspielhaus
Neuinszenierung

Dirigent Nikolaus Harnoncourt
Regie Martin Kusej
Kostueme Heide Kastler
Licht Reinhard Traub
Dramaturgie Sebastian Huber, Hans Thamalla
Choreinstudierung Rupert A. Huber
Buehnenmusik Morzarteum Orchester Salzburg
Leitung der Buehnenmusik Rupert A. Huber
Mandoline Ulrike Eckardt
Cembalo David Syrus
Violoncello Franz Bartolomey

Don Giovanni Thomas Hampson
Donna Anna Anna Netrebko
Don Ottavio Michael Schade
Kmtur Kurt Moll
Donna Elvira Melanie Diener
Leporello Ildebrando D'Arcangelo
Masetto Luca Pisaroni
Zerlina Magdalena Kozena

Wiener Philharmoniker
Konzertvereinigung Wiener Staatsopernchor



今日はミンコフスキ&モーツァルテウムに引き続き、7時から祝祭大劇場でクセイ新演出の「ドン・ジョバンニ」でした。今日は3回目の公演で、プレミエは、イェーダーマンに代わり今年の音楽祭開幕を飾ったそうです。それほど本公演に掛けられる期待は大きく、実際に大変素晴らしい内容で、1日にしてミンコフスキとアーノンクールの名演を二つも楽しめることになりました。

席はパルケット最前列の右ブロック一番中央寄りで、ステージが前面に迫り、左にアーノンクール、目前にウィーンフィルという贅沢なポジションでした。序曲の開始から緊張感漂うアーノンクールの指揮が素晴らしく、ちょうどオーケストラが海原のように広がり、その波の上からシャウシュピールを楽しめるといった感じでした。序曲の中盤で幕が開き、客席からどよめきと笑いが。何とステージ面全体がPalmersの女性アンダーウェア広告!。さらに広告の中央には扉があって、何人ものサングラス女性モデル達が左右から登場しては、その扉の奥へと入っていく演出。

第1幕は、広告壁が上部に上がり、代わって白一色の回転体が登場しました。パノラマ舞台の左右を平板にして、中央部が宇宙船を思わせるようなデザインがとても斬新でした。さらに回転体には扉が幾つもあって、その扉の奥にも2重の回転壁があり、シリンダーのように上下したりと、シンプルながらも自在にステージを小部屋に分割できる構造でした。

第1場、ハンプソン扮するドン・ジョバンニとダルカンジェロのレポレッロ。ドンナ・アンナはロシアの新鋭アンナ・ネトレブコ。彼女もアンダーウェア姿でとても可憐な少女そのものでした。クルト・モルの騎士長はドン・ジョバンニの執拗な殺意により3度刺されて死にますが、刺された背中を壁に押し付けられた為か、白のカンバスにびっくりマーク「!」が血で描かれたのはちょっとした衝撃でした。白を基本とする舞台に強烈な蛍光が照らされ、フラッシュのように点滅したりと、視覚的にもドラマに応じたテンションの高まりを感じさせるステージでした。


第2場ではメラニー・ディーナのドンナ・エルヴィーラが登場し、レポレッロのカタログの歌は、エルヴィーラが回転舞台を歩きながら次から次へと登場するドン・ジョバンニに捨てられた女性達を見て驚く様を上手く描いていました。

第3場では、何と今日のモーツァルト・マチネでも歌っていたコジェナがツェルリーナで登場しました。それにしても良く歌えるものだと驚嘆。彼女は、昨年のナクソス島でのデッセイのように臍だしスタイルで、とてもセクシーな設定でした。ドン・ジョバンニがツェルリーナに迫る場面はオペラという枠を忘れさせるほどリアリティがあって、まさにドラマに熱中させる演出。"La ci darem la mano..."の二重唱はうっとりとするほどの美しさでコジェナとハンプソンの美声に釘付けとなってしまいました。また結婚式に臨む村人たちはアンダーウェア姿のモデル達でその状況設定もとてもユニークでした。第4場、第5場も回転ステージがアクセントを与えていてスピーディな展開にも効果的でした。



第2幕も回転体の基本ステージは一貫していて、白のカンバスに登場人物を浮き彫りとする手法は上手いと思わせる場面が連続しました。しかし第3場の終了時に一度幕が閉まった時にガタンという音がして、続いて防火幕が降りてきました。舞台セットに不都合が生じたようで、約10分近くはそのまま待機状態に。

無事に第4場が開始され、石像の場面はクルト・モルの大きなモンタージュ写真のようなスクリーンが奥に。黒のビキニ姿のモデル達に取り囲まれた騎士長はタキシード姿でとても貫禄がありました。さすがにモルの威厳さにインパクトを感じます。ドラマは求心力を一挙に高めながら幕切れに向けてどんどんと進む感じで、ドン・ジョバンニはレポレッロに刺されて死ぬという設定でした。



このように刺激的でシンプルな演出は極上の演奏とも上手くマッチングしていました。絶賛すべきはアーノンクールの指揮。彼には盛大なブラヴォーとブーイングが浴びせられていましたが、その生彩に満ちた音楽作りに大いに共感した次第です。比較的ゆるやかなテンポ運びでしたが、決して遅いということを感じさせない音楽の構築感と推進力に満ちていました。今日の席からは彼の激しいタクト捌きが克明に観察できましたが、大きな目で睨まれる怖さもさることながら、機敏かつきめ細かなタクトがオケとステージを完璧に一体にしていて、その興奮ぶりが視覚と聴覚によって押し寄せてくる感じでした。ちょうどゲルギエフの重厚さにラトルの躍動感をブレンドして、さらに抑揚を巧みにつけるといった感じでしょうか。

ヒンク率いるアンサンブルもウィーンフィルらしさを基本にしつつ、ホルンやティンパニを痛快に響かせる古楽風を織り交ぜながら、音楽的に随分と聞き応えがありました。バルトロメイのソロも絶妙で、マンドリンの調べがとても印象的でした。素晴らしい歌手達も大いにその演奏に煽られるかのように火花を散らす迫力。第1幕の幕切れの歌手達のアンサンブルも加速するテンポに思わず体が踊るかのよう。第2幕フィナーレの重唱も極致をきわめるといったところでした。ドン・ジョバンニは残忍な印象が強いためか、カーテンコール時のハンプソンへの喝采はやや低調。コジェナはさすがに大きな喝采で、ネトレブコはさらに上回る喝采。それほど彼女のアンナは素晴らしく、華奢な体からは信じられないほど声量豊かなに流麗なソプラノが響いていました。

オペラのプログラム冊子は今年からコンパクトなB5サイズに統一されて便利になりました。さて冊子には巻末に1920年から2001年までのドン・ジョバンニの演奏記録が写真とともに掲載されていてとても興味深いです。前回のプロダクションはルカ・ロンコーニ演出のもので、マゼール、ゲルギエフで楽しめたのが記憶に新しいところ。それは、祝祭大劇場を上手く使った巨大な舞台にドン・ジョバンニのスケール感に圧倒されたものでした。今回のステージは巨大ではあるものの、その大きさを感じさせることなく、まるで祝祭小劇場でモーツァルトを見ているような感覚にさせられたのが面白いところです。まさにそれはシャウシュピールを意識しているかのようでもあり、求心力に満ちていました。やはりザルツブルクのオペラは常に進化しつつ、とてもエキサイティングです。




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