05/06 ウィーン国立歌劇場のヴェルディ歌劇『トロヴァトーレ』
●WINER STAATSOPER
Giuseppe Verdi, " IL TORVATORE "
Donnerstag, 6. Mai 1999 / 19 Uhr

Dirigent : Jun Maerkl
Inszenierung : Isavan Szabo
Buehnenbild : Attila Kovacs
Kostueme : Gyoergi Szakacs
Chorleitung : Ernst Dunshirn

Graf von Luna : Leo Nucci
Leonora : Eliane Coelho
Azucena, eine Zugeunerin : Dolora Zajick
Manrico : Janez Lotric'
Ferrando : Goran Simic
Ine's : Stella Grigorian
Ruiz : Mikhail Agafonov
Ein Zigeuner : Josef Stangl
Ein Bote : Franz Kasemann

Buehnenorchester der Oesterreichischen Bundestheater
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今日のトロヴァトーレは2年前のスツァーボ演出によるプロダクション。プレミエではズービン・メータが振ったとのこと。今回の指揮はジュン・メルクルで、彼のオペラは「トゥーランドット」以来2度目になる。歌手にはヌッチ、ロトリッチ、コエッリョ、グリゴリアンなどベテランが揃っているので、期待できる。

<第1幕>
空襲によって廃墟となったウィーン国立歌劇場が第1幕のセットである。一面瓦礫の山で、中央背面にかけて真四角く窓のような空間が開けていた。この構図は昨日パリで見たローエングリンの第1幕とも似ている。周辺に難民の如く人々が群がり合唱が始った。

第2場、ジプシーの合唱では廃墟にランプをもったジプシー達が群がるのが一つの見せ場となる。合唱はさすがに結構素晴らしいもので、コンサートマスターのヒンク氏の豪快な弓使いが見えた。やはりヴェルディの音楽は盛り上がる。続く第3場では廃墟ごと上り舞台で上昇するのは圧巻。下部にジプシーの部屋が登場する仕組で、演出のひとつのクライマックスでもある。

<第2幕>
舞台はウィーン国立歌劇場と思しき劇場内部が場面となる。ちょうど舞台背面が観客席になっていてミッテルロージェを中心とした扇状になっている。舞台一面にあるロジェには合唱が観客として入っていた。客席の右側が復旧された国立歌劇場で、左半分はまだ廃墟のまま。面白いのは場面を追うごとに瓦礫が少しづつ復旧する。

<第3幕>
真っ黒の舞台面に五角形の空間が開くだけという簡素なもので、ここで第3幕全てのドラマが展開された。スツァーボの解釈はこのように「ウィーン国立歌劇場の再建」と「トロヴァトーレ」の接点をテーマとしていることだが、これはどういう意味があるのか分らない。おそらく深い意味があるのだろうが、ちょっと無理があると思う。

ジュン・メルクルの指揮は前回聞いた「トゥーランドット」に比べるとちょっとパンチ力が不足していたと思う。ただイタリアオペラの特有の盛り上がりは十分だが、ヴェルディのあの血が燃えるような迫力が今一つと感じた。ロトリッチはトゥーランドットのカラフ役では凄かったが、今回はやや抑え気味。そんな中でヌッチの名演が光っていた。今回の旅でウィーンで聴くオペラはこのトロヴァトーレだけ。やや物足りない気分だ。