Wintertraume / Musikverein
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Beethoven-Zyklus / 5.Konzert
Freitag.23.Februar 2001, 19.30 Uhr
Grosser Musikvereinssaal

Berliner Philharmonisches Orchester
Dirigent
Claudio Abbado
Solist
Maurizio Pollini, Klavier

Ludwig van Beethoven:Konzedrt fuer Klavier und Orchester Nr.5 Es-Dur, op.73
Pause
Ludwig van Beethoven:Symphonie Nr.6 F-Dur, op.68


●日記編(2/23)

昨年、アバドBPOの来日公演は近年稀にみる素晴らしさだった。1月に放送された
ヴェルディ/レクイエムでもアバドの回復振りが確かなものと確認でき、コンサート
に行かれた方からの情報でも、アバドの気迫が伝わってくるのが嬉しい。そんな中、
やはり2月のウィーンでのベートーヴェン・チクルスはどうしても行きたい。が、勤
め人にとって長期休暇は不可能。それにブーレーズ&ウィーンフィルのマーラー3番
が同じ日に聴けるとなれば、どうしても行きた〜い。という訳で短期決戦にてアバド
の田園と第九、それにマーラー3番に臨むことにした。

本当は2/25のラトル&ネーデルランド・オペラのトリスタンも見たかったが、出
遅れたためチケットは完売。もっとも当日並べばゲットできる可能性はあるものの、
リスクを負ってAMSに飛ぶのは躊躇われた。パリではドミンゴのパルジファルもあ
るようだが日程が合わない。やはり2/25はマーラー3番をもう一回聴いて、つい
でにNTOと仮面舞踏会にした。来週火曜の帰国日はそのまま仕事に行くことに決め
た。これならば何とか休みが取れる・・・

そして待ちにまった日の前日。こんな時に限っていろいろ忙しい話が舞い込んでくる。
結局、仕事から帰えるのが遅くなってしまった。とりあえず休みは取れることになり
一安心する。しかし朝5時前に起きるのがとても辛い。そんなことは行ってられない
と気合を入れて起床。5時半の電車で渋谷に出て銀座線で6時ちょっとに上野に着く
予定。が、居眠りのため上野を通り過ぎてしまった^^;;
電車で引き戻る時間は無い。大急ぎで地上に出てタクシーを捕え何とか6:30のス
カイライナー1号に間に合いホットする。ちょっとしたハプニングだったが危ないと
こだった。

成田到着後すぐに搭乗手続きを済ませ、まずはANAラウンジで一休み。なぜかドイ
ツ人が沢山居られ日本人は居なかった。空いているブースに落ち着き、メールのチェ
ックをする。最近はパソコンでインターネットや仕事をやっている方が多いためかラ
ウンジはパソコンブースが充実している。10:50発LH711便でもいたるとこ
ろでパソコンを開いている方が多かった。食後は小生もパソコンを取り出しマーラー
3番のMP3ファイルをクリックした。実に良い音楽だと聞き入る。音楽を聴きなが
ら作業をやっているとバッテリーの消耗を心配するところだが、座席シートにACア
ウトレットがあるので心配無用。

パソコンに飽きたところで音楽放送を聴くことにした。チャンネル1ではワルター・
ウェラー特集が組まれていた。中でもフルトヴェングラー&ウィーンフィルのワルキ
ューレのさわりの部分が素晴らしい。チャネル2ではハンナ・チャンのコンチェルト
が良い。チャンネル3ではキリ・テ・カナワの美声に酔う。ビデオも何チャンネルか
替えて見たが面白くない。やっぱり一眠りすることにした・・・フランクフルトでの
乗り継ぎも40分程度の待ち時間とスムーズに進む。ウィーンへのフライトは満席だ
ったが無事予定時刻に到着。そして6時前にはANAグランドにチェックインし19
時半のコンサートには余裕だ・・・

●演奏会編

ウィーンに向かう途中、意識が朦朧としていたが、コンサートに向かうと俄然気合が
入る。アバドBPO+ポリーニなんていうコンサート、日本だったらチケット代幾ら
になるのか想像出来ないが、1170シリングでとても良い座席で聴けるのだから何
とも嬉しい限り。それに演奏会前からムジークフェライン周辺に熱気が漲っている。
やはり今日はただのコンサートではないのだと興奮してくる。

満席のムジークフェライン、ポーディアムの観客に取り囲まれたベルリンフィルはか
なりの小編成のためか演奏前は余り目立たないが、勢ぞろいするとさすがにその存在
感は只者ではない。コンサートマスターのシュタープラヴが登場した。隣りが安永。
ヴィオラの最後尾には土屋。フルートには日本人女性の方が。小生気がつかなかった
が、田園の時にはヴィオラの第1プルトに清水さんが居られたとか。最近、日本人の
方の活躍が目覚しい。そしてポリーニとアバドの登場。始まる前から凄い大喝采で一
気に気合が入る。痩せていたアバドはもうすっかり回復している。

第一楽章、トゥッティの響き。ムジークフェラインにベルリンフィルの爽快な響きが
包み込む。と同時にポリーニの端整なピアノが響き渡った。何と言う素晴らしさなの
かと最初の数小節で圧倒されてしまった。フィルハーモニーで聴くベルリンフィルと
は赴きが異なるものの、ムジークフェラインだと軽やかなサウンドに潤いが増したよ
うな感じがする。アバドの積極的で精力的な指揮ぶりも完全に復活を告げている。と
いうよりは病後のハンディキャップをものともしないで、益々輝いているといった方
が良い。オーケストラ・パートのみの時にはポリーニもアバドをしっかりと見据えて、
その指揮ぶりに鼓舞されているご様子。そして華麗なピアノがオケと一体となる。随
所に緊張感とインスピレーションに溢れている。特に各主題の展開部、再現部での鮮
やかさといったら言葉に出来ないほどに見事だ。第1ヴァイオリンが奏でるアンサン
ブルにもアバドの意思が乗り移り、ハットするような瞬間の閃きが音となる。低弦の
歯切れの良いアンサンブルがリズミカルな興奮を生み出し、これら全てがポリーニの
ピアノとハーモニーする。かつてこれほどの皇帝を聞くことが果たして出来ただろう
か?アバド&ベルリンフィル特別演奏会にてブレンデルの皇帝を聞いたことがあった
が、あの時よりも今日の方が確かに素晴らしいと思う。第2楽章の透明な世界、そし
て興奮のフィナーレで会場は怒涛の喝采となった。

アバドBPOの田園は昨年5月の定期と11月の日本公演に引き続き、今日が3度目
となる。結果からいって今日の演奏が最も素晴らしかった。というよりかは毎回アバ
ドの演奏が固定パターンではなくて常に前進があるように感じるのだ。第1楽章の長
閑さも単に田園情緒の雰囲気に留まらない。もちろん伸び伸びと自由に広がる田園情
緒にはちがいないけど、第2楽章で一気にピアニッシモにすることで、ベートーヴェ
ンが我を忘れて物思いに耽る瞬間が感じられるように思えた。そして超ピアニッシモ
から我に帰り、ふたたび田園の風景を楽しむかのように、そこには心情豊かなドラマ
があるように思えた。

第3楽章、農民たちの踊りの場面も単に踊り以上にドラマチックな展開を聞かせる。
付点スタッカートのフレーズは今まで聞いた2度の田園とはまた違っていて、おもわ
ずそのインスピレーションの素晴らしさに驚いてしまった。何も奇抜なことをしてい
る訳でもないが、アバドの解釈は凡庸とはほど遠く常にフレッシュなのだ。踊りの場
面でのホルンの歯切れの良さもムジークフェラインを駆け抜けていく。まるで狩の場
面のホルンを思わせるかのように。

そして嵐の到来。ここはティンパニとブラスが最も迫力を出すところで、ここでもム
ジークフェラインの響きがプラスに働く。フィルハーモニーを大音響で駆け抜けるベ
ルリンフィルの機動力は第九、マラーやブルックナーといった大編成に聴くことがで
きるが、小編成のベルリンフィルはむしろムジークフェラインがぴったりのように感
じた。特にフィナーレにおけるチェロの歌いまわしの素晴らしさ。素晴らしいサウン
ドが雄大に響く。まさにフィナーレは豊かな楽想が沸き起こる演奏で大いに昂揚した。
そして静けさに終わり行く余韻の素晴らしさ。もちろんこれからスタンディング・オ
ベイションが延々と続く。すごい熱狂だ。オケが下がってから4回くらいアバドが登
場し、元気な姿で喝采を浴びている姿が何とも嬉しい限り。アバドは今、もっとも燃
焼し輝いているように感じられた。

ベートーヴェン・チクルスを最初から聞かれている方のお話では、演奏の密度の高さ
は驚くほどで、特に第5交響曲は凄かったとのこと。チクルス全部聴かれるかたが本
当に羨ましい限り。小生も今日1回のコンサートの充実ぶりに驚いている次第・・・
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