Epilogue

●春のワーグナー・ラッシュ/エピローグ

◆まとめ
昨日のパルジファルは今回の旅を締めくくるに相応しい内容だった。シューラーの演
出はヴィーラント・ワーグナーの象徴主義を今に残すかのように、照明技術を駆使し
て神秘的な舞台を作っていた。そういえばウィーンで見たエヴァーディング演出のト
リスタンもヴィーラントの影響を受けているようだし、このことはジュネーヴのジー
クフリートにも当てはまっていた。さすがにヴィーラントの残した影響は大きく、そ
のシンプルさがドラマをくっきりと浮き彫りにするというコンセプトは永遠不滅を思
わせた。

クプファーのオランダ人も彼らしい大胆な舞台が印象的だったし、オランダ船など直
線的表現が見ものだった。これらの演出はいずれもオーソドックさを基本としている
が、唯一コンヴィチニのローエングリンは鬼才を放っていた。小学校という読み替え
でワーグナーの作品を身近な現実世界に写しかえることの見事さ。一見パロディ風な
がら実に真理をついた解釈だった。それにこの奇抜な舞台に負けないくらいに素晴ら
しかったのがメッツマッハーの指揮だった。ここまで徹底的に考え抜かれた演出と完
全燃焼の演奏を越える上演が今後果たして可能だろうかと思わせた。

ビシュコフのトリスタン、ジョルダンのジークフリート、ブルニエルのパルジファル
の指揮も素晴らしかった。今回の旅でもいろんな歌手たちを聴けたが、グルベローヴ
ァを筆頭にマイヤー、アンソニー、ブラウン、シュトルックマン、ドーメン、モーザ、
フィンケ、コヴァルスキーらが素晴らしかった。ちなみに来年5月のバスチーユでは
ドーメンとアンソニーのオランダ人があるようで、彼ら二人のワーグナーに今後と
も期待が持てそうだ。

それにしてもこの5月はワーグナーが他にも沢山ひしめきあっていた。5/1だけで
もドレスデンのマイスタージンガー、ケムニッツの黄昏、ミュンスタのジークフリー
ト、チューリヒとDOBのオランダ人など。日程を上手く工夫すればヴィースバーデ
ンのタンホイザーやプラハのトリスタンなども見れたかも知れない。とにかくワーグ
ナー7演目も可能だったように思う。それにウィーンのパリアッチは最初から外すべ
きだったと後悔される。そうすればもっと多彩なプログラムになっただろうと・・・

◆帰国
かくして春のワーグナー・ラッシュを無事に聴き終えることが出来て何よりだった。
旅行中はルフトハンザのストもあったようで、もし衝突していれば予定演目を見るこ
とも危ういところだった。それにしても最近のフルとハンザはやや時間にルーズなよ
うだ。知人の方からも30分以上の遅れがとても多いと聞く。街から街へ際どいタイ
ミングで飛び歩くには今後注意すべきか。日本への帰国便LH710の搭乗も30分
ほど遅れた。アナウンスによればビジネスクラスにかなりのオーバーブッキングが生
じた為で、エコノミーもしくは後の便への振り替え作業中だという。エコノミーへの
振り替えにはマイレージを1200マイル貰えるらしいが、アップグレードの4万と
比べれば引き合わないのでは。小生はファーストクラスにアップグレードしておいた
ので、このトラブルには巻き込まれずに済んだが、最近のLHに疑問を感じることが
多い。

帰国便ではパーソナル・ビデオで「トルコのモーツァルト」というドキュメンタリを
見た。チャールス・マッケラス指揮スコットランド室内管弦楽団の演奏で、キャスト
はグローヴスやランカトーレなどザルツブルク音楽祭での後宮とほぼ同じメンバーが
出演している。実際にトルコでロケしながら後宮のオペラが繰り広げられるといった
もので、インタヴューをまじえて面白い内容だった。食後は熟睡モードとなり、目が
覚めると到着2時間ほど前だった。

◆来シーズン情報


旅行中に買ったオペルン・グラスとオペルン・ヴェルトの5月号では来シーズンの劇
場プロの一部が紹介されていた。ワーグナーだけでも既に下記のようなスケジュール。

(ミュンヘン)
ラインの黄金(ヴェルニケ演出メータ指揮24.2.2002)
ワルキューレ(ヴェルニケ演出メータ指揮30.6.2002)
(インスブルック)
トリスタンとイゾルデ(ファッスベンダー演出16.9.2001)
(ケムニッツ)
ワーグナー『恋愛禁令』(ハイニケ演出バレッツァ指揮15.6.2002)
ワーグナー『リング』 (ハイニケ演出/第1チクルス 24.26.29.3,1.4.2002
                    第2チクルス 5.7.9/11.5.2002)
(ヘルシンキ)
 ワーグナー『リング』(セーゲルスタム指揮第1チクルス 7.11.19.26.8.2002
                     第2チクルス 29.31.8,2.6.9.2002)
(キール)
 ワーグナー『リング』(キルシテン演出第1チクルス 11.21.25.11, 11.12.2002
                   第2チクルス 5.7.13.23.3.2002)
(バルセロナ)
 ネーデルランドオペラ公演キルヒナ演出「トリスタン」( 11.15.18.20.22.26.28.
                         30.6.2002, 2.4.6.8.7.2002)
 ラインの黄金(リセウ劇場 2.10.15.17.25.6.2002)
 ワルキューレ(リセウ劇場 18.21.25.3.2003, 4.7.13.19.22.27.6.2003)
 
(ザンクトペテルスブルク)
 ワルキューレ(ゲルギエフ指揮ピルツ演出 6.19)
(チロル音楽祭)(クーン指揮 7-29.6.2001)
 ワルキューレ/フィデリオ/マーラー8番/モーツァルト・レクイエム

ほかにもミュンスター、ボン、マンハイム、シュトゥットガルト、ハンブルク、チュ
ーリヒほかメジャー劇場のワーグナーが加わると来シーズンもかなり多彩なプログラ
ムとなりそうだ・・・