Komische Oper Berlin
Montag, 30.April 2001, 19 uhr
SAUL
Oratorium in drei Akten von Georg Friedrich Haendel


Musikalische Leitung Alan Hacker
Inszenierung Anthony Pilavachi
Buehnenbild Dieter Richter
Kostueme Jutta Delorme
Lichtgestaltung Franck Evin, Anthony Pilavachi
Choreinstudierung Peter Wonder
Musikalische Studienleitung Dietrich Sperenger
Dramaturgie Franz-Peter Kothes
Saul Raimund Nolte
Jonathan Florian Mock
David Jochen Kowalski
Merab Brigitte Wohlfarth
Michal Sabine Passow
Die Hexe von Endor Guenter Kurth
Hoherpriester Neven Belamaric'
Der Geist Samuels Neven Belamaric'
Ein Amalekiter Peter Renz
Das Volk Israel Chorsolisten der Komischen Oper Berlin
Miniser, Frauen Schauspieler Kleines Fach
Ehrengarde Sauls Kleindarsteller
Orcheser der Komischen Oper
Cembalo Ulrike Grapentin
Solo-Violoncello Hans-Joachim Scheitzbach
Harfe Regina Herwig


今日のベルリンは昨日から一転して急に夏日となった。超快晴の青空に輝く太陽がじ
りじりと焼き付けるような感じ。もっとも日陰に入れば、とても爽やかで、ようやく
春がやってきたよう。宿の周囲にはソニー・センターやクライスラービル街が立ち並
び、クーダムに次ぐ賑わいを見せている。今日は久しぶりにKaDeWeに出かけた
が、メーデー前日ということもあってか、人人で溢れている。CD売り場にていろい
ろと探しものをするが、品数はさほどでもない。一応、カール・ベームの1956年
ナポリ公演のタンホイザーに、クレメンス・クラウスの「ラインの黄金」などをゲッ
トした。何でもタンホイザーにはビルギット・ニルソンも出ているようなので楽しみ
だ。

さて今日のオペラはヘンデルのサウル。実はこれはオペラではなくてオラトリオが原
曲。コミッシェ・オーパーでは、これをオペラ形式として上演したことで話題となっ
たようだ。1999年5月のプレミエで、既にレパートリーとなっているが、これは
是非見たい公演のひとつ。物語は、旧約聖書のサムエル記に基づいており、あのサウ
ルとダビデの下りがコンパクトにまとめられている。簡単なあらすじは下記のとおり。

第1幕はダビデがゴリアテを倒して凱旋してくるところから始まる。その功績により
サウルに仕え、サウルの息子のヨナタンもダビデの友となる場面が続く。高まるダビ
デの人気にサウルが嫉妬し、怒りへと換わり行くのも、この第1幕で、ヘンデルの劇
的な音楽がことのほか素晴らしい。

第2幕では、サウルがダビデを殺そうとするので、ヨタナンがサウルの怒りを静め、
サウルもダビデに娘のミカルとの結婚を許す。実はサウルはダビデが戦死することを
密かに望んでいる。これにサウルの長女メラブの下りも加わって複雑な人間模様が描
かれる。いろいろあってサウルは、ダビデに傾倒する息子ヨナタンを殺してしまった。

この波紋は大きく続く第3幕では、イスラエルの民と神はサウルを見放してしまう。
そして預言者サムエルの亡霊がサウルの最後を告げる。さて戦場から戻ってきたダビ
デはヨタナンとサウルの死に驚くが、ダビデがイスラエルの国王になることに決まり、
盛大に物語が閉じられる。

ということでオラトリオといっても多分にオペラティックな内容のためか舞台作品と
しての上演は何の違和感も無かった。まず舞台はSAMUELの文字が彫刻された大理石の
ような壁が幕として降りている。序曲の開始とともに、イスラエルの司祭や子供の頃
のサウル、ダビデが現れ、簡単なパントマイムが演じられる。序曲の中盤で大きくな
ったサウル、ダビデほかの人物がまたパントマイムを演じる。そうこうしているうち
に、梯子をもった役人たちが登場して、梯子にのってまるで工事を行うかのようにSA
MUELのレリーフ文字のMとEを取り外した。なんと舞台の壁はSAULとなった所で序曲が
終わった。

意表をつく幕開けとなったが、大きな壁は舞台の真中くらいまで上がる。舞台の下半
分はスリット状の洞窟のようになっていて、イスラエルの民がダビデの帰りを待つ場
面。そこへゴリアテの首をかかえたダビデが登場し、ヘンデルの壮大な音楽が鳴り響
く。まず合唱がとても素晴らしい。狭い劇場が狭しといわんばかりに豪快に響くのは
爽快だし、軽快な古楽風アンサンブルとともに活気のよさを繰り広げる。次に幕が全
て上がったところで、サウルが支配する上流階級の世界が現れた。すなわち舞台は2
層構造になっていて、下半分がイスラエルの民衆。上半分が支配者層で、19世紀風
の晩餐会の真っ最中であった。第1幕から第2幕までは上記の2層構造の舞台で、第
3幕では放射状にひろがるキュービックな空間でドラマが演じられた。なおこの幕間
ではSAULのレリーフ文字がDAVIDに取り替えられる。

音楽はレチタティーヴォとアリアというパターンで進むが、こういったモダンな舞台
で聞いていると、バロックを忘れて、現代のドラマを見ているような気分になってく
る。楽器も鐘の響きに音階をつけたようなチェンバロのようなものが用いられたりと、
響きのひとつひとつがとても楽しい。サウル役のノルテは貫禄の長身で、暴君へ変身
する過程を上手く描いていたし、歌に強さがあって、役柄にぴったり。コヴァルスキ
のダビデは、心地よく響くカウンター・テナーに酔ってしまいそう。サウルに対して
ダビデの強さを見せつけるあたりなんかは凄い自信に満ちた演技だった。ということ
で、音楽・舞台ともにTVを見ているようなリラックスさでヘンデルの素晴らしさを
楽しませてくれた。今回の旅ではヘンデルのリナルドやアリオダンテなんかも見たか
ったが、こういった珍しい演目も日本でも頻繁に上演されることを願うばかり。