Mozart Matinee
Marc Minkowski

Sonntag, 4. August, 11.00 Uhr
Morzarteum, Grosser Saal

Wolfgang Amadeus Morzart:
Schauspielmusik zu Thamos, Koenig in Aegypten KV 345
Sopran 1: Matina Jankova
Sopran 2: Magdalena Kozena
Tenor :Dietmar Kerschbaum
Bass :Anton Scharinger

Pause

Gabriel Faure:
Requiem op.48 in der Originalversion von 1893
Sopran : Magdalena Kozena
Bariton : Simon Keenlyside
Orgel : Anton Holzapfel

Dirigent: Marc Minkowski
Choreinstudierung : Alois Glassner
Salzburger Bachchor
Mozarteum Orchester Salzburg


今日の朝は昨夜から降り続いた雨で、気温もぐっと低く寒いくらいでした。ちょうど11時のマチネにかけては雨もあがり天気は回復。さて今日のモーツァルト・マチネはマルク・ミンコフスキが登場し、コジェナー、キーンリサイドがソリストという豪華さ。プログラムもモーツァルトの劇音楽「エジプト王タモス」にフォーレのレクイエムということで、例年のモーツァルト・マチネ以上に面白い内容でした。

エジプト王タモスは後の魔笛のモデルとなる作品で、エジプトの太陽神をめぐるドラマ。これに作曲された音楽は7つのパートに分れ、合唱、ソリスト、オーケストラが描く一大絵巻でした。冒頭の太陽を称える合唱からフィナーレの「塵の子」まで片時も耳を離せない緊張感と躍動感に圧倒さるばかり。特に第2番の間奏曲マエストーソ・アレグロはベートーヴェンのエグモント序曲を彷彿とさせるオーケストラの吹き上がりと重厚さ。転じて3番の間奏曲のアンダンテの優しさ。6番の合唱の昂揚感。7番a間奏曲の嵐の如く襲い掛かる迫力などなど。随所にミンコフスキの素晴らしいテンポ取りと機敏なタクトに感嘆するばかりでした。オーケストラもノン・ヴィブラートを踏襲しつつ、明快な響きに軽快な合唱を重ねるといった感じで、音響の素晴らしいモーツァルテウムを奮い立たせるといったところ。そして二人のソプラノ、ヤンコーヴァとコジェナーが際立っていたのも素晴らしい限りでした。第7番bではバスのシャリンガーが指揮台の横に進み、後のドン・ジョバンニの地獄落ちを連想させる歌を聞かせて、聴くものを圧倒しました。昨年のノイエンフェルス版「こうもり」でもミンコフスキ&モーツァルテウムが光っていたように、そのアンサンブルに改めて感心。それに珍しい作品ながら、こういった作品をモーツァルテウムで取り上げてくれたのはのも貴重です。

後半のフォーレ「レクイエム」は原典版(第2稿1893)による演奏でした。この版は紀尾井シンフォニエッタでも聞いたことがありますが、ヴァイオリンと木管が無いのが特徴。レイアウトは左手に4本の第1ヴィオラ、その左にハープ、その内側にホルン2本、右側は4本の第2ヴィオラ、後ろにコントラバス3本。中央に5本のチェロを配し、その後列には左からトロンボーン3本、ソプラノ、バリトン、トランペット2本を。さらに後列は合唱で、左手にコンサートマスターによるソロ・ヴァイオリンでした。フォーレのレクイエムは演奏時間が35分程度と短く、しかも比較的穏かな作風のためか、何時もあっと終わってしまう感じなんですが、本日の公演は逆に実にドラマチックでとても35分とは思えない密度の高さでした。

冒頭のIntroit et Kyrieの開始からして渋く重厚な弦と金管のハーモニーの充実。合唱の透明感がクリアーに響きわたって一挙に厳粛な趣に。次第に訪れる安らぎなど、実に起伏に飛んだ演奏で、作品全体に構築性を感じる解釈でした。特にOffertoireにおけるバリトン、Sanctusのハープとソロ・ヴァイオリン、Pie Jesuのソプラノが作品中盤における3つのコントラストを見せていて、演奏もSanctusを中心とした時間的対称を感じさせるかのようでした。キーンリサイドのバリトンは美しく端正で全体に見事に調和。そしてコジェナの神々しく美しい歌声は天使の如くといったところで、ハープもマンドリンを思わせる典雅さでした。後半部のAgnus Deiは天国的ながらも、ミンコフスキの雄弁な音楽作り顕著でした。次第に高まる昂揚とともに弦を大きくうねらせて、意外なほど長いパウゼを。そして荘厳なオルガンの響きと、次に訪れる清楚で神秘的な合唱が。このコントラストが絶妙で全てが活きてくるタクト運びでした。トロンボーンはLibera meの時だけ加わり、左側のホルン、右側のトランペットと共に木管の如く柔らかく渋い重厚感を醸し出していました。フィナーレのIn Paradisumは力強く展開してきたダイナミズムを静めるかのように、心が洗われる感動でした。3ヶ月ほど前に聴いた<a href="http://www.kiwi-us.com/~tujimoto/Text/ab2002/ab020430.html">ペレアスとメリザンド</a>も音楽が実にダイナミックだったように、今日のフォーレも単純なスコアから実に様々な要素を描き出して、全体としてハーモニーしていく様は驚くばかりです。今年秋のミンコフスキ&マーラー室内もとても楽しみです。



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