OPER FRANKFURT
Don Givoanni
Wolfgang Amadeus Mozart
28 March 2002, 19.30Uhr



Musikalische Leitung Paolo Carignani
Inszenierung und Buhnenbild Peter Mussbach
Kostume Joachim Herzog
Dramaturgie Veit Volkert
Chor Andres Maspero
Don Giovanni Umberto Chiummo
Il Commendatore Alexander Anisimov
Donna Anna Ricarda Merbeth
Don Ottavio Johannes Chum
Donna Elvira Emma Gane
Leporello Andreas Macco
Masetto Franz Mayer
Zerlina Britta Stallmeister
Cembalo Eleice Venanzoni
Continuo Violoncello Kaamel Salah-Eldin

今回は、アバドのパルジファルをメインにして、イースター音楽祭とミュンヘンのパルジファルを見ることにした。そして出発当日の3月28日、いつものように余裕を持ってスカイライナー1号で成田へ到着した。春休み中のためか、かなり混雑している。LHの搭乗受付は7:45開始で、これはスムーズにチェックイン。後はラウンジでゆっくりとインターネットに繋ぐ。また今回はホテルに5泊だけなので、手荷物だけにした。タキシードを持って来るべきかと迷ったが、今回は帰国後すぐに仕事に直行するので機動力を優先させることにした。フライトは往復とも1列目の窓側を予約できているので、ゆったりとできる。オーディオCHではフランツ・ウェルザー・メスト特集が面白かった。メストの指揮は勿論のこと、彼のセレクトも中々素晴らしい。子供のころ特に印象に残ったというシューベルトの白鳥の歌がトーマス・クヴァストホフの独唱で流れたが唖然とするほど素晴らしい。ますますアバドのファウストの情景が楽しみになってきた。お隣りの方もイースターを楽しまれるとのことで、話が弾む。熟睡モードに挑もうとしたが計算が外れた。


フランクフルト到着。乗り継ぎ便が無いのでとても楽だ。宿のシュイタイゲンベルガーには午後3時半には着いた。さてここで一休みしてから久しぶりにゲーテハウスに向かう。ホテルからはとても近いが、4時ちょうどに着いてみたところ、閉館時間だった。今回はファウストを聞くので、ゲーテの展示品でも見て気分を高めようとしていたところなので、少し残念。まだたっぷりと時間があるので、繁華街の中心部を歩く。とても活気に溢れていて、ベルリン以上に賑わっているように感じる。途中HMVがあったのでクラシックコーナーに行く。バーヨやゲオルギューの新譜が目に止まったが、あまり品数は豊富ではなかった。


さて今日のオペラはドン・ジョバンニ。演出はあのペーター・ムスバッハということで興味津々。オーパー・フランクフルトもホテルから歩いて数分の近さで便利だ。間口の広い近代的な作りで、ロビーがゆったりしている。カフェもテーブルが沢山あって便利。開演は19時30分からとなっているが、今日は10分遅れで始まるとのこと。で、劇場内部は馬蹄形になっていて、とてもコンパクトだ。あのチューリヒよりキャパが小さいため、音響はさぞかし素晴らしいと期待する。オーケストラはサントリーホールのホールオペラに近いレイアウト、後方に山のようなステージが組まれている。さらにその後方には四角い赤のスクリーンが掲げられている。指揮者カリニャーニが颯爽と登場し、すばやく序曲が鳴り響いた。が、思ったほど音が響かない。ホールの音響がデッドであることと、どうもオーケストラが微妙に揃わない為に響かない感じがする。それでも歌手達が登場してからは、ぐっとオペラらしくなる。


ムスバッハの演出によるステージはザルツブルクなどで見るようなスペクタクルさは無いものの、フランクフルトのサイズにあった舞台づくりを見せる。全体にシンプルで四角くキュービックな空間はハンブルクで用いるコンヴィチニのコンセプトに近い感じ。色彩感も統一性があって、照明も真っ赤からブルーに変わったり、ゴールドに輝いたりする。ドン・ジョバンニとレポレッロが衣装を取り替えてエルヴィーラを呼び出す場面では、とてもシンプルな矩形のオブジェが林立して、エルヴィーラの家を表現したりと、きわめて象徴的な表現が全体を引き締める。面白いのは、ドン・ジョバンニの黒の衣装に対して、レポレッロのオレンジ色の衣装。単に衣装の対比だけでなく、二人は対極関係にあるかのように、常に対象系の動きを取る。二人が登場するときは矩形のステージの左の扉が開いて、レポレッロが。同時に右側の扉が開いてドン・ジョバンニが登場し、二人は主従の関係というよりも、対等の立場で物語が進む。このあたりに、ムスバッハのドクター・ファウスト、ファウストとメフィストの関係に近いと直感するものがあった。状況設定も自由な趣向が凝らされていて、騎士長の石像が登場する場面では下にドン・ジョバンニとレポレッロが左右に配置され、三角形を描くかのように、頂点に石像が登場する。しかも下からは遠近法で描かれた自動車道路が上に伸びている。まさに車の走っていく先に石像がいる訳で、かなりの威圧感を生み出していた。歌手たちについてはアンドレス・マッコ意外は殆ど知らない人ばかりで、正直、あまり歌が上手いという感じではない。むしろオペラというよりもシャウシュピールであることを訴求しているようでもあった。モーツァルト時代の古きよき時代の人々の娯楽が今もフランクフルトでは極日常的に楽しまれていることを感じた。そういう意味でもムスバッハはザルツブルク音楽祭などのような大げさなアプローチではなく、その劇場ごとに合ったステージを目指しているのが面白いと思う。

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