05/07 バレンボイム&ウィーンフィル定期『英雄の生涯』
●Abonnementkonzert der Winer Philharmoniker
Saison 1998/99 Grosser Musikvereinssaal
Freitag, 7. Mai 1999, 19.30 Uhr
 
Dirigent und Solist: Daniel Barenboim
Solovioline : Rainer Kuechl
Program
Wolfgang Amadeus Morzart
Konzert fuer Klavier und Orchester, Es-Dur, KV482
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Richard Strauss
Ein Heldenleben.
Tondichtung fuer grosses Orchester, op.40
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バレンボイムの指揮でウィーンフィルを聴くのは初めて。今日は何といっても「英雄の生涯」を聴けるのが何よりの楽しみ。特にバレンボイム指揮シカゴ響の「英雄の生涯」はお気に入りのCDでもあるので、ウィーンフィルの演奏で聴けるとなればなおさら期待が高まる。今日の座席はバルコン・ロジェの1列目だった。ムジークフェラインは今までは平土間でしか聴いたことがないが、2階のバルコンもなかなか音響が素晴らしい。少し目を上に向けると、天井絵画と豪華なシャンデリアがまじかに仰げる。ただ1列目とはいえ、バルコンはステージの右側が欠けて見えにくいのが難点だ。外は未だ明るく、窓から入ってくる明るさがホールの黄金色を引立たせる。時間とともに紺色の空色から夕暮れの星空に変わっていった。

最初のモーツァルトのコンチェルトではバレンボイム自身がピアノを弾きながら指揮振りを行うという得意のパターンである。やはりウィーンフィルのモーツァルトは素晴らしいもので、これに加えてバレンボイムのピアノが圧倒的に素晴らしい。特に2楽章の音楽作りは天国的であり、美しく響くピアノと弦のハーモニーには心躍らされた。派手な演奏でもなく、慎ましさが味わい深い。

さて「英雄の生涯」も派手な演奏ではなく、バレンボイム&シカゴ響のCDで聞かれるようなダイナミックさも影を潜めている。むしろバレンボイムの悟りの境地にでも達したかのような余裕を感じたし、緩やかな大河の流れとでも表現できるようなスケールの大さに感銘を受けた。指揮棒をゆっくりと回しながら、ウィーンフィルをごく自然にドライブしていく様はまさに巨匠ここにありきと感じた。キュッヒュルのソロも素晴らしく、ホール全体を包み込む包容力の大きな音楽だった。カーテンコールにおける楽員のバレンボイムに対する尊敬の念もひとしおのものであった。なおこの定期演奏のプログラムはフェストヴォッヘンの演目としても演奏される。

これで今回の旅が終る。中でも最高の出来映えだったのはメータの「神々の黄昏」だった。次に異色ものとして「プラテー」が光っていた。もちろん「ヴォツェック」「ローエングリン」もハイレベルの内容。「トロヴァトーレ」はオーケストラの素晴らしさは申し分ないものの、演出と音楽の噛み合いが今ひとつだったのが残念。オーケストラではアルブレヒト&ミュンヘンフィルによる珍しいペターソンを聴けたのが収穫だ。それにバレンボイム&ウィーンフィルの「英雄の生涯」は円熟したR.シュトラウスの魅力に溢れていた。