OSTERFESTSPIELE
SALZBURG 2002


The Berlin Philharmonic
Jazz
 Group
Solist: Thomas Quasthoff


Samstag, 30. Marz Rockhouse, 21.30 Uhr


Adam Taubitz Violine, Trompete
Martin Stegner Bratsche
Wieland Welzel Vobraphon
Janne Saksala Kontrabass
Franz Schindlbeck Schlagzeug
Thomas Quasthoff Saenger

今日はマチネのプローベとヤンソンス&ベルリンフィルで大いに盛り上がってしまったが、21時半からはベルリンフィル・ジャズ・グループのコントラプンクテがある。特別ゲストとして、昨日素晴らしいファウストを歌ったトーマス・クァストホフが出演するとあっては見逃せない。会場となるロックハウスは、モーツァルトの住んだ家の裏手のLinzer Gasseをまっすぐ上り詰め、Schallmooser Hauptstrasseの46番地にある。歩いても行けるらしいが、よく分からないので、タクシーで行った。周囲は住居もない辺鄙な場所で、小さな建物がロックハウスだった。チケットは既に完売しているとのことであったが、当日券も売られていたようだ。

中に入ると赤く薄暗い照明の中、開場を待つ人で溢れていた。かなりの混雑の中、会場に入ると、そこはトンネル状のライブハウスといったところで、椅子が100席ほど並べられていた。前方ステージは段になっていて、色んな照明で照らされている。バー・カウンターもあるようで、ビールなどを飲みながら聴くのもOKのようだ。とりあえず席を確保できたが、半分くらいは座りきれず、左右の通路と後方に多くの方が溢れている。

それにしても、ザルツブルク音楽祭ではミュージカルを見たことはあっても、クラシック系音楽祭でジャズを聞くのは初めて。しかもベルリンフィルのメンバーということで興味は尽きない。メンバー達はネクタイにジャケット姿で登場し、ヴィオラのシュテクナーが冗談まじりの挨拶をした後、演奏に入った。彼らも先ほどのヤンソンス指揮の演奏で疲れているのではと思うが、とても楽しくジャズ演奏を展開する。最初トランペットを吹いていたタウビッツがヴァイオリンを弾き始め、極めてセンスの良いジャズが流れ出す。パーカッションのヴェルツェルのヴィブラフォーンは独特の音色が魅力的。ドラムを担当するシンドルベックは赤のTシャツに帽子を被っていて、完璧なジャズメンに変身といった趣で、彼らの抜群のリズム感によって生み出されるジャズも中々のものだと感心した。

さて驚くべきはトーマス・クァストホフの隠された才能。ジャズの名曲を次々と歌い、名ジャズシンガーの物真似が飛び出し、会場は大爆笑する。それだけでなく、信じられないかも知れないが、一人でコントラバスの音を発声し始めた。これにトランペットやドラムが加わり、立派なジャズアンサンブルが展開していく。さらに舌を上手く使ってカスタネットやパーカッションまでクァストホフの口から流れ出す。何と多彩なテクニックであろうかと驚くが、驚くのは未だ早かった。小さな手を口に当てて、トロンボーンの響きがクァストホフの口から鳴り出したのだ。これでベルリンフィルのメンバー達とアンサンブルを披露し、会場は大喜びの状態になった。1時間におよぶ大盛況のうちに前半を終えた。


20分ほどの休憩のあと、後半も前半を上回るノリの良さを見せた。さらにクァストホフ一人がステージに上がり、トロンボーンやパーカッションを口ずさんだかと思えば、突然ジャズシンガーとして歌を歌いだし、すぐさまコントラバスで超低音を奏でるといった具合に、超ウルトラCのテクニックを披露した。会場はびっくり仰天の大爆笑に包まれた。それにしてもクァストホフの声は素晴らしく響き美しい。昨日のファウストは芸術家であったが、今日のクァストホフは一流のエンターテイナーそのものであるが、彼は何をやっても天才的に技をこなし芸術の領域に高めるようだ。はっきりいってベルリンフィル・ジャズ・グループはクァストホフに乗っ取られたように感じるほど、彼の存在感は凄かった。2時間半におよぶ演奏が終了したのは午前0時半。帰りはタクシーが来なかったので、歩いてホテルまで25分ほど。それにしても今日は長い1日であったが、ヤンソンス&BPOの演奏会が色あせてしまうほど、今日のクァストホフのジャズが凄い演奏だった。再び彼のパフォーマンスを見てみたいものだ。







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