昨晩はドン・ジョバンニから帰ってきてから深夜3時まで起きていたが、さすがに到着日初日は眠い。それでも、明けて3/29はとても心地よい目覚めであった。今日はフランクフルト8:15発のフライトの為、ホテルの朝食もほどほどにして空港に向かった。チロリアン便は予定とおり飛び、澄み切った快晴の中、ババリアン・アルプスが綺麗に見える。定刻とおり着陸し、そのままタクシーに乗り込んだ。
それにしても空港から見えた景色は絶景。真っ青に晴れ渡った空にザルツカンマーグートの山々が白銀に輝き、鮮やかな新緑の草原が見事なコントラストをなしている。夏よりも数段美しく、天気も初夏を思わせる爽やかさ。
9時半頃にホテルに到着し、10時半にモーツァルテウムに向う。途中のミラベル公園も小鳥がさえずり、朝の空気がとてもフレッシュ。11時開演のコントラプンクテは8人のベルリンフィル・メンバーが構成するシャローン・アンサンブルの演奏で、指揮はBPOヴィオラ奏者のヘンリック・シェーファー。主にコンテンポラリを得意とするアンサンブルで、今日のプログラムもウォルフガング・リームとヨハネス・マリア・シュタウトの作品が選ばれていた。
リームはザルツブルク音楽祭やベルリンフィルのレジデンスコンポーザーを務めたこともあって、シャローンアンサンブルも彼の14作品ほどをレパートリーにしているようだ。ChiffreやPolといった作品はいずれも6人から8人の弦楽器、管楽器、打楽器奏者による室内アンサンブルで、個々の楽器の響きがモーツァルテウムに響き渡る時、空気までもが緊張に包まれ、聞くものの脳裏に刺激を与えてくれた。
これはひとえにベルリンフィルのソリストとしての卓越したテクニックと音楽性がベースになっているのが最大の強みになっている。ちょうどポリーニがシュトックハウゼンを弾くと、その卓越したテクニックと強靭な精神集中によって、バッハのように奥深く聞こえるのに似ている。
シュタウトのソプラノと6つの器楽のための作品は、マックス・ベンゼの詩を題材にした作品で、若手美人歌手のカロリーネ・シュタインが歌った。さすがに歌が入ると、一挙にコンテンポラリも近親感が増す。6つの詩からなっているが、3番目のテキストは詩という形をとっておらず、短い単語、ein,
ist, nu, nicht, oder, und, wird, mir, von, wenn, dass, dies,
ueber, etwas, noch, dannがランダムに図形を描くように並べられているだけ。歌そのものも、図形パターン上に描かれた単語をランダムに拾うかのように、歌い始められるといった演奏。断続的に空間へ放たれる言葉も楽器と同じく、ひとつのエレメントを成している点が面白かった。前半を終えた段階ではリームよりもシュタウトの方に音楽的興奮を感じた。
後半は前半に引き続き、シュタウトのIncipitというアルト・トロンボーンと5つの楽器による作品。ここではUwe
Dirksenの超絶技巧が素晴らしく、コンテンポラリがまるでバロック協奏曲のように聞くものを熱中させた。続いてリームのバリトンと八重奏の為の作品。マーティン・ブルンスのバリトンが朗々と響き、リームのシンプルな音響世界が極自然に語りかけてくる。やはりベルリンフィルが演奏すると、楽器の持ち味をフルに活かしていて、全体としてのハーモニーも素晴らしく、パウゼも空間に響く音楽として聞こえる。普段余り接する機会の少ないコンテンポラリも次元を超えた音楽として大いに聴き応えがあった。コンサートの後は、ベルリンフィルの部屋の最上さんご夫妻とランチをご一緒し、とても有意義な時間を過ごさせて頂き、ありがとうございました。 |