Opera Municipal Marseille
3 mai a' 20h 2002

Ariadne Auf Naxos
Richard Strauss
Opera en 1 acte avec prologue, Nouelle production

Direction Musicale Michiyoshi Inoue
Assistant Masahiro Sato
Mise en scene Charles Roubaud
Assistant Jean-Christophe Mast
Decors Jean-Noel Lavesvre
Costumes Katia Duflot
Lumieres Fabrice Kebour
Conception surtitres Karl Krieg
Rgie surtitrage Isabelle Julien
Ariadne Eva Johansson
Le Compositeur Marie-Ange Todorovitch
Zerbinette Sine Bundgaard
Naiade Ethel Cueret
Dryade Anna Agathonos
Echo Michelle Canniccioni
Bacchus Howard Haskin
Arlequin Jean-Francois Lapointe
Truffaldino Thierry Felix
Brighella Alain Gabriel
Scaramouche Georges Gautier
Le Maitre de Ballet Steven Cole
Le Professeur de Musique Jean-Marie Fremeau
Le Majordome Francios Castel
Le Perruquier Jean Vendssi
Un Officier Wilfried Tissot
Orchestre de I'Opera de Marseille



今日はナンシーを朝9時の列車で発ってパリ東駅に11時40分到着。三日ぶりのパリは超快晴で、爽やかな快晴がとても気持ちが良いです。リヨン駅に移動して13時20分のTGVでマルセイユへ向かいます。新幹線に比べてスピード感は無いものの、シートがゆったりと快適でした。途中はずっと霧と雨の草原地帯を走り、アヴィニヨン近くになってから晴れだしました。地中海近くはさすがに陽光が眩しいといった感じ。パリの出発が少し遅れたので午後5時にマルセイユに到着しました。

駅構内はゴミだらけで、街もパリに比べるとかなり危険な雰囲気です。アフリカに近い為か、頭に籠を載せている人々も見かけました。ある種の異国情緒満点ですが、それにしても街自体が落ち着かない雰囲気で、車の運転も荒っぽいです。今日のホテルは港の奥の高台にあるSofitel Vieux Port。とても良い環境で、このホテルのレストランから臨む港の景色は絶景でした。せっかくマルセイユまで来たので、岩窟王のイフ島にも行ってみたいところですが、時間もほとんどないので少し散歩してからオペラへ向かいました。



マルセイユ歌劇場は街中に取り囲まれた敷地に建つ立派なゴシック様式で、内部は円形ドームになっていて、どの席からも見易い構造。また大理石の壁がとても良い音響でした。座席は2階の最前列中央でした。

さて井上道義指揮のマルセイユ歌劇場管弦楽団は、アリアドネにあわせた小編成で、とても豊かな響きとともにR.シュトラウス特有の情感の高まりに満ちた演奏でした。歌手ではエヴァ・ヨハンソンのアリアドネが実に立派で、その性格描写もさすがのベテラン。風貌も若いときに比べると貫禄が出てきて、イゾルデなんかを聴いてみたいところです。マリア=アンゲ・トドロヴィッチは作曲家役で、バルツァを若くしたような感じで、やや声量が続きにくいのを除いては、見事な歌でした。驚嘆すべきはツェビリネッタを歌ったザイネ・ブントガルトで、その若く美しい容姿とともに、絶妙なるコロラトゥーラ。しかも単に技巧の披露ではなくて、全てにアリアドネに対する思いやりの心が篭っていて、コロラトゥーラの流れも全て心情が映し出されていました。もはや第2のデッセイではないかと思うほどでした。今日のバッカスはR.D.スミスがキャンセルとなり、黒人テノールのハワード・ハスキンが出演しました。ただし声量が苦しく輝かしいバッカスが聴けなかったのは残念です。しかし、全体のアンサンブルを含めてトータルバランスにおいて、これほど見事なアリアドネは本当に久しぶりです。



チャールズ・ロウバウトによる新演出もユニークで、冒頭は劇場の楽屋に設定をおき、清掃婦ふたりが掃除を始めるところからスタートしました。右手にリハーサル用のピアノ、左手には舞台セットのパーツが置かれ、天井には劇場の照明器具が。オペラとダンサーのふたつのグループに照明を当てて強調するなど随所に手のこんだ演出がなされていました。特に面白いのはプロローグ終了間際、アリアドネの背景となる幕と、間隔を空けて沙幕が降りてきて、登場人物たちをその間隙に浮き彫りにする場面。ここで照明が落とされプロローグが終わったと同時に、そのままオペラの場面がスタートしました。すなわち休憩なしの第1幕ものとして上演された訳で、集中力は俄然こちらの演奏スタイルが持続すると思います。

オペラの場面では青の海に島が描かれた背景に大理石の壁で囲まれたアリアドネの部屋。左手椅子に黒の衣装で悲嘆にくれるアリアドネに対して、右手の袖にツェビリネッタ。左手袖にハルレキン。中央奥にナイヤード、ドリヤード、エコーが黒の衣装で編物を始めていました。特にこの3人を見る限り、黄色の糸球を3つ転がしていて、神々の黄昏の3人のノルンたちを連想してしまいそうでした。アリアドを動かすきっかけはメイド風のこれら3人で、アリアドネが糸球を手にとって、エコーに糸を送り出す演出はとても印象的でした。アリアドネの歌に対して、やさしく見守るエコー達。こんなささいな演出が実に情感豊かなドラマを作っていて、アンサンブルの絶妙さにさらに味わいのアクセントを与えていました。バレリーナとなったツェビリネッタとハルレキンがカップルとなる場面では、スカラムッチョ、トルファルディーノ、ブリゲルラの3人もエコー達3人に迫りカップルとなってしまうのは印象的でした。残るはアリアドネで、バッカスとめでたく愛を共にする場面では、大理石の部屋が上昇して、背景には星空に、アリアドネを含めて5つのカップルがステージに登場するというハッピーエンドで幕となりました。実は、これで幕ではなく、突然、ステージ背景にセットされていた本物の花火に自動点火され、打ち上げ花火の録音テープとともに、ステージ全体が花火で輝きました。登場人物も背景の方を向いていて、そのシルエットがたまらなく美しいところで本当の終了となったのです。井上&NJPのアリアドネが今年秋にありますが、これほど見事なキャスティングと舞台を見てしまったからには、果たしてどうなるのでしょうか。今日も日本人の方を見かけませんでしたが、遠路はるばるマルセイユに来た価値は有り余るものでした。なおマルセイユ歌劇場管弦楽団の演奏でルチアーノ・パヴァロッティのコンサートが6月15日の21:30からあるようです。




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