Wiener staatsoper
samstag, 5. mai 2001, 17.00 Uhr
Tristan und Isolde
von Richard Wagner

Dirigent Semyon Bychkov
Inszenierung August Everding
Spielleitung Angela Zabrsa
Ausstattung Guenther Schneider-Siemssen
Chorleitung Ernst Dunshirn
Tristan Goesta Winbergh
Koenig Marke Matti Salminen
Isolde Waltraud Meier
Kurwenal Peter Weber
Melot Geert Smits
Brangaene Mihoko Fujimura
Ein Hirt Herwig Pecoraro
Stimme des Seemanns Michael Roider
Steuermann Wolfgang Bankl
Orchester und Chor der Wiener Staatsoper
Buehnenorchester der Wiener Staatsoper


今日も快晴の天気でどこかへ出かけたくなるがオペラの連続に朝はゆっくりしたい。
ということで昼からは近場をショッピングでもしようかと思ったが土曜で余り店は開
いていない。そういえば昨日、ケルントナーのEMIでハインツ・ワルベルクが指揮
したパルジファルとゲルギエフのヴェルレク新譜をゲットしたのであった。この店は
やはり品数が少なくてベルリンなんかと比べると高い。

路を歩いているとエルグレコ展のポスターが目にとまった。美術史美術館で開催され
ているようなので、これも本当に久しぶりに足を運ぶことにした。マリア・テレジア
像の北側の建物が美術美術館ではなかったかと記憶しているが、エルグレコ展は像よ
りも南側の建物(博物館のほう)で開催されているようだ。で、入ってみることにし
た。会場は幾つかに分かれていて薄暗い館内にエルグレコが幾つも展示されている。
かなり大きなキャンパスに描かれた絵が多いようで、とても迫力があった。そうこう
しているうちにエルグレコではなく、美術館所蔵のコーナーを何時の間にか歩いてい
た。ほどほどに切り上げてランチに行き、そのままホテルに戻り休憩する。とにかく
今日は17時開演と慌しい。

今回のトリスタンはかなり前のエヴァーディング演出によるもの。第1幕は大きな帆
を強調した舞台で夜明け前の薄暗さが広がる。第2幕は薄暗い夜の森に木々のシルエ
ットが林立する。第3幕は大きなU字地形の荒れた城。U字に囲まれた空が薄暗い。
というふうにトリスタンとイゾルデは概ね暗い情景と幻想的な照明効果で上演される
ことが多い。むしろこういった暗闇の方が音を通して押し寄せてくる陶酔に浸りきれ
るように感じる。

登場したビシュコフはかなりの貫禄。起伏の大きな指揮ぶりでウィーンフィルをぐい
ぐいとドライブしていく。その音楽はとても深みがあって良く鳴る。その為か序曲は
無限旋律の流れに吸い込まれるようにのめり込んでしまった。

第1幕からマイヤーのイゾルデに釘付けとなるのは勿論のことフジムラのブランゲー
ネも大変素晴らしかった。最初はやや声量不足かと感じたが、危惧することもなく次
第にマイヤーと対等に白熱度を増してくる。ヴィンベリのトリスタンも端整で輝かし
いが歌に伸びが無いのが残念。それにしても第1幕はエヴァーディングの無駄のない
人物配置や演出がとてもすっきりとしている。今でも彼の演出は不滅と実感できた。

第2幕は陶酔の世界に没頭する場面で、最も期待する幕のひとつ。さすがにマイヤー
はここでも圧倒的なイゾルデを聞かせる。トリスタンも大いに昂揚するがブランゲー
ネの語りかけが全く素晴らしかった。そして昨年ザルツブルクでも同じマルケを歌っ
たサルミネンの存在感は素晴らしい。マルケ王の深々とした嘆きに心を動かされた。

第3幕ではさすがにウィーンフィルの深い響きの前奏から愛の死に至るまで第2幕と
同様に金縛りのような集中力と緊張感に身動きが出来なかった。ウェーバーのクルヴ
ェナールにはさほど印象を受けなかったが、やはりビシュコフの演奏がすこぶる雄弁
で陶酔に引きずり込んでしまう。今日の座席は3列目の中央部であったためか、ビシ
ュコフの発する大きな気合、唸り声にハッとさせられる場面もあり、最高の臨場感に
マイヤーの怒涛の愛の死に浄化される感じだった。キッヒュルを中心にほぼウィーン
フィルのメンバーで臨んだ会心のトリスタンとイゾルデだった。昨年ザルツのマゼー
ルとはまった異なった雰囲気ながらもビシュコフの凄さに驚いた。

カーテンコールも昨日のグルベローヴァに比べても勝るとも劣らない喝采を受けたの
は当然のことながらマイヤー。彼女のイゾルデ、昨年のザルツブルクでも凄かったが、
ここウィーンでも熱狂に至らしめた。ヴィンベリ、フジムラ、サルミネンも勿論大喝
采を受け、ビシュコフが出てきた時はことのほか拍手が大きくなる。延々20分ほど
の喝采に今日の余韻が何時まで続くかのようだった・・・