08/04 ザルツブルク音楽祭『ムーティ&ウィーンフィル』
●WINER PHILHARMONIKER
MOZARTEUM, Mittwoch, 4. August 1999, 15.30 Uhr
Dirigent Riccard Muti

Franz Schubert
Symphonie Nr.5 B-Dur D485
Pause
Johannes Brahms
Serenade Nr.1 D-Dur op.11
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太陽が燦燦と降り注ぐ真昼のコンサート。ウィーンフィルをモーツァルテウムで聴くのはこれで2度目となる。前回はネヴィル・マリナーの指揮だったが、今回はリッカルド・ムーティ。思い起こせばウィーンフィルはムーティの指揮で聴くのが一番多い。最近では2年前の祝祭大劇場でのシューベルトのミサも良かったし、楽友協会でのブルックナーも印象的だった。

今日の座席も平土間1列目で、ちょうど目の前がコンサートマスターのヒンク氏。小編成のウィーンフィルもまた格別な味わいがあり、最初のシューベルトでは、機敏な音楽運びながらも優雅さも湛えた演奏。ちなみにヴェヒター氏は会場で演奏を聞かれておられた。先日のラトル&啓蒙時代オーケストラの印象は強烈だった為、今日のウィーンフィルは影を潜めるのではと心配したが、やはりウィーンにはウィーンの良さがあって、格別に躍動的なシューベルトの交響曲が聴けた。

休憩は例によって魔笛小屋のある庭に出るのがパターンだ。緑が豊かな庭ではすぐ近くのミラベル公園からの吹奏楽が聞えてくる。これに応えるかのようにモーツァルテウムの2階からウィーンフィルのメンバーが同じメロディを木管を吹き鳴らしていた。こういったところがウィーンフィルの冗談なのかとふと思った。

さてブラームスのセレナード1番。この曲は室内楽ヴァージョンのCDを愛聴していて、大好きな曲だ。これをどのように演奏するのかと聴いているうちに、最高に素晴らしいではないか。まさにムーティ会心の演奏だ。第1楽章からウィーンの柔らかい弦が美しく、しかも厚みも十分。芯のある力強さといったものが感じられる。加えてウィーン特有の木管にホルンなど、ほれぼれとする情緒とロマンが堪らない。ムーティが指揮すると、こうまでもウィーンらしさを描けるのかと驚くばかりだ。

楽章を追うごとにサウンドの充実度が増してくるのも特徴のひとつで、終楽章の歯切れの良さとリズムがシンフォニーのように壮大な響きに成長する様は圧巻である。前半のシューベルトも吹飛ぶくらい後半のブラームスは圧倒的だった。やはりムーティ&ウィーンフィルたる所以をまざまざと見せ付ける名演奏となった。カーテンコールは言うまでもなく大変なもので床を踏み鳴らす音もホール全体を包み込んだ。

さてこれからウィーンフィルの「魔笛」に出発だ。外に出るともうウィーンフィルのメンバーも集っている。道路には大きなトラックが口を開けて楽器の搬入を待っていた。