08/02 ザルツブルク音楽祭『バルトリ&ラトル啓蒙時代オーケストラ』
●ORCEHSTERKONZERT
Montag,2. August 1999, 19.30 Uhr, Kleines Festspielhaus

Orchestra of the Age of Enlightenment
Solistin : Cecilia Bartoli, Mezzosopran
Dirigent : Sir Simon Rattle

Josep Hayden
Symphonie G-Dur Hob.I:88
Kantate "Berenice, che fai?" Hob.XXIVa:10
-Pause-
"Non parmi esser fra gl'uomini", Arie Nr.11b
aus dem Oratorium " Il ritorno di Tobia" Hob.XXI:1
"Al tuo seno fortunato", Arie Nr.13 aud der Oper
" L'anima del filosofo" Hob.XXVIII:13
Symphonie D-Dur Hob.I:86
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祝祭小劇場前はかなりの混雑で今日の演奏にかける期待の高さが伺える。もちろん完売でズーヘ・カルテの方が一杯だ。さて小劇場ではオペラを良く見るがオーケストラを聞くのは初めて。いつものようにカール・ベーム・ザールで一休みしてから会場に入る。

ステージにはボレアデの舞台セットがそのまま置いてあった。銀色のアーチ状になった壁を背景にオーケストラ演奏を行うようだ。で、今日の座席は1列目の中央。ちょうどコンサートマスターの足元だが、なんともステージが高い。ラトルやバルトーリを頭上に見上げるような感じで聴くこととなる。

最初に演奏されたハイドン。しばらく聞いているうちにこれは唯物ではないという実感が沸いてきた。まずリズムが良い。それにアンサンブルが緻密でまるで室内楽のように機敏だ。何よりもラトルの表情とタクトさばきは分りやすく、彼の体全体から発せられる情報量の豊かさに驚いた。そればかりかオーケストラは彼のドライブで自発性を発揮できる状態になっている。
ハイドンの交響曲は演奏が難しく、ただ美しく力強く演奏するだけでは平凡なものに終ると聞く。かつての巨匠ベームが指揮するハイドンは深い味わいを特徴としたように、ハイドンにはそれなりの個性が必要である。しかし今日のラトルの演奏はとにかく凄い。ハイドンの簡素なシンフォニーが生命力をもって雄弁に語りかけてくる訳だから驚かざるを得ない。さらにラトルが作る音楽はエキサイティングさも十分で、ちょっと言葉ではできない感動に満ちている。
最初の交響曲で会場は騒然とした熱狂につつまれ、続いてバルトーリが登場したらから、これまた大変な演奏になった。彼女が歌うカンタータにはイタリアの情熱を全面に押し出すような迫力がある。彼女のテクニックは天下一品なのは百も承知だが、やはりライブで聞くバルトーリは凄いの一言だ。休憩をはさんで再びバルトーリのアリア。ラトルとバルトーリのデュオといっても良いくらいオーケストラも歌い、彼女とのバトルすら感じさせる興奮はただものでは無かった。

フィナーレには再びハイドンの交響曲。エイジ・オブ・エンライトゥンメント・オーケストラ訳して啓蒙時代オーケストラは1986年に自主運営として発足したそうだが、溌剌とした良い古楽アンサンブルだ。左右にヴァイオリンを配置して中央左にチェロ、ヴィオラを並べた配置が織り成す響きは古風でもありながら、ラトルの指揮で強烈な迫力で鳴り響くから痛快そのもの。オーケストラもラトルの指揮に驚嘆をもって接しているようで、オケの良さがフルに発揮されている。今日最後のハイドンも最高潮の高まりに達したようで、全くの興奮状態。カーテンコールはまさしく怒涛の熱狂と化したのであった。