08/04 ザルツブルク音楽祭『魔笛』
●WOLFGANG AMADEUS MOZART
DIE ZAUBERFLOETE KV620
Mittwoch 4. August 1999, 19.00 Uhr
Musikalische Leitung : Cristoph von Dohnanyi
Regie, Buehnenbild, Kostume : Achim Freyer
Licht : Kurt-Ruediger Wogatzke
Dramaturgie : Klaus-Peter Kehr

Sarastro : Franz-Josef Selig
Tamino : Michael Schade
Sprecher : Wolfgang Schoene
Priester : Thomas Mehnert
Priester : Johannes Kalpers
Koenigin der Nacht : Laura Aikin
Pamina : Dorothea Roeschmann
Erste Dame : Elzbieta Szmytka
Zweite Dame : Norine Burgess
Dritte Dame : Natela Nicoli
Papagena : Olga Schalaewa
Papageno : Matthias Goerne
Monostatos : Andreas Conrad
Erster geharnischter Mann : Guy Renard
Zweiter geharnischter Mann: Stanislaw Schwets
1. Sklave : Henryk Antoni Opiela
2. Sklave : Lajos Kovacs
3. Sklave : Pavel El-Hamalawi
Drei Knaben : Solisten des Toelzer Knabenchores
Wiener Philharmoniker
Konzertvereinigung Wiener Staatsopernchor
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今回の魔笛は2年前のアヒム・フライヤー演出の再演となる。演奏もドホナーニ指揮ウィーンフィルは変らず。会場はフェルゼンライトシューレからメッセ・ツェントゥルムに移り、特設の魔笛ホールで上演されることとなった。メッセはザルツブルク市内から北にザルツァッハを遡ったところにあり、バスかタクシーで行くことになる。ペルナー・インゼルへは音楽祭事務局がバスを運行するが、メッセへはそういったサービスは無い。今回は子供も会場に入ることが出来、家族そろってマイカーでという方が多い。従って会場近くは渋滞している。

メッセは魔笛一色に塗り替えられており、まさに魔笛専用。これが結構立派なもので、エントランス内部は広々としている。数カ所にカフェも設営され混雑は緩和されている。劇場内部はやはりサーカス一座よろしくのカーテンで覆われたセット。ステージの円形舞台は前方に傾斜し、客席もそこを中心に段々畑の勾配が後方に向って伸びているといった有様。

座席は1列目の中央だった。ここからだとサーカス小屋の円形舞台の様子を隈なく見ることができる。先ほどモーツァルテウムで見かけたヴェヒター氏は第2ヴァイオリンのトップに就かれていた。コンサートマスターは先ほどのヒンク氏から若手ゲーデ?に交代。

今回の演出も前回と同様、少し煩いのは変わらず。ただ今回は演奏がすこぶる良かったことが最大の収穫だ。2年前はドホナニの指揮が冴えなかったのか、貧弱な響きだったが、今回は素晴らしいサウンドだ。生き生きとした快適なテンポ、ウィーンフィルの洒落た歌いまわしが魅力的。

キャスティングではシャラエワのパパゲーナ、ゲルネのパパゲーノは前回と同じ。夜の女王はデッセイからアイキンへ、ザラストロはパペからゼーリヒに、パミーナはマクネヤーからレッシュマンに代った。概ね歌手達の出来映えは好調で、中でもアイキンの夜の女王のアリアは見事だった。そういえばアイキンもレッシュマンもリンデン・オーパーで活躍している歌手達だ。

フライヤーの魔笛を見るのはは2度目だから、今回は細かな点まで観察することが出来た。パパゲーノが乗っている自転車には何と人が入っていて操っていることが分った。それに第1幕でタミーノが額縁でパミーナの姿が写る場面は、この額縁の裏に、ステージ底からパミーナが頭を出す仕掛になっていた。

前回は相撲取りの演出が不評を浴び、プロダクション途中からカットしたようだが、今回の魔笛では噂の黄色と赤色の相撲取りが幕間に現れた。黄色がザラストロ、赤色が夜の女王。赤の相撲取りはブラジャーをしていて三日月を掲げているのが滑稽だ。それに今回は、パパゲーナとパパゲーノがステージ上のプールで水遊びするという演出が追加されていた。

フィナーレではザラストロと夜の女王の両陣営の合唱がが左右に別れて、旗を振り両者引き分けという演出で終る。これに似た幕切れはリンデンオーパーの魔笛が思い起こされる。夜の女王が滅びるのではなく、ザラストロと和解するという解釈だ。カーテンコールは盛大な喝采となるが、とにもかくにもオーケストラ、歌手、合唱がいずれも質の高い演奏を披露したためだろう。演出についても2年前の拒絶感は感じられず、むしろドホナーニの手堅い指揮も印象的であった。